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今、男の着物に熱い視線が注がれています。
今年3月に催されたファッションショーでは、和装のモデルたちが圧倒的な色気を放ちました。
あでやかな色大胆な構図・・・
実はすべて日本の伝統的なデザインなのです。 |
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かつて華やかだった男の着物を現代によみがえらせようと、そのショーをプロデュースした一人がこの方。
京都、しにせ帯匠の10代目、山口源兵衛さんです。
山口「桃山時代までは、男はくじゃくのように派手な衣装を着てました。現代は、もっと着物を男が晴れやかに楽しんでほしい。のびやかに思い切って着てほしい。」 |
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こちらは源兵衛さんが再現した桃山時代の着物。
金糸や銀ぱくを使った豪華けんらんな衣装です。
当時の着物には男女の区別もあまりなく、男たちは華やかさを競い合い、おしゃれに情熱を注いできたのです。 |
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6年前、東京・銀座に、日本で初めて男性の着物専門店がオープンしました。
男が着物を着ることで、より豊かな生活を送ることができる、そんな信念を持って泉二弘明さんはこの店を立ち上げました。
泉二「男の着物は『男磨き』の最高の武器。自分の持っている『感性』とか『所作』とか、そういうものがすべて出てきます。例えば、パーティに行くときとか、仕事のときとか、TPOのコツをつかんでもらえば、より幅広く楽しんでいただけるのではないでしょうか。」 |
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一年中、着物で過ごすという泉二さん。
TPOに合わせた着物選びをご覧いただきましょう。
仕事の際には、羽織が必需品です。
羽織はいわば、ジャケットのようなもの。訪問着としても通用します。 |
| 休日の散歩には、カジュアルな『着流し』。
着物に帯を締めたシンプルな組み合わせです。
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| そして、パーティやあらたまった場所では、羽織と袴(はかま)をつけると、フォーマルな装いになります。
泉二「TPOを守っていれば、色も柄も自由に選ぶことができる。着物は、自己表現の最大の武器なのだから、自由に選んでください。」 |
| 山口源兵衛さんが着ているこちらの着物は、紙の繊維を織り込んだ紙布(しふ)に、くもの巣の柄を大胆にあしらったもの。
このようなしゃれた着姿のツボはどこにあるのでしょうか?
山口「やっぱり、腰。帯を締める位置が重要。着姿は帯より上、上半身がゆったりして、下半身がすっと締まっている。これがきれい。帯を巻くと着物の表情がころっと変わる。」 |
| そこで、一つ目のツボは、
「帯が決める着姿」
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| 男性用の帯にも、多彩な色と織り模様があります。
基本は、『角帯(かくおび)』。平たく締められて、しっかりと形を決めることができるのが特徴です。 |
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織り目の詰まった博多織や京都西陣の綴(つづ)れ織が代表格です。
山口「帯選びにルールは無い。ネクタイのように自由に選んでよい。ピタッと合わしすぎてもやぼ。少しずらすくらいがいい。」 |
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源兵衛さんのずらしのテクニックとは?
例えば、こちらの白い絹の着物にはどんな帯を合わせるとよいのでしょうか?
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源兵衛さんは、あえて黒い鹿革(しかがわ)の帯を選びました。
『印伝(いんでん)』と呼ばれる、漆で文様を付けた帯です。
山口「絹織りの着物には、素材で負けないように、鹿革の印伝の帯にした。」 |
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帯は締め方次第で、ぐっと男の色気が増します。
ポイントは、『前下がり後ろ上がり』。
前はおなかの下に合わせ、腰骨にしっかりと当てて後ろ上がりに締めます。
こうすることで、上半身はかっぷくの良さが強調され、帯から下はすっきりとしたシルエットになります。 |
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それでは、とっておきの着こなしをご覧いただきましょう。
こちらの着物は、『小石丸(こいしまる)』という最高級のまゆからとった絹でできています。 |
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『小石丸』は、天皇家だけが使ってきた幻のまゆ。
繊細な糸が深みのある光沢を放ちます。
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源兵衛さんが選んだのは同じ小石丸の絹を使った角帯。
着物の風格に負けないように、古い銀ぱくを織り込んだぜいたくなものです。
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腰が決まることで、全体から漂う独特の色気。
同じ着物でも着こなしによって、着る人の個性が表れる、帯にはそんな個性を引き立てる特別な力が秘められているのです。
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