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九谷焼とは、江戸時代より今の石川県で作られてきた磁器のこと。一点一点丁寧に書かれた華やかな色絵が特徴です。 九谷焼専門店の諸江洋さん。 諸江 「九谷はやっぱり絵付けが命。白い器の上に絵を描くというところが大事なところ」 |
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九谷焼は加賀の人々によって大切に守られてきました。創業190年という造り酒屋では代々当主が受け継いできた九谷焼があります。 |
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造り酒屋七代目当主の鹿野頼宜さん。 鹿野 「蔵人の新酒祝いとか、作りが終わった時などのお祝いの時にしょっちゅう使っておりましたね。奇抜な色といいますか、本当に鮮やかな。地元に根づいた焼物ですから、やっぱり愛着はありますよね。」 |
壱のツボ 緑と黄はあこがれの色
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江戸時代前期に作られた磁器「古九谷」。九谷焼の原点です。ゴッホの油絵を思わせる、古九谷の力強い色彩。かの魯山人も「恐ろしく芸術的」と絶賛しました。 |
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それから120年後、江戸時代後期に加賀の地で「青手」がよみがえります。試行錯誤を繰り返し、古九谷の鮮やかな色を再現しました。そこには加賀の人々の、緑と黄への深い想いが込められていました。 一つ目のツボは、 |
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古九谷の他にもう一つ、緑と黄へのあこがれをかき立てた焼き物がありました。交趾焼(こうちやき)です。明の時代に中国南部で作られ、ベトナムから船で日本にもたらされました。 |
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九谷焼の歴史を長年研究してきた中矢進一さん。 中矢 「緑と黄色、植物の色ですよね。そういったものを想起させますよね。だからこの交趾焼に南方の雰囲気を感じ取っていたんですよね。非常にエキゾチックな。」 |
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古九谷の力強い色彩と、交趾焼の温かな色合い。 |
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温かみのある緑と黄の秘密。それは釉薬の塗り方にあります。絵具の役割をする釉薬を、線描が見えなくなるまでたっぷり塗るのが九谷焼の伝統だといいます。 |
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窯の中で焼き上げると、厚く塗った釉薬は色ガラスとなり、絵がすけて現れ、立体的な表情を生み出しています。 |
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九谷焼色絵磁器作家の武腰潤さん。 武腰 「雪国に育ったばかりに、色彩に飢えてるということはありました。南の方へいけば色があるんじゃないかなと思って、鹿児島へ出かけたことがあります。」 |
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雪深い加賀の冬。モノクロームの世界の中で、人々は色鮮やかな春を心待ちにしました。
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弐のツボ ミクロの技がつくる華やぎ
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江戸末期から明治時代にかけて、細密なデザインが登場します。白地に赤で絵付けされた「赤絵」です。 |
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九谷焼の絵付け師、福島武山さん。赤絵を専門に描き続けてきました。もっとも細かい線は、1ミリに3本描けるほど。もっとも集中力を必要とする点描では、間隔をわずかに調整しながら、濃淡を描き分けます。 |
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赤い点と線だけで、遠近感を生み出し、雄大な山水画を描き切っています。 |
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福島 「線の細いとか、薄い赤の上に色を持っていく、中くらいの色の上に線描きを持っていくとか、段階はいろいろ出来ますよね。ですから無限にやれると思うんですよね。私40年やっていますけど赤の絵具一色です。」 |
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明治時代になると九谷焼は欧米に次々と輸出されました。「ジャパンクタニ」と呼ばれた絢爛(けんらん)たる九谷焼です。 |
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細やかな技による東洋の絵柄は、欧米の人々を魅了し、九谷焼は陶磁器で日本一の輸出量を誇るまでになりました。 |
参のツボ 色絵が盛り上げる加賀のハレ
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漆器商七代目の岡能久さん。代々受け継がれてきた九谷焼を今も事あるごとに使っています。 岡 「家に人をお招きしたときに、特別使う器として、九谷焼はなくてはならないもの。季節の図柄やハレの図柄など、こちらの器を使って、一緒にお料理を楽しみました。」 |
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中秋の名月にちなんで開かれた茶会。岡さんはある九谷焼を菓子鉢として用意しました。 |
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加賀百万石の美意識を今に伝える料亭。一歩中に入ると別世界。壁は一面、あでやかな赤に塗られています。金沢の文化に詳しい嶋崎丞さんは、九谷焼には加賀独特の色彩感がみられると言います。 嶋崎 「この部屋は朱壁になっており派手でぜいたくな場なんです。金沢では町家の中にこの朱壁を使いますからね。友禅の五彩、九谷の五彩、全部色がどぎついまでも華やかなんです。」 |
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日本海の珍味、くちこの高級感をひきたてるのは、極彩色の色絵皿。 嶋崎 「珍味を生かすにはより一層鮮やかな色絵の世界の器がマッチする。この珍味はただことならぬ珍味ですよと。これが真っ白な、ケーキ皿みたいのだったらこんなわけにはいかん。」 |
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嶋崎 「一年の何か月か雪の中に埋まってますでしょ。そういう中にいて、華やかさを求めたいという気分が、あったんだろうと思います。そういうハレの演出というんでしょうか。贅沢といっちゃおかしいですけど、豊かな一つの生活文化を演出する場としてつながっていったんだと思います。」 |
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色鮮やかな九谷焼。 |
今回の美の壺、いかがでしたか?これまでシンプルな白い食器を集めてきた私にとっては、紹介された「九谷焼」はどれも華やかで、とても新鮮に映りました。中でも“赤絵細描”の繊細な筆使いには、ナレーションをしながらも息を呑んだほどです。呼吸を止めて描く小さな点の一つ一つが、皿全体の絵を構成しているというのは圧巻。点々を描くことに集中しすぎると“木を見て森を見ず”な作品になってしまうことでしょう・・・。お皿を鑑賞しながら、どんな事にもミクロとマクロの両方の視点が重要なのね!と改めて思いました。(思ってもなかなか実践できない私です)
楽曲名 | アーティスト名 |
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Assumpta Est Maria In Coelum | Therese Schroeder-Sheker |
I Only Have Eyes For You | Oscar Peterson |
Wise One | John Coltrane |
A Thousand Autumns | Joey Calderazzo |
I Remember Clifford | 増尾 好秋 / 岡田 勉 |
In The Wee Small Hours Of The Morning | Wynton Marsalis |
Stolen Moments | Turtle Island String Quartet |
Improvisation 01 | 菊地 成孔 / 南 博 |
Oh Bess, oh where's my Bess | Miles Davis |
All The Things You Are | 松本 茜 |
Maria | Branford Marsalis |
Back To My Home Town | Sony Stitt |
Stella By Starlight | Duke Pearson |
Marciac Fun | Wynton Marsalis |