海から届いた宝石、貝殻。人々は、その多彩な色と形に魅かれてきました。地球に現れたのは5億年前。今では11万種類を数えます。 |
18世紀フランスの伯爵夫人が領土の一部と交換したという「大糸掛貝(オオイトカケガイ)」。精緻に作られたガラス細工のような美しさです。 |
|
海に囲まれた日本は、貝殻の宝庫。コレクター仲間で、自慢の逸品を囲む集まりが開かれています。コレクションにはテーマがあります。 |
こちらは「宝貝(タカラガイ)」。丸々と輝く形はコレクターの憧れの的です。 |
壱のツボ 見立て
コレクターのひとり、黄さんのお気に入りの貝があります。漢字の〝心〟。
|
「宝貝」。丸みを帯びた、光沢のある姿が特徴です。
|
江戸時代後期の旗本、武蔵石寿が作った貝の博物図鑑『目八譜(もくはちふ)』には、実物を観察して忠実に描いた挿絵と共に、およそ1000種類の貝が紹介されています。こちらは「小紋宝(コモンダカラ)」。庶民の間で人気だった着物の柄、江戸小紋になぞらえています。当時の暮らしが垣間(かいま)見える名前です。 |
貝の研究をして50年。奥谷喬司さん。 奥谷 「武蔵石寿はとても自分、貝が好きだったと思う。それを自分の知識、それから自分の感性で、どんな貝かなというイメージができるような名前を付けるという風な、なるべくたくさんの人たちの興味をつなぐような意図であったんではないかと思っております」 |
見立てによって、人々はイメージを共有して、貝を楽しめるようになりました。見立てによる名付けの妙をご紹介しましょう。二枚貝の片側は淡い黄色、一方は赤。まるで月と太陽。「月日貝(ツキヒガイ)」と名付けられました。 |
雀(すずめ)が寒さをしのいで、全身の毛を膨らませているような、愛らしい姿。「福良雀(フクラスズメ)」。つぶさに見つめて生み出された〝見立て〟には、貝への深い愛情が満ちています。 |
弐のツボ 螺旋(らせん)
貝殻の多くは螺旋を描く〝巻貝〟です。
|
|
まるでバベルの塔。螺旋が無限に続くかのようです。千回巻く、と書く「千巻法螺(チマキボラ)」。幾何学的な造形美です。 |
|
貝は、成長に合わせて、分泌物を出して貝殻を大きくしていきます。 螺旋は、貝が最小限のスペースに体を収める工夫であり、貝殻の強度を高める為の構造なのです |
海を浮遊しながら暮らす「鸚鵡貝(オウムガイ)」。その螺旋は、さらに精密なメカニズムを秘めています。小さな部屋に気体が入り、それを調節することで、自在に泳ぐことが出来ます。 |
参のツボ 螺鈿(らでん)
最後のツボ、 |
「螺鈿」は、貝殻から真珠層を削り出して器物にはめ込む伝統の技です。 |
螺鈿を専門とする漆芸家・松田典男さん。 |
松田さんは、15種類の貝の中から、作品にふさわしい色を選んでいます。 松田 「これはキレイですね、グリーンからピンクの縁取りがもう本当に何とも言えず。パンジーみたいにぼけるっていうか縁が変わったりとかいうのにちょうどうまく合うかなと思って」 真珠層はいくつもの層が重なって出来ています。削り取る厚さや角度によって、異なる輝きが現れるのです。 |
真珠層は硬くて刃が滑りやすいため、線を慎重に重ねて切り取ります。 |
漆黒に浮かぶ花びら。木と漆、そして貝。山と海の恵みが出会います。 |
貝殻が海の中で育んだ聖なる光。螺鈿は、それを愛でるために磨き上げた、 技の結晶なのです。 |
「貝を耳にあててごらん!波の音が聞こえるから。」と誰かに教えられて以来、貝をみつけると自分の耳にあてて音を聞きます。“波”というより“風”の音のようにも感じますが、目を閉じると、街中にいても海辺にいるかのような気持ちになるんですよね、不思議と。なぜこのような感覚が生まれるのか・・・、担当ディレクターさんの言葉にナゾを解く一つのヒントが隠されていました。
「貝って中身が出きっていないと、臭いがするものもあるんですよ!」
なるほど~。貝を耳にあてているということは、鼻にも近い場所にあるということ・・・。私がいつも“海”を感じていたのは、貝から発せられた磯臭さにあったのかもしれません。
楽曲名 | アーティスト名 |
---|---|
All The Things You Are | 松本茜 |
Don't Know Why | Pat Metheny |
Composition | 菊地成孔 / 南博 |
O Grande Amor | Gary Burton & Makoto Ozone |
All Blues | Miles Davis |
Waltz For Debby | John McLaughlin |
NOS.4 | Chick Corea |
Portrait Of Tracy | Jaco Pastorius |
Young At Heart | Brad Mehldau |
Crystal Silence | Chick Corea |
Lush Life | 菊地成孔 / 南博 |
NOS.15 | Chick Corea |
Stardust | Nat King Cole |