2020年04月24日 (金)【みえDE川柳】 お題:卵

天 マンネリが嬉しい母の卵焼き/あそかさん

橋倉久美子先生 卵焼きという食べ物には、それぞれの家庭の味があるようだ。しかもその味は、簡単には変わらないらしい。たまに違う味付けをして、それはそれでおいしいと思っても、いつの間にか元に戻っている。
 作者は、久しぶりに帰省してお母さんの卵焼きを食べたのだろうか。「マンネリ」というマイナスイメージの言葉を、「嬉しい」というプラスにひっくり返すことで、変わらぬ我が家の味を喜んでいる気持ちがよく伝わってくる。

 

地 弱虫の息子が好きな茶碗蒸し/うさぎ物語さん

橋倉久美子先生 この「息子」は小学校低学年ぐらいだろうか。「弱虫」であることと「茶碗蒸しが好き」であることに因果関係はないのだが、こうして句として提示されると、茶碗蒸しの味や舌触りの優しさ、繊細さが、弱虫にも見える子どもの性格と重なって、納得させられる。

 何やら真剣な顔で、熱い茶碗蒸しを一生懸命食べている男の子が目に浮かんできた。

 

人 卵割る音が私の始業ベル/えみさん

橋倉久美子先生 眠い目をこすりながらの朝食作り。トントン、パカッと卵を割る。シャカシャカとかき混ぜて卵かけご飯の日もあれば、いきなりフライパンにジュッと目玉焼きを作る日もあるだろう。シャカシャカとジュッを続けて卵焼きの日も。いずれにせよ、健康的な音とともにおいしそうな匂いも漂い、やがて目も覚めてくる。
 卵を割る音を始業ベルにたとえたことで、健康的で明るい句になった。前向きな気持ちがうかがわれ、好感が持てる。

 

<入選>

献立はサニーサイドと煙に巻く/フーマーさん

亡き夫の夢みた朝はタマゴ二個/小宮やすさん

妻の顔描いて殻割る茹で卵/いちかわいさおさん

濡れ落ち葉金の卵であった日も/薫風さん

10分を歩く卵の10円差/福村まことさん

卵綴じ何か隠していませんか/橙葉(とうよう)さん

親子丼親を卵が抱きかかえ/牛美さん

卵だと思えば腹も立たず済む/安田蝌蚪さん

卵白をあわ立て恋の準備する/比呂ちゃんさん

特売日明日だが今日に要る卵/葉さくらさん

 

橋倉久美子先生 橋倉久美子先生

 489句いただきました。卵を正面からとらえた句が多かったので、「題に合っているか?」と悩むことなく選ができました。多かったのは「卵焼き」「ゆで卵」「卵かけご飯」「黄身が二つ」の句。「コロンブスの卵」もたくさんありました。同じものを題材にしても、その人独自の見解、見つけがあったり、おや?と思わせる表現があったりすると、入選に近づくと思います。
 川柳は5・7・5のリズムが基本で、特に中7、下5は守ってほしいところです。中8、下6になっていないか、投句前にもう一度見直してくださいね。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:19:00


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