椅子の研究家として知られる織田憲嗣さんです。収入のほとんどを椅子につぎ込み、今や世界一ともいわれる木の椅子のコレクションを持っています。 その数なんと、1200脚。 |
最も思い入れがあるのが、学生時代に出会った一脚の木の椅子です。 材料のウオールナットを漆で仕上げ、木の持つ風合いを活かしています。 |
織田 「日本ではたかが椅子なんですけど、欧米ではされど椅子。椅子というのは、非常に難しいデザイン。クリアーしたものがヨーロッパやアメリカでも非常に高い評価を得ています」 ゆるやかな曲線と、上から下へ流れるような直線が優美なたたずまいを生んでいます。作ったのは、アメリカの大建築家、フランク・ロイド・ライトです。 |
黒い格子状の背もたれが高くそびえるこの椅子も、建築家の手によるものです。近代ヨーロッパの建築に大きな影響を与えた、マッキントッシュの作品。
織田 「かなりの部分建築家が椅子をデザイン、8割ぐらい、世界の建築家がデザイン、それぐらい建築家のものが多いですね」
精緻に設計された木の椅子。 そのフォルムには、建築家の個性が凝縮されているのです。 |
壱のツボ デザインに建築のエッセンス
中村好文さんも、椅子をてがけてきた建築家の一人です。 これまでに、多くの椅子を設計してきました。 中村 「建築っていうのは注文主、施主がいるんだけど、予算や工期もある、いつも制約を受けている。これが思うようにならない。でも家具のデザインは自分の発想だけで完成までもっていける。椅子は本当に一番身近な構造物。そこから建築も発想したい」 |
この椅子も、世界的に有名な建築家の作品です。独創的な造形で知られる、アントニ・ガウディ。「直線は人類、曲線は神のもの」ガウディは、曲線で人智を超えた表現に挑みました。 人が腰掛けるための小さな家具。そこに建築家たちは建物の原点を刻んだのです。 |
同じ形をした三脚の木の椅子をご覧ください。一見同じに見えますが、近づくとそれぞれ異なる木目が・・・ 木の質感によって、椅子の表情が全く異なります。 |
三脚の椅子の作者は、宮本茂紀さん。50年以上、木の椅子を作り続けてきた名工です。 最も大切なのは、木目を見極める作業です。 |
これはトチの木に特有に表れる「縮(ちぢみ)」という紋様。 横に積み重なったように見える縞(しま)模様(もよう)が、古くから珍重され家具に使われてきました。 宮本 「これを削るよね。削って仕上がったにしても、そのときの雰囲気と全く変わる。 色の変わりかたが、染色と違うから、なじみ深い。 愛着もどんどんわいてくる」 |
弐のツボ 時を経た木の味わいを堪能せよ
優れた木の家具を生み出してきた北欧の国、デンマーク。 |
こちらは、ビラウゴウドさんご夫妻。 リビングには、200年以上に渡って受け継がれてきた、木の椅子があります。 |
デンマーク伝統のロッキングチェアです。 ビラウゴウド 「あの椅子は私が若かった頃、母方の祖母から譲り受けました。これを見ると、母や祖母たちが長年使ってきた趣が感じられるわ」 頑丈な作りであるからこそ、この美しさが保たれてきました。 |
デンマーク最古の家具工房では最高の技術を持った職人が、王室御用達の椅子を作ってきました。この日は、年に2回買い付けるアフリカ・コンゴ産のマホガニーをチェックする日。デンマークでは、ヴァイキングが活躍した時代から、世界中の木材を取り寄せ、頑丈な船を造ってきました。 |
木材は、地下にある貯蔵庫で一年間寝かせます。 十分に乾燥させることで、気温の変化によって木が折れたり曲がったりしないようにする為です。 |
木目のポイントは、流れに沿って切ること。こうすることで、折れにくく美しい椅子のパーツができるのです。 |
脚や背、ひじ、それぞれのパーツに、マホガニーの気品ある木目が流れています。 |
これは、その形の美しさから「椅子の中の椅子」と呼ばれる「ザ・チェア」。 白木で作られた椅子も、半世紀以上使い込まれたことで、独特のキャラメル色の味わいが醸し出されました。 |
参のツボ たたずまいに人のぬくもり
椅子職人の山岸高光さんです。 山岸さんは、デンマークから特別にライセンスを受け、椅子デザイナーの巨匠、フィン・ユールの椅子を作っています。 椅子の形は、どこか人間の体に似ていると、山岸さんは言います。 |
山岸 「極端なこといえば、女性の体にたとえればソフトでしなやかな曲線ていう感じ」 |
形が、人間そのものを表すという椅子も生まれました。 「モンローチェア」です。ポーズをとるマリリンモンローのをそのままに表しました。 |
最後にご紹介するのは、独身男性が使う椅子です。 スーツがかけられるように形どられた背もたれは、人体のフォルムを思わせます。 温かみのある木の椅子は、人に一番近い家具。 一つ一つが違った表情を持っています。 |
今週から「美の壺」のコラムを担当します、古野晶子です。どうぞ宜しくお願いします!
最初のテーマが“木の椅子”と聞いたとき、思い浮かんだのは実家にあるロッキングチェアでした。私が産まれる前からそこにあり、眠気を誘う程好い揺れと木の手触りが気に入って、よく座っていたものです。そのときの記憶を懐かしく思い返しました。
椅子はそれ一つで部屋の印象を大きく変えると言ってもよい程、存在感があるアイテム。中でも「木の椅子」は、温かい雰囲気にしてくれます。椅子のひじや背をじっくり見ていくと、木目の美しさや使いこまれた木ならではの独特の色に深い味わいを感じます。番組では見ごたえのある素敵な椅子がたくさん登場するので、じっくりご堪能下さい。
楽曲名 | アーティスト名 |
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Moanin' | Art Blakey & The Jazz Messengers |
Don't be that way | Django Reinhardt |
Ojos de rojo | High Five |
Flappin' from here | 海野雅威 |
Ev'ry time we say good bye | Ingrid Jensen |
Grey flannel | Mel Lewis |
Once upon a summertime | Manhattan Trinity |
Do what you gotta do | Kenny Burrell |
The same hellow, the same goodbye | Michael Fmeinstein |
Blue Daniel | Eric Reed Trio |
Imagination | David Hazeltine~George Mraz Trio |
Processional | Dave Holland Sextet |
Gone with thw wind | Wes Montgomery |
Rue Hautefeuille | Chris Minh Doky |
Lara | 橋本一子 |
Variation 14~Variations on Goldberg's theme and dreams | Richard Stoltzman |