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鑑賞マニュアル美の壺

これまでの放送

file176 「ゆかた」

ゆかたとは、木綿の布で造ったシンプルな着物。
直接、素肌にまとうのが特徴です。

江戸時代、絶大な人気を誇った歌舞伎、人気役者が、楽屋着にしていたのがゆかた。そのしゃれた柄が憧れの的となります。

歌舞伎役者市川団十郎がはやらせた柄。
「鎌」の絵と、丸い「輪」と、「ぬ」の文字を合わせて、「かまわぬ」と読みます。物事にこだわらないという心意気を表しています。

しゃれた柄を着こなすセンスが江戸っ子の心を捕らえました。江戸の衣装を研究されている菊池ひと美さん。

菊地「人を飽きさせない。カジュアルでキッチュ。遊び心がゆかたにはぴったり。着物ではここまで遊べない。」 江戸の男たちは、ひいきの役者の柄を染めたゆかたで、町をかっ歩する様になりました。

今ではほとんど残っていない、江戸時代のゆかた。網にかかったエビや魚、タコなどをを表現した、ざん新な構図です。
このゆかたには、ある趣向が施されています。
めくってみると、裏側に全く同じ柄が現れました。表と寸分違わぬ鮮やかな模様。裏側もわざわざ染めたのです。

壱のツボ 裏をめくれば江戸の粋

目にしみるような深い藍(あい)色。江戸時代、ゆかたのほとんどは藍で染められていました。江戸時代急速に普及した藍染め。
庶民のぜいたくを嫌った幕府が高価な絹や派手やかな色遣いの着物を禁止したため広まりました。安い木綿を藍一色で染めたゆかたが、庶民の間で重宝されるようになります。厳しい制約の中で何とかおしゃれを追求しました。
そこで考え出されたのが裏にも同じ柄を染める長板染めと呼ばれる技法です。

ゆかた鑑賞一つ目のツボは、
「裏をめくれば江戸の粋」

江戸時代から続く老舗(しにせ)呉服店主人小川文男さん。

小川「裏と表に別々に型をつけて、表と裏がぴったり一致して、ちょっと見える裏や袖口、そこに表と同じ柄が染まっている。しかもコントラストにメリハリがあるのは。江戸っ子にはかっこよく映った」

隠れたところに技巧を凝らしたゆかた。江戸時代の人々の粋な心を今に伝えています。

弐のツボ 素肌が色香を醸し出す

ゆかたの独特の着こなしのコツ、最大のポイントは、ここ。着物は、じゅばんの上に重ねて着ます。でも、ゆかたは、素肌の上に直接身につけます。

着物スタイリスト 鳴海彩詠さん

鳴海「着物に比べると着ている分が少ない分、隠すものがないので、素肌をより引き立たせる」

肌の露出は控えめにそのかわり、胸元は、適度に緩みを持たせ、風を素肌にまとう感じ。
そうすると、腰からすそにかけてのたるみが無くなり、美しいシルエットが生まれると言います。逆三角形、すそすぼまりのシルエットの方がきれい。


肝心なのはしぐさ。腕を上げるときは、袖先をつかみ、腕を隠すしぐさをしましょう。
ちらりとほの見ゆる素肌。それが、ゆかた姿ならでは。さわやかな色香を演出してくれるのです。

二つ目のツボ、
「素肌が色香を醸し出す」

参のツボ 融通無礙(むげ)こそゆかたの真髄

いまや、ゆかたは夏のおしゃれの定番。女性たちは思い思いの着こなしを楽しんでいます。
着物ショップ店主・小田嶋舞さん。

小田嶋「着物は決まりごとが多いがゆかたは決まりごとが緩い。着ながらデザインするのが面白さの一つ」

ルールや常識にとらわれず、自由に楽しむのがゆかたならではの魅力なのです。

三つ目のツボは、
「融通無礙こそゆかたの真髄」


気軽なおしゃれにゆかたを使う。それは今に始まった事ではありませんでした。ゆかたを着物の上に、羽織りコートや雨がっぱのように、汚れや雨をしのぐ為に用いていたのです。

さらにこんな、ゆかたならではの楽しみ方も・・・。
手ぬぐいを縫い合わせて作ったゆかたです。手ぬぐいのゆかたは江戸時代から昭和にかけ庶民の間で親しまれてきました。


ゆかたの世界は更に広がり続けています。
ゆかたをまとい下駄(げた)でタップする、「下駄っぷ」。映画などをきっかけに広まった新しいダンスです。
ゆかたは今も、進化を続けています。融通無礙な楽しみ方ができるからこそ、ゆかたは長く人々に愛されてきたのです。


古野晶子アナウンサーの今週のコラム

花火大会や夏祭りの季節がやってきました。祭りと言えば、やはり「浴衣」が似合います。街中でもパリッとのりをきかせた浴衣を着た女性たちをよく見かけるようになりました。それにしても、最近の浴衣はアレンジの仕方が豊富ですね!珍しいアイテムを合わせている方を発見すると、ついつい足を止めて振り返って見てしまいます。ハートやリボンなど、柄が洋服のような浴衣が増えているのはもちろんのこと、レースのついた"帯や重ね衿"、足が透けて見えるような"浴衣用の足袋"、さらに、ラインストーンのついた"帯止め"など・・・。固定概念が覆るようですが、どれも個性的ですてきに見えるのです。"今風アレンジ"をも自然に受け入れ、今なお、進化し続けている「浴衣」。懐の深さを改めて実感しています。アレンジを加えるためには"基礎"が大事!っということで、現在、近所の着付け教室で勉強中。ですが、私はやはり不器用。夏の期間に自分で着られるようになれるのか、不安です。

今週の音楽

楽曲名 アーティスト名
 PINK PANTHER THEME  HENRY MANCINI
 PINK PANTHER THEME  LUDVIC NAVARRE AKA ST GERMAIN
 ROAST BEEF AND FRIED POTATOES 安田芙充央
 TICOTICO LEWIS NASH
 FLOATING BOAT 津上研太
 SOLAR MILES DAVIS
 Que Pasa? THE HORACE SILVER QUINTET
 MERRY CHRISTMAS MR.LAWRENCE CHRIS MINH DOKY
 ROCKIN' IN RHYTHM 中西俊博 爆裂クインテット
 FASCINATED GROOVE THE FASCINATIONS
 SO IN LOVE MONJEU
 DREAMSVILLE MANHATTAN TRINITY
 IF I FEEL  渡辺香津美
 MANDELA ABDULLAH IBRAHIM 
 BOOGIENERIE PIERRE CAMMAS
 DRUMBOOGIE  BENNY GOLSON
 SKYLARK  KEITH JARRETT

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