2021年05月28日 (金)【みえDE川柳】 お題:子ども

天 原色の思い出ばかり幼き日/汐海 岬さん

丹川修先生 純真で素朴でけがれを知らない幼い日の思い出はすべてが赤や黄そして真っ青な原色に染められた華やかな思い出ばかりである。つらく苦い思いもあったのでしょうが、思い出になるとそれも時間と言う魔法がかかり原色に変わっていきます。それにしても「原色の思い出」と言う表現が素晴らしい。キラキラと輝く秀句の中の秀句である。

 

地 新しいあだ名を背負うクラス替え/せいじさん

丹川修先生 「背負う」と言う表現にやや重い物、運命的なものを感じなくもないが、決して人を傷つけたり差別的なものではなく、愛きょうのある人気者らしく、クラス替えにより新しいあだ名を授けてもらったのだろう。何十年後、同窓会などでもきっと「おい、○○元気か?」なんてあだ名での声がかかることだろう。この句は「子ども」を読み込んでいないが、充分「子ども」に焦点が当たっている。なんとも楽しい句ではないか。どんなあだ名だったのだろう。

 

人 新生児春の音符に乗っている/宇宙人さん

丹川修先生 生まれたばかりの赤ちゃんを囲んで、ご両親、おじいちゃん、おばあちゃんのこぼれるような満面の笑みが目に浮かんでくる。春の温かい日差しの中で最高の幸せを感じていることだろう。まるで赤ちゃんが五線の上で弾んでいるようです。読み手のこちらまで嬉しくなってくる。その幸せを「春の音符に」と表現したところが素晴らしい。省略の文芸だからこの「春の音符に乗っている」のたった12音が色々な言葉になって心に入ってくる。

 

<入選>

腰の高さ今でも残る柱キズ/城門塵さん

犬が来て子は父となり兄となり/涼妻喧母さん

待ちなさいどこで覚えたその言葉/瑠珂(るか)さん

午後八時やっと子どもの電池切れ/いちかわいさおさん

エプロンをつけるとママの口調です/葵さん

おてんばの靴が飛び込む友の家/せきぼーさん

ブランコのもう背は押さぬ子のために/夜半亭あぶらー虫さん

子が生まれ真っ先に買う将棋盤/清詞薫さん

子のような顔で愛犬散歩する/久実さん

神童とマドンナ来ないクラス会/おくだよしさん

 

丹川修先生 丹川修先生

 お題の「子ども」に対し、作者の子ども時代の句、作者自身の子どもの句、愛玩動物を子どもと捉えた句、客観的な子どもの句など幅広く詠まれていました。しかし「子どもは宝」「将来や未来を背負う」などのごく一般的な視点での句も相当数ありました。「子ども」自体に希望やまた将来や未来を担うという概念が含まれていますので改めてそのことを詠まれても大きな感動を与えることはできませんね。また、お題の性格上からか教育めいたもの、格言めいたものも少なからずありました。特に明るく楽しい句に入選のスポットを当ててみました。いつものことですが新しい発見、独自性の有る着眼を心掛けてください。多数のご投句ありがとうございました。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50


ページの一番上へ▲

カテゴリー

番組

RSS