2020年01月31日 (金)【みえDE川柳】 お題:飾る

天 ゆでたまご飾る術など知りません/寺井一也さん

吉崎先生 「飾る」というお題で、「ゆでたまごを飾る術(すべ)」と読者の意表を突いた。「ゆで卵」の句では、「茹(ゆ)で卵きれいにむいてから落とし」(延原句沙弥)など有名な句もあるが、装飾を施されたゆで卵は見たことがない。帽子を被(かぶ)せるとか、回しを締めさせても確かにインスタ映えしそうにない。上手にカットすれば弁当などの飾りにはなりそうだが、ゆで卵はやはり、のっぺらぼうが一番良さそう。「飾り方」でなく「飾る術」としたのも良かったし、結語(下5)の「知りません」も、ぶっきらぼうで良かった。

 

地 電飾ほど目立ちたくない注連飾り/草かんむりさん

吉崎先生  言われてみればその通りという川柳。注連(しめ)飾りは「飾り」と称するとは言え電飾とは目的が違う。注連縄はお正月に年神様をお迎えする神聖な飾りもので、派手に過ぎても神様は入りにくいだろう。夫婦(めおと)岩の注連縄ならもちろん、一般家庭でも注連縄が仮に電飾であったら、それこそ罰当たりというもの。一方、電飾は物心の付いた子どもさんを喜ばせようと点滅させるものだろう。通りすがりに眺めるのも楽しい。「目立ちたくない」と、注連飾りを擬人化したのも良かった。電飾の注連飾りはこの先もあり得ないか?

 

人 お雛様にごろ寝の場所を奪われる/アラレさん

吉崎先生 この句のお雛様は「雛飾り」の意味だから、「飾る」というお題をちゃんと消化していると言えよう。最近は、マンションでも一戸建てでも基本的には洋間が主体で、和室は一間だけというお宅が多い。従って、お父さんがいつもごろ寝しているその部屋に雛飾りを設置することになる。思いの外スペースを取られ、空いている場所にごろ寝していたら、「パパ、そんなところにごろ寝しないで!」と叱られている様子が目に見えるような川柳で楽しい。「雛飾りに」ではなく、「お雛様に奪われる」としたのも良かった。

 

<入選>

六畳の窓辺を飾る初日の出/汐海 岬さん

半世紀前の魚拓が鎮座する/西井茜雲さん

絵にすると飾ってみたくなる景色/たごまる子さん

本末が見えないほどの飾り方/春爺さん

電飾に罪悪感がなんとなく/葉ぼたんさん

思い出のページを飾るクローバー/まゆゆさん

若い日の父を飾ったパナマ帽/あそかさん

フルメイク私結構いけるかも/かぐや姫さん

すっぴんがいちばん好きといわれても/夜半亭あぶらー虫さん

着飾ってみたが寂しい片想い/風間なごみさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 今回の「飾る」は、化粧や衣装、装飾品などで自分を飾る、部屋や車の空間や物体の飾り付(つ)け、料理やデザートの食べ物の飾り、言葉や外面、内面を飾る、経歴を飾る、友だちや先輩など人物を飾る、業績や数字を飾るなど、日常生活の中での着想や発想が大いに拡(ひろ)がりそうな動詞で、川柳には打って付けのお題でした。それだけに良いところに目を付けた佳句が多く集まりました。入選句数に限りがありますので、残念ながら二次選で競り負けた句が多くありました。次回にリベンジしてください。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50


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