夏。この暑い季節にも、古来、日本人は知恵をしぼってさまざまな美のアイテムを生み出してきました。その魅力を3回にわたってお伝えする美の壺 「納涼!日本の夏スペシャル」 |
日本家屋のツボ 風を迎える日本の家
京都市郊外にある大正元年築の農家を15年前に購入した山本剛史さんは、初めてこの家で迎えた夏、驚いたことがあったといいます。 山本 「家の中のどこに座っていても、涼やかな風がいつも感じられる。家全体が大きな木で、その木陰で涼んでいるような感覚。建物が呼吸していると感じる」 |
西洋建築に比べ、壁が少ない日本の家は、戸を開け放てば家の中を風が吹き抜けていきます。さらに、屋根裏や床下にも通風口が設けられ、熱や湿気をためない工夫があります。日本の家には風をとりこみ吐き出す、たくみなしかけがあるのです。 |
風鈴のツボ 涼やかな音色にゆらぎあり
涼やかな風を耳に伝えてくれる夏の風物詩といえば、風鈴。短冊が風を受けてゆれることで音を奏でます。鉄製でお寺の鐘を小さくしたような南部風鈴、風鈴のなかでも長く味わい深い余韻が特徴です。その音はなぜこんなにも心地よいのでしょうか。 |
鉄鋼メーカーの技術者が南部風鈴の音を分析したところ、興味深いことが2つ、わかりました。1つめは、風鈴を鳴らすと、さまざまな高さの音が同時に生じて重なり合っているということ。 |
そのような音が、風という不規則なものによって鳴らされる風鈴。「ゆらぎ」があり、「複雑」で、「不規則」。このような3つの要素からなる音を、私たちは自然の中で聞いています。小川のせせらぎ、小鳥のさえずり… 風鈴のかたちや素材は、長い間、人の耳に心地よい響きを追い求めて、たどりついたものなのかもしれません。 風鈴のツボ、 |
のれんのツボ 風に泳ぐ 涼やかな染め
目に風を感じさせてくれるのが、のれん。屋号や商品名などを染め抜いて店先などで使われます。 安斎 「のれんに風の通り道をつくってやると、生きもののように涼やかに動くんですね。目で見る涼しさを感じさせられますね」 |
安斎さんは、江戸時代に考案され、ゆかたなどを染めるのに使われた型紙を使って、水を思わせる藍色のなかに、季節感あふれる図柄を冷ややかな白で染め抜きます。細かな白い点で染め抜かれた朝顔は、朝露を思わせ、涼感をかき立てます。 |
光に透けるという、のれんの特性をいかした技法もあります。表からは菊の花、裏からは水面の柄を染め抜いたのれんは、光に透けると模様が重なります。まさに夏にふさわしい透明感。部屋のなかに水面が広がるかのようです。 のれんのツボ、 |
打ち水
夏、涼を招く行いといえば、打ち水です。地面にまかれた水が、蒸発するときに地面の熱を奪うことによって、涼しさが感じられる仕組み。京都で茶道を教える澤田宗智さんは、夏、客を迎えるときのおもてなしに打ち水を欠かしません。そのテクニックを教えていただきました。 |
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ポイント1 夕立のようにたっぷりと ポイント2 早すぎても遅すぎてもダメ ポイント3 水たまりはつくらない |
庭のツボ 水音の澄んだ響きにしかけあり
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古来、日本の庭には池や滝など水が大切な役割を果たしてきました。深い山の中を思わせるようなたたずまいは、夏には涼を感じさせます。 |
高速度カメラで音の出る瞬間をとらえてみると… 大きな水滴が落下するとき、その後から「従水滴(じゅうすいてき)」と呼ばれる小さな水滴が落ちていくことがわかりました。 |
水琴窟の音に耳を傾けながら庭を眺めていると、しばし暑さを忘れることができます。 大橋 「水のない庭なので、それに代わるものとして水琴窟が考えられた。音を聞いてもらいながら庭の水を想像してもらおうという役目が水琴窟にはあるのではないか」 庭のツボは、 |
夏の「生け花」のツボ 緑で水を引き立てる
蚊帳のツボ 森や湖の気配に包まれて眠る
寝苦しい夏の夜に戸を開け放って寝るために生まれたのが蚊帳です。蚊帳が普及したのは江戸時代。昭和40年ころまでは嫁入り道具として布団とセットで買いそろえました。 |
夏の夜のツボ ほのかな明かりで暗さを愛(め)でる
夏の一日を京都郊外の古い農家で過ごす山本剛史さん。夜に愛用する明かりが、和紙のなかでロウソクの炎がゆらめく行灯(あんどん)。 山本 「夜になるとこのあたりは真っ暗になる。その中で、昼間と同じ明るさではなく、こういう黄色い光がいいなあと感じます。闇の世界を感じる。光と闇を楽しむ暮らしですね」 昼間の陽射しが強烈な夏だからこそ、夜は陰を楽しみます。 |
日本人は明るさよりほの暗さを愛でてきたと書いた小説家がいます。昭和8年に発表された「陰翳礼讃」(いんえいらいさん)。近代化が進む中、失われゆく影の美しさを描き出しました。 「暗い部屋に住むことを余儀なくされたわれわれの先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った」 |
日本の家は陰を効果的につくりだすようにできています。まず長いひさしで直射日光を遮り、さらに障子を使うことによって庭からの反射を弱めます。 |
楽曲名 | アーティスト名 |
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Donna Lee | Maurizio Rolli |
I'll Get By | Billy Holiday |
つかの間の湯 | 岩代 太郎 |
波乗りジョニー | New Roman Trio Featuring 松本 茜 |
Maiden Voyage | Herbie Hancock |
Joe's Avenue | Wynton Kelly |
Crystal Silence | Chick Corea |
My Funny Valentine | Bill Evans & Jim Hall |
On Green Dolphin Street | Wynton Kelly |
Misty | June Christy |
アロマの湯 | 岩代 太郎 |
Everybody's Jumpin' | Dave Brubeck |
All Blues | Miles Davis |
No.2 | Chick Corea |
No.8 | Chick Corea |
Serene | Eric Dolphy |
On The Sunny Side Of The street | Louis Armstrong |
想い出の湯 | 岩代 太郎 |
You Look Good To Me | Oscar Peterson |
Lush Life | 増尾 好秋 & 岡田 勉 |
Stella By Starlight | Ellis Marsalis & Branfors Marsalis |
Stella By Starlight | Duke Pearson |