2022年11月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:写真
遺影でも存在感をしめす父/春爺さん
作者の父親は常に自信を持ち、知識や教養も高く堂々として存在感にあふれたお方であられたのであろう。
そして、亡くなられた後もその遺影にまで存在感が漂っているというのである。
多くの人達に尊敬され、惜しまれつつ亡くなられたことだろう。
そして、多くの人が生前にうけた御恩に感謝をしながら、遺影に手を合わされたに違いない。
遺影をテーマにした句が、たくさん寄せられた中にあって、ずっしりとした重みのある素晴らしい一句である。
注文は斜め15度妻を撮る/田舎のマダムさん
より美しく写真を撮るための技術のようである。
しかし、なぜ15度なのだろうか。きっと、試行錯誤の末、導き出した結論なのだろう。
確かに誰しも美しく若々しく撮ってもらいたいと願っている。
こうした注文を素直に受け入れているご主人様の優しさも同時に伺うことができる。
仲の良いご夫婦である。「写真」の記述はないが、構えたカメラにポーズをとる姿がくっきりと目に浮かぶ。
捨てようとすると目が合うブロマイド/ゆうさん
私たちが子どもの頃、大切なものはブリキの缶に入れて保管したものだ。
男の子はメンコ、女の子はおはじきなどを宝物のように扱っていた。
このブロマイドも長い間、大切にしていたのであろう。
最近になり、整理をしようと取り出しては見たものの、そのブロマイドと目が合ってしまって捨てることを躊躇(ちゅうちょ)してしまった。
憧れたスターの姿が甦(よみがえ)り、瞬時にして自身の若き時代へと時が巻き戻されたことだろう。
「ブロマイド」という懐かしい単語が上手く生かされている。
<入選>
この笑顔昭和が残るセピア色/1刀両断さん
写真では親友らしく見えていた/汐海 岬さん
幸せのシャッターチャンス逃さない/こまっぴさん
集合写真いつも左の端にいる/かぐや姫さん
戦争の写真言葉が下を向く/ムギさん
ハイチーズ笑顔は誰も美しい/谷てる子さん
従順に見せる写真のしたたかさ/福村まことさん
好きな子を指で白状させられる/瑠珂さん
写真よりまず網膜に焼き付ける/火の鳥さん
証明の写真キリリと結ぶ口/だんでらいおんさん
丹川修先生
今回のお題「写真」に対し、免許証、遺影、セピア色、アルバムなどを取り入れた句が多く寄せられました。
今日までの長きにわたる記録である「写真」に対するそれぞれの思いを垣間見ることができ、楽しく選をさせていただきました。
そうした中から、やはり意外性や独自性に富んだ句を入選とさせていただきました。
また、若い方の作品と思われる中に、「盛る」や「映え」などを用いた句も相当数ありました。
言葉は生き物であり進化をするものですが、果たして、それらが今の段階で「写真」の題に対して適切かどうか疑問を感じました。
できる限り正当な用法に沿った句をつくるべきだと思います。たくさんのご投句ありがとうございました。
投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50