2021年05月28日 (金)あした、あさっての次は?方言"ささって"の謎

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あした、あさって…の次を何と言ってますか?

 

標準語では「しあさって」だけど、三重県だったらそこは「ささって」でしょ!という人も多いかもしれません。

 

でも、そもそも「ささって」って何なの?三重県でも全県で言うの?一部エリアだけ?

 

そんな「ささって」の謎を、静岡県出身の新人記者、私、中野七海が取材してきました。

 

(津放送局 記者 中野七海)

 

「ささって」ってそもそも…

 

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静岡県では、「あさって」の次は「しあさって」。

 

「ささって」は聞いたことなかったですし、“三重の方言”として有名だとは知りませんでした。

 

そんな“三重の方言”について詳しい人がいると聞き、三重大学に行ってきました。

 

お話をうかがったのは方言の研究を続けて四半世紀、余健教授です。

 

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(中野)
「『ささって』を初めて聞いたときに何が刺さってるんだ?と思っちゃいました!」

 

(余教授)
「なるほど・・・・・」

 

(中野)
「(す、すべったか…、よし、ここは気を取り直して)ところで、『ささって』ってどういう由来からなんでしょうか」

 

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(余教授)
「『さ』は、来週の次の再(さ)来週、あるいは来年の次の再(さ)来年、そんな時に使う『さ』という説が一般的ですね。『あさって』の次の日という意味で『さあさって』が縮まって、『ささって』という形が生まれてきたと考えられます」

 

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なるほど、わかりやすい!「ささって」は「さあさって」を短くした言い方だったんですね。

 

教授によると、このほかにも、きょうから数えて3日目だから「ささって」、「さきあさって」が変化して「ささって」になったなどの説もあるといいます。

 

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「ささって」は三重弁じゃない!

 

では、「ささって」は三重県特有の方言なのか聞くと…。

 

「三重県だけではなくて、中部地方、北陸にかけて確認されていますよ。石川県の能登半島から、岐阜県、そして三重県辺りですね」

 

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えっ!なんと、三重だけではなかった!

 

三重から北陸にかけての中部地方のほか、鹿児島県の種子島などでも確認できるといいます。

 

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意外にいろいろなところで使われているもんなんですね。

 

三重県内でも地域性がある

 

一方で、伊賀市や名張市、そして熊野市より南では「しあさって」が使われるなど県内での地域差もあるといいます。

 

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その理由について余教授は「伊賀・名張は京都や大阪との生活圏ができてますし、熊野以南の地域は和歌山県あるいは奈良県南部との生活圏ができています。そうした中で言葉の共通性があるんです」

 

伊賀や名張のことばは、津の辺りに比べると“関西弁”に近い、という話を聞いたこともありますが、昔からの地域性や生活圏と密接なつながりがあるというのは納得です。

 

若者は“ささって”を使わない?

 

さらに、「ささって」をめぐっては世代間のギャップがあるという話も。

 

NHK津放送局には三重県出身の人がたくさんいるので、ちょっと聞いてみることにしました。

 

まずは三輪アナウンサーに…。

 

(中野)
「あした、あさっての次の日のことなんていいますか」

 

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(三輪アナ)
「ふふふっ。『ささって』って言ってほしいんでしょ」

 

(中野)
「(うっ!するどい!)はい、言ってほしいです!」

 

(三輪アナ)
「もちろん分かりますけど、私は使わないですね、昔から。でも親は使いますよ」

 

あら、意外に使われてないのかも。

 

続いて、編集マンの方に。

 

(中野)
「あした、あさっての次の日のことなんていいますか」

 

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(編集マン)
「ささって?」

 

(中野)
「使いますか」

 

(編集マン)
「使います」

 

今でも使われている方がいてよかった!

 

警備員さんにも聞いてみました。

 

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「子どものころは学生のころは使ってましたけど、今はあんまり使わんもんね~」

 

今でも使うという人もいますが、知ってはいるけれど使わない、と言う人が徐々に増えているようです。

 

「ささって」が消える!?

 

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余教授によると、テレビなどのメディアの影響で、方言はどんどん消えているといいます。

 

「ささって」は今後、どうなっていくのか聞くと…。

 

「若い世代の人の中では、もう冗談でしか『ささって』を使わないということもあります。これって、方言がなくなってしまう前段階の現象なんですね。残念ながらこのままでいくと『ささって』の使用は三重県内では聞かれなくなる可能性は高いと思います」

 

そうなのか…。出会ったばかりの『ささって』ですが、なんかちょっとさみしい。

 

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「『ささって』と言っても伝わらない、理解してもらえないという経験が積み重なってくると、しゃべるほうもだんだん自信がなくなってきてしまいます。だから、三重の人には自信を持って『あした、あさって、ささって』と言ってほしいですね」

 

というわけで結論です。

 

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「『ささって』は、『あさって』に『次』を表す『さ』がついたものとみられる。中部地方などで使われる方言だがこのまま消えてしまう可能性もある」でした。


このまま消えてしまうのはおしい。「ささって」応援団として、日ごろから「ささって」を使っていきたいと思います!

 

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(中野七海 2021年入局 好きな三重弁は「かえるのかんぴんたん」)

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:15:30


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