| 洋服の仕立てに無くてはならないのが「裁ち鋏」です。
柔らかい布を自在に裁断する切れのよさが、持ち味です。
それには、理由があります。 |
| 手作りで「裁ち鋏」を作る数少ない職人の一人、北島和男さんです。
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鉄を赤くなるまで加熱し、たたきながら形を作る伝統の技法。
これは日本で長い間作られてきたあるものの製法と同じです。 |
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究極の刃物といわれる日本刀。
高度な技術がつぎ込まれた美術工芸品です。 |
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北島「このはさみは日本刀と同じ作り、共通点があるんじゃないかと。
刃の切れ味、研ぎの美しさが一番あるんじゃないですかね。」 |
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「裁ち鋏」と日本刀。
どちらも鋭い研ぎの美しさが、白い輝きを放ちます。
はさみ鑑賞、壱のツボ、
「二枚の刃に 日本刀の輝き」 |
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東京・人形町にあるしにせ刃物店。店先に、明治時代の「裁ち鋏」が飾られています。
毛織物の「羅紗(らしゃ)」を切るために作られたものです。 |
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手がけたのは「弥吉」という職人。
明治維新の廃刀令で仕事を失った元刀鍛冶です。
弥吉は、はさみの刃に日本刀の製法を応用しました。 |
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軟らかい鉄と硬い「鋼(はがね)」…、
こうした性質の異なる鉄を組み合わせることで、鋭い切れ味を持ちながらしなやかで折れにくい刃になるのです。 |
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「鋼」は、炭素量が多い鉄。
熱した鉄を、急激に冷やすことで、より硬くすることができます。 |
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「はさみ作り」は、軟らかい地鉄(じがね)に、「鋼」を重ね、およそ1000度まで加熱していきます。
何度も強く打ち込み鍛え、「地鉄」と「鋼」を接合させていきます。
日本刀の技術を応用した「着け鋼」という技法です。 |
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そして、重要なのが二枚の刃の組み合わせです。
よく切れる「はさみ」になるかは、これが決め手。 |
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閉じた状態で真横から見ると、わずかなすき間があります。
それぞれの刃を、微妙に湾曲させているからです。
この状態では、二枚の刃は常に一点で交わります。
ここがモノを切るポイントです。
日本刀の技術を応用し、複雑な工程を経て完成した「裁ち鋏」。
その美しい刃には、日本人が培ってきた伝統の技が、息づいています。 |