三井文庫 |
縦2メートル、横3メートルの巨大な地図。
紀州徳川家の秘図、『明暦江戸大絵図』です。
江戸城を中心に手書きで描かれた江戸の地図。
明暦の大火後、幕府の都市計画用に作られた地図です。 |
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古地図の復刻を手がけてきた、芳賀啓さんです。
芳賀「江戸の初期の、これだけ古くてこれだけ広い範囲、それからこれだけの情報が集まった地図を私は見たことありません。まさに江戸図の宝石といっていいと思います」 |
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まず、目をひくのは、色。
複数の色で、町が色分けされています。
江戸の地図で色は、重要な役割。
町屋は赤、寺社は白、川や池は青で表わしています。
芳賀「この地図を見てますと、江戸のこの時期の町はとってもきれいだったんだな、美しい町だったんだなって思わせる色使いをしております」
古地図鑑賞、1つ目のツボは
「刻まれた、美しい町の面影」 |
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これは、江戸時代の中ごろに作られた、江戸切絵図です。
大名、旗本など武家の一軒一軒が、名前入りで記されています。
実は江戸の町は表札がなく、似たような家並みが続いていました。
訪問客の多かった武家にとって、携帯用の区分地図は画期的な地図だったのです。 |
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ところで、この地図に描かれた名前の向き、バラバラだと思いませんか?
実はこれ、理由があるのです。
名前の向きが、建物の表門の位置を示しているのです。
これで、2つの通りに面している岡本さんのお宅の入口も、一目でわかります。
道沿いに点在する四角のマーク。
これは、「番所」と呼ばれる、今でいう交番のようなものです。 |
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切絵図は、時代の変遷で、より美しい地図となっていきます。
特にこの尾張屋板の切絵図は、錦絵風の美しさでロングセラーとなりました。
この地図から、また新たなくふうが加わります。
家紋です。
家紋は、大名の藩主が住む、上屋敷を表わしています。 |
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庶民たちの楽しみもまた、切絵図に反映されています。
ところどころに描かれた富士山のマーク。
江戸時代流行した、富士山信仰の影響です。 |
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江戸には、富士山を模した、富士塚が多く作られました。
当時は、この富士塚にお参りすることで、現実の富士登山と同じご利益を願ったのです。
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芳賀「幕末から今まで150年ほど経ってしまっている。たかが150年前の都市なんですけども、今ではもう面影というのはすっかりなくなっています。江戸の全体は、この切り絵図の中に、面影として残されているだけだと。だから江戸切絵図というのは、全体として江戸の町そのものを表わすサインだったといえるんじゃないでしょうかね」
今や幻のごとく、消えてしまった江戸の風景。
その美しい面影を辿る、数少ない手掛かりが、江戸切絵図の中に、ちりばめられています。 |