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鳥取県・倉吉市には、江戸の終わりごろから始まった「倉吉絣」が伝わっています。
山陰地方に多く見られる曲線を生かした絣模様、「絵絣」と呼ばれます。 |
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「絵絣」を織ってきたのは、主に農家の女性たちでした。
“良い絣が織れると良縁に恵まれる”といわれ、女性たちは夜なべ仕事に励み、技を競い合ったといいます。
「絵絣」には、健康で幸福な生活がおくれるように人々の思いが託されています。
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「弁慶と牛若丸」。
強い男の子に育つようにとの願いです。
経糸と緯糸の組み合わせで、複雑な模様を描くことができます。 |
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「倉吉絣」の技術を受け継ぐ、福井貞子さんです。
福井「(織り手の女性たちは)絣のデザインの変わったようなものを、問屋が倍の値段で買い取るということで、絶えず発想を積み重ねて織り続けてきたようです。繊細な曲線は非常に織りにくいんですけども、神業のようなすばらしい力強さで織っており、本当にいけいの念といいますか、神々しいような気がします。」
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高度な技術を用いて織り出された「絣」模様が、生き生きとした魅力をたたえています。
絣鑑賞、壱のツボは、
「糸が織りなす無限の模様」 |
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九州・福岡県の「久留米絣」の特徴は、幾何学模様。
かっちりとしたデザインですが、微妙なかすれ具合が、温かみを感じさせます。 |
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糸を染める前に行う「括(くく)り」という作業。図案を元に、糸に印を付け、それに添って麻の皮で括っていきます。 |
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しっかりと縛ることで、括った部分には、染料が入りません。 |
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括った糸を「染め」ます。
一本一本の糸がしっかりと染まるように繰り返し藍に浸します。 |
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括りをはずすと、その部分だけが染まらず、くっきりと白く残ります。 |
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そして、「織り」。
この「絣」の場合、経糸は模様に応じて九種類に、緯糸は11種類に染め分けられています。
その糸を織り込み、模様を作り出していきます。 |
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織る過程で、独特なカスレが現れてきます。 |
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明治時代から続く絣工房の五代目・森山哲浩さん。
森山「僕らとしてはかすれないように、しっかりとやっているつもりですが、絣の宿命で、糸の伸び縮みがあったり、織り手の足の踏み具合で変わったりしますので、どうしてもカスレてしまいます。それが魅力でもあるし、おもしろさだと思います。」 |
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必然的にできてしまうカスレ。
できるだけ正確に仕上げていこうという職人の技だけが、深みのある表情を生み出します。 |
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明治時代、久留米で掛け布団用に織られた絣です。
2メートル近い布に巨大な「城」が、描かれています。
今では、再現不能といわれる手間をかけた染と織り。
一見素朴な絣模様は細部まで計算された熟練の技の結晶です。 |