もうすぐ暑い夏。夏にひときわ魅力を発揮するおしゃれアイテムが「麻」です。日本では古くから「暑い季節の着物」といえば麻でした。 |
原料は苧麻(ちょま)や大麻(おおあさ)などの植物の「茎」です。 |
先人たちは長い歳月、工夫をこらし、技を磨き、天然素材ならではの風合いや色の魅力を引き出し、「夏を彩る美」に高めてきたのです。 |
壱のツボ 手技が生み出すシボの表情
びわ湖に面した滋賀県湖東地方は、古くから上質な麻織物の産地として知られています。湿気の多いこの地域では、今も夏のおしゃれ着として麻がつかわれています。 |
野々村芙美子さん 77歳 野々村 「夏はとりあえず涼しい。肌にくっつかないですよね。ちょっと浮いた感じで…。何回洗っても元どおり、すぐに洗えば新品。着て伸びたなと思っても、霧パッとふけば新品になります。」 |
快適な着心地の秘密が着物全体に細かく入ったしわ。このシワは、「シボ」と呼ばれ、熟練の職人が手間をかけてつくりだしたもの、着たとき生地が肌に密着するのを防ぎます。 1つ目のツボは、 |
シワを生み出す秘密は、職人の織る糸にあります。横の糸に強いよりがかかっています。このよりが、元に戻ろうとする力を利用して美しいシワを生み出すのです。 |
織り上がった麻織物にシワをつけていくのが「シボつけ」。 |
表面に美しいシボを生み出す技で知られる伊谷徳一さん。 伊谷 「400年以上の歴史があるんですけれどね、これ先人の知恵といいますか。やはり涼感というんですかね。シボのついた麻の着物は、着てさらっとして、なおかつ体温を吸収しますよね。」 |
野々村さんが、20代のころ仕立て夏になると毎年の様に着てきた麻の着物。しっかりとつけたシワは、布にきざみこまれ、消えることはありません。半世紀前の職人の手が生み出した美しいシボが今も野々村さんの体を優しく包み込みます。 |
弐のツボ リネン「生成りの色はあじわいの色」
西洋で発展した麻リネン。 |
こちらはリネンの布。少しベージュがかった色ですが、染色しているわけではなく自然の色。よく見ると一つ一つ色合いが異なります。 |
リネンの色に魅せられたデザイナーのスズキタカユキさん。 スズキ「使っていく過程で表情が変わっていくというところがボクとしてはすごく好きなところですね。やはりリネンがもつ本当の美しさというのは、もともとの色味とか元々の質感の中にあると思うんですよね。」
2つ目のツボは、 |
リネンの「生成り」の色を生かした染め方もあります。 |
新木一一さん(染色工場バックマン) 新木 「やはりビンテージ風の味ですね。光沢はちょっと落ちるんですが、ナチュラルな感じですね、それがとてもいいというお客さんはたくさんいますね。すれて白場(しろば)がでてくることによって落差がでてくるということですね。それは製品洗い(洗濯)なんかをしますとですね、非常にかすれた感じがでて、それがとてもいいということですね。」 |
こちらリネンのワンピース。 |
青、紫、黄、銀 4色の糸で織られています。 |
このワンピースの生地を手がけた柄師の岩田信男さん。 岩田 「表現自体は、多色で華やかさいいますか、女性が現れるとパッと花が咲くような表情を醸し出すように設計をしています。」 |
このワンピースは、実際に何度か着用されたもの。生地はすれて生成りの色の部分が広がっていきます。 |
たて10メートルの巨大な布。岩田さんの色見本です。 |
参のツボ 普段(ふだん)使いで百年愛して
カーテン、クッション、キッチンクロス。 |
米田倫子さん 米田 「長く伝わってきたものですので、今自分が破いちゃったらいけないなとは思うんですよね。でも使うことにこそ意義があると思って、丁寧に大事に愛情をもって使っています。」 |
麻は丈夫で破れにくく、綿のおよそ2倍の強度を持つと言います。また、麻には、ペクチンというノリのような成分が含まれ、汚れが繊維の奥に入りにくいといわれています。丈夫で汚れにくいからこそ、リネンは女性の心をつかんできたのです。 |
刺繍されたイニシャル。リネンは長く使う生活用具だったため、新しくあつらえた時に名前を入れる習慣がありました。 3つ目のツボは、 |
雑貨アーティストの上島佳代子さん。リネンのもつ可能性を追求したいと新旧さまざまなリネンの布を集め、刺繍をするなど、いろいろなリメイク法を考案しています。 上島 「せっかく100年前から残ってきたアンティークリネンなので、その布としての命を全うさせてあげたいという気持ちがあるんですよ。」 |
上島さんがリネンにほれ込むきっかけとなったのは、ドイツの蚤(のみ)の市で手にした100年ものの布。しゃれた柄と温かみのある手触りに魅せられました。 |
ヨーロッパでリネンは、女性が時に一生かけて使う日用品。自分好みにいろいろな飾りを施しました。また、結婚がきまった娘に、母親がリネンを贈る習慣がありました。決して安いものではなかったリネン。長年に渡って集めたものをプレゼントし、新しい生活を祝福しました。 |
5月に入りましたね~。本格的な夏はまだ先ですが、着て涼しく目にも涼しい「麻」が活躍する季節がやってきますね。
それぞれの季節にふさわしい素材をまとうことって、改めてすてきなことだなと感じます。
暑い季節には麻を着るという古くからの知恵と、ファッションとしてのおしゃれ。
麻の着物を着こなす姿、まるで自分の体の一部のようにしっくり着ていらっしゃいましたよね。
ヨーロッパのアンティークリネンも、幸せを願い、日々の暮らしの中で使っていた人の姿や歴史まで伝わってくるかのようです。
それにしても100年もつってすごい!!
こんなにもリネンて丈夫なものだとは驚きました。
今回、私も一枚のキッチンクロスを頂いたんです。大切に一生使い続けるぞ!
100年後は一体誰がこれを使っているのだろう?と想像しながら
この先のすてきな未来を願いつつ、使っていきたいと思っています。
いやー、麻布やリネンの一枚一枚に、すばらしいストーリーがあるんですねえ。
楽曲名 | アーティスト名 | 使われた場所 (番組開始後) |
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Moanin' | Art Blakey & The Jazz Messengers | 0分2秒 |
Action? | Wynton Kelly | 1分10秒 |
Ice Cream? | Wynton Marsalis and Eric Clapton? | 2分4秒 |
Bag's Groove | Horace Parlan | 3分46秒 |
Summer Time | Miles Davis and Gil Evans | 4分43秒 |
Guajeo y Tumbao? | Christian McBride Featuring Eddie Palmieri | 5分36秒 |
So What | Miles Davis | 7分30秒 |
Stella By Starlight | Duke Pearson | 9分50秒 |
All The Things You Are | Paul Desmond & Gerry Mulligan | 12分44秒 |
Nica's Dream | Kenny Burrell | 15分5秒 |
Milestones | Miles Davis | 16分0秒 |
Ernie's Tune | Dexter Gordon | 17分48秒 |
She's A Rainbow | The Rolling Stones | 19分33秒 |
A Nice Day | Chico Hamilton | 21分44秒 |
In The Court Of King Oliver | Wynton Marsalis | 22分45秒 |
My Romance | Gary Burton & Makoto Ozone | 24分15秒 |
Misterioso | Kronos Quartet | 25分10秒 |
Shoot The Moon | Norah Jones | 26分40秒 |