日本酒というと、徳利と盃。
こう考えられるようになったのは、江戸時代末ころのこと。 |
壱のツボ 徳利はくびれが生み出す音を味わう
最初は、徳利鑑賞の秘けつです。 青柳「徳利は一回ぎゅーっとくびれてここでぷーっと膨らんでる。線の美しさ、曲線の美しさが徳利の美しさだと思います。首がしまってるということが、形だけでなく、酒を注いだ時に絶妙ないい音を伴ってしたたり落ちる。コッコッコッコという、音。これは至福の時だと思います。」 |
お酒を注ぐ時の「とくりとくり」という音。 |
音が、茶会の席で場を盛り上げる役割を果たすこともあるのです。 |
井関 「徳利を自慢とするにあたりましても俺のはいい音がするんだぞと、いうそれを名器とする方もいます。」 |
音を奏でる器、徳利。 |
場をもたせるため、名品が選ばれます。 |
1献目の時は、空気が胴の部分に入り込まないので、音はでません。 |
2献目の時には、空気がいっせいに胴へ流れこむため、「とくとく」と気持ちのいい音が生まれるのです。 井関 「初献には音が出ない。2献めにはとっくりと音がした。3献めにはまた違う徳利の音がすると。一つには和やかになりますよね。今までそういう音をきかなかった席中で、びっくりするような音がすることによって、わっと皆さんの心が和むという。そういう五感で感じるおいしさというか、酒をさらにおいしくする。」 |
一つ目のツボ、 |
弐のツボ 盃は見込みの眺めに酔いしれよ
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盃は、かさばらず、また、茶碗に比べ値段も手ごろなため、人気があります。 |
盃を選ぶ時には、手に持って上のほうから眺めてみるといいと、店主の黒田さんはいいます。 黒田 「お酒は楽しんでのむもの。ですからご自分でお好きな形をとって、お酒をつぐ形で、まずお酒を注ぐ形で斜めにみた感じのところを見込みといいますけど、見込みがきれいなものがいいと思います。酒をいれることで、この見込みが浮き上がってきます。やはり焼き方が良ければ、見込みが良い発色をします。 |
黒田さんご推薦の、斑(まだら)唐津(がらつ)の名品。 |
見込みの眺めの美しさから、盃にほれ込んでしまうこともあるといいます。 |
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作家の村松友視さんは、15年前、このお店のご主人に勧められ、何気なく一つの盃を手に取りました。 村松 「これ置いてお酒入れるでしょう。お酒いれると、まったくさっきあったおおきさじゃなくて、すごい巨大な水鉢の中に満々と水がたたえられているかのような景色のようにね、みえちゃって。その辺がすごくおもしろい。生き物みたいに変化するような気がして。」 |
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注ぐ前と比べると、見込みの眺めが鮮やかにみえてくることがわかります。
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この盃を作ったのは、小山富士夫。 |
岐阜の土で焼かれたとされる盃。 |
薄紅色があでやかな、萩焼き。 |
小山晩年の愛弟子、陶芸家の中里隆さんです。 中里 「見込みの所に、巻き貝のような形をしたものができるときがあるが、僕たちはつぶしてこみ。でも先生はそのま使う。プロは気になってつぶすが、小山先生だからできたこと。」 |
これが、その時の作品です。 |
参のツボ 肌に表れる雨漏りを味わう
18世紀、朝鮮半島で焼かれた徳利です。 |
こちらも、朝鮮で作られた徳利。 |
15世紀ころ、朝鮮で焼かれ日本に伝わった徳利。 |
コッ、コッ、コッ、コッ。お酒を盃に注ぐ時、徳利から聞こえてくる“音”に耳を澄ましたことがありますか?日本酒を殆んど飲んだことが無い私は、番組の中で初めてこの音に出会いました。これが何とも心地よい音で、お酒がキンと冷えているときなどはとても涼しげなのです。静かな場所で一人お酒を嗜み、音を味わう。こんな風流な楽しみ方が出来たら良いなあ!なんてことを考えていたら、ある人のことを思い出しました。この人ならこんな至福の時を知っていたのではないでしょうか?それは中国の唐の時代に生きた詩人、李白。よくお酒の話題が出てきていたような気が・・・。おぼろげな記憶を頼りに調べてみると、お酒を飲んだときの詩がたくさん出てきました。“月”と“自分”と“自分の影”の三人でお酒を楽しんだとか、月を見ながら見晴らしのいい場所でお酒を飲む様子など、情景が目に浮かぶような詩ばかりでした。高校以来、漢詩に触れたことがありませんでしたが、改めて読んでみると、これが面白いのです!国も生きた時代も違うのに、人間関係や仕事についての悩みが透けて見えたり、お酒で気晴らししたりしている様子などが分かり、妙に親近感を抱いてしまいました。秋の夜長に徳利の音を楽しみながら、改めて李白の詩と向き合ってみようかなって思っています。
楽曲名 | アーティスト名 |
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Stets I truure | Jan Lundgren Trio |
Time on my hands | Lee Konitz |
George's dilemma | Clifford Brown |
Misty | The Great Jazz Trio |
The dolphin | Toots Thielemans |
Back to the groove | 井上陽介 |
Paradigm shift | Stanley Clarke Trio |
Facing east | Keith Jarrett, Gary Peacock, Jack Dejohnette |
I fall in love too easily | Chet Baker |
Return | Steve Swallow |
Say it | John Coltrane Quartet |
My fate is in your hands | Teddy Wilson |
Stardust reprise | New York Trio |
密命(samurai blues) | 納谷嘉彦サムライ・ビバップ・トリオ |
Four | Christian Sands |
Come Sunday | Richard Davis |