いつも何気なく歩いている街。 |
石畳と言えばヨーロッパを思い浮かべがちですが、実は日本にも昔から石畳はあるんです。 |
街に彩りを添えてきた、日本独自の石畳の美に迫ります。 |
壱のツボ 四角の石に品格あり
東京、日本橋。ここでは4年前、商店街の人々が、路面をアスファルトから石畳に張り替えました。商店街の一員、老舗料理店の橋本さん。 橋本 「昔日本橋というと江戸一番のにぎやかな場所だったんですけど、その当時から見るとかなり日本橋が元気がなくなったということで、昔の江戸をとりもどそうという趣旨で石畳をしいたんです」 |
日本橋は江戸時代、5つの街道の起点として大いににぎわった街。デザイナーからも、伝統をイメージした、さまざまなデザインが提案されました。しかし日本橋の人々が選んだのは、四角い石を並べただけの、シンプルなデザインでした。 橋本 「ハデにすることを好まない街ですから。品格のある街にしたいってのが日本橋らしさなんですよね」 |
品格をもたらしてくれるという石畳。 ひとつ目のツボ、 |
日本の石畳は、神社仏閣などを舗装することから広まりました。建築を研究する宮崎さんは、その石畳の形が四角形だったのには理由があるといいます。 宮崎 「四角。こんなにきれいな形っていうのはね、自然界にはほとんどないんです。したがってこの形はですね、人間がつくった、人間が誇る形なんですね」 |
東京、神楽坂。毘沙門天善國寺の門前町として栄えたこの街を代表する石畳が、四角い石を扇形に敷き詰めた、扇文様の石畳。 山本 「昔の花柳界の人は粋っていうものを突き詰めて考えていたんじゃないかって思いますね」 |
扇は、歌舞伎や日本舞踊などで、艶やかさを表現する上で欠かせないものでした。その縁起のいい扇文様で、花柳界の発展を祈ったのだとされています。 |
弐のツボ 市中山居の石の配列
次は、住まいの庭に敷く石畳。 |
ところが、一歩庭に入ると、大小さまざまな石が敷かれています。庭に初めて石畳を敷いたのは、茶の湯を確立した千利休だと言われています。利休が庭に求めたのは、街中にありながら、山奥のひなびた風情が感じられること。「市中山居(しちゅうさんきょ)」と言います。 |
石畳は、市中山居を表現するのに欠かせないものでした。その配置のポイントを、伝統建築に詳しい中村さんはこう語ります。 中村 「あまり整然と並べると人工的な感じを作りだすと山里の風景に合いませんね。山道をいくようなそういう風情が漂うように、自然な表情に石を配列する」 ふたつ目のツボ、 |
庭石の配置のコツは、石と石の隙間、目地が作る模様をいかに自然に見せるかです。 |
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市中山居の庭づくりに定評のある庭師、平居孝幸さんはこう語ります。 平井 「模様を上手にだしていくことそれがとっても大切なところです。きっちりしてない、柔らかい感じの表現のしかた。これは日本独特だと思いますけどね。」 |
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神奈川県厚木市。ここに、平井さんが手がけた庭があります。庭一面に石をちりばめ、その中に一本の石の道を作りました。 |
この庭の設計を依頼した佐藤さん。 佐藤 「眺めて楽しむだけでなくて体験できるだけじゃなくて、実際に子供が体験できる庭を造ってくださいって。子供時代の原風景になるようにお願いしました。」 街にいながら山の風情を楽しむ。利休の美学は今、これまで以上に求められているのかもしれません。 |
参のツボ 歳月が生み出す崩れの美
歳月を経た石畳には独特の美しさがあります。 |
使われている石は、同じ谷あいでとれた安山岩。割れやすい石ですが調達しやすかったため、あえて使いました。 それが長い年月を経て崩れ、朽ちた姿に、この石畳の良さがあるといいます。 |
地元のボランティアガイドの齊藤静雄さん。 齊藤 「人工的な美しさと人工でつくったものが崩れる美しさとぜんぜん違いますね。時間の経過と空気の流れっていうんですかね。そういうものが訴えるものがありますね。」 三つ目のツボ、 |
沖縄県に、「真珠道(まだまみち)」と呼ばれる道があります。500年前に作られた、いまも現役の道です。17世紀、首里城を中心にいくつもの宿道(すくみち)と呼ばれる街道が張り巡らされました。 |
使われているのは地元でとれる琉球石灰岩。サンゴが堆積してできた石で柔らかく風化しやすいため、歳月とともに独特の美しさを生み出します。 |
そして、琉球石灰岩は沖縄の人々に大切な恵みをもたらしてきました。琉球石灰岩で出来た山では、小さな穴に染み込みこんだ雨が、谷あいで清水として湧き出します。樋水(ヒージャー)とよばれるこのわき水は、川の少ない沖縄では、大変貴重なものでした。 |
比嘉新栄さん、88歳。山の上の集落から長年、石畳を踏みしめ、谷あいにある樋水との間を行き来してきました。 比嘉 「12歳のときはブリキ缶2つかついで上がったんです。石畳がないとね、どうなるかわからん。この石畳は、いまは単なる石畳だなあという考えかもしれませんが、前は相当大切なものでしたよ」 |
何年、何十年、何百年と多くの人が水を得るために踏みしめてきた石畳。 |
石畳を歩くときの、コツコツというあの音。響きが好きです。何というか、ちょっぴり優雅な気分になると言いますか。凹凸のない歩きやすい道と比べて、一歩一歩を踏みしめる実感があるような気がします。ハイヒールを履いていると少し歩きづらく、石と石の境にヒールがはまってしまうこともあるのですが(女性の皆さんわかって下さいますよね?)、そんな苦労を忘れるほどのすてきな石畳がたくさん登場しましたね。日本橋の凛としていてすっきりとした石畳、神楽坂の扇形の石畳、それぞれの街の雰囲気や特徴が足元にも表れるんですね。街の雰囲気ってついつい建物そのものの外観・デザインに目が向いてしまいますが、実は足元に街の特徴が凝縮されて表現されているものだな~と感じました。この夏は浴衣を着て、石畳を踏みしめてお散歩したい!
楽曲名 | アーティスト名 |
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Bicyclette | Stephane Grappelli |
Walkin' | Ray Bryant |
Someone To Watch Over Me | Eddie Higgins |
Cornbread | Lee Morgan |
Carioca | Hampton Hawes |
Lover Man | Marcus Printup |
Stolen Moments | Turtle Island String Quartet |
Waltz For Debby | Earl Krugh |
I'll Close My Eyes | Blue Michell |
La Fille Du Bedouin | Stephane Grappelli |
Wise One | John Coltrane |
Milestones | Turtle Island String Quartet |
Mood Indigo | Marcus Roberts |
Adele | Stephane Grappelli |
One Quiet Night | Pat Metheny |
Shenandoah | Keith Jarrett |