2021年10月29日 (金)【みえDE川柳】 お題:リサイクル
リサイクルショップに見栄を捨てに行く/草かんむりさん
作者はきっと、若いころブランド品を買いあさっては身につけていたのである。ただしそのブランドが好きだからとか自分に合うからとかいう理由ではなく、注目を浴びたい、自慢したいという理由であり、人に見せることが目的だった。歳を重ねるにつれそれが単なる見栄だったと気付き、自分には必要のないものだと認めるに至ったのだ。
リサイクルショップに「売りに」行くのではなく、「捨てに」行くと詠んだところに潔さが感じられ、句を引き締めている。
ガラクタを宝に変える子供の眼/奥田よしさん
「ガラクタ」はその辺に落ちている石ころだろうか、それとも空き箱やプラスチックの容器、壊れた道具、使い古した布類……。大人も何かに再利用できないかと考えはするが、それはもったいないという邪心(?)であって、素直な子どものように「宝」になるとまでは思わない。もっとも流木アートなどというのもあるから、大人の中にも「子供の眼」を持つ人もいるのだろう。
宝に「変える」と詠んだことで、ガラクタが宝に再生される意味合いがはっきりし、「リサイクル」の題にうまく合う句になった。
歯ブラシの余生は風呂のカビ落とし/市川勲さん
不用になったものをすぐに捨てるのではなく、何かに役立ててから捨てようと工夫するのが、エコを意識した(ケチな?)暮らし方である。そんなもったいない精神にあふれる人を刺激するものの一つが、歯ブラシである。
何かを再利用する句は他にもあったが、「歯ブラシ」という安価で取るに足らないものであること、「余生」という言葉でいかにもくたびれた感じを出していること、また、その使い道が「風呂のカビ落とし」という少々情けない仕事であることから、この句が最も川柳的であると感じた。
<入選>
リサイクルショップで売ってまた買って/青い鳥さん
おでんの具カレーに入りリサイクル/カワサンさん
千歳飴以外お下がりエコ日和/田舎のマダムさん
経験をリサイクルする定年後/なるほどマンさん
献体と言うリサイクル決意する/淺川八重子さん
飲むたびにリサイクルする武勇伝/汐海 岬さん
入道雲リサイクルしていわし雲/ムギさん
リサイクルそんなつもりで溜めたゴミ/もふもふさん
再生紙とおい涙の痕がある/橙葉さん
肥料にはなりそうもない核のゴミ/アカエタカさん
橋倉久美子先生
357句のご投句をいただきました。ありがとうございます。
「リサイクル」は、読み込むと5音も使ってしまうことになるし、発想が広がりにくい難しい題だったかと案じていたのですが、生活感あふれる句が多く、楽しく読ませてもらいました。
川柳はたった17音の短い形式ですから、あれもこれも丁寧に伝えることはできません。今回も、何かを伝えようとする気持ちはわかるものの、言いたいことがはっきり伝わってこない句がいくつかあり、もどかしい思いをしました。言いたいことを一つに絞り、わかりやすい表現を試みてください。できあがった作品を誰かに聞いてもらい、伝わるかどうか確かめるのもいいかと思います。
また、5・7・5のリズムは川柳の基本中の基本です。ことに中7、下5はきっちりと守ってほしいところですが、うっかり8音、6音になっていることが珍しくありません。投句前に、もう一度指を折って数え直してみるようにしましょう。
投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50