2019年01月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:初(はつ)

天 返事だけ褒めてもらえた初出社/汐海 岬さん

吉崎先生 この句の初出社は、新年初めての出社ということではなく、新入社員の初出社のことだろう。まず新入社員の自己紹介から始まる。進行係の先輩社員が一人一人の名前を読み上げる。そして簡単な自己紹介…。
 新入社員の能力は未知数だ。彼らの将来は、やる気と努力に掛かっている。自己紹介の上手下手には関係がないのだ。社長(たぶん)は、新入社員一人一人の、名前を呼ばれたときの、元気のある返事に頼もしさを感じたのだ。いや、感じたふりをしたのかも知れない。どっちにしても、初出社を迎えるあたたかい雰囲気が伝わってくる。

 

地 象の鼻キリンの首にある初心/比呂ちゃんさん

吉崎先生 一読すると「はて、なんのことだろう?」という作品。作者には作句の意図があるのだから、しばし立ち止まって、それを読み取る努力をしてみるのも大切なこと。
 作者は、唐突に「象の鼻」と「キリンの首」を並べてきたが、「象の鼻」は象の強力な武器であり、生活の道具です。「キリンの首」にしても然(しか)り。高い木に成っている果物をなんなく食べることができるし、遠くの状況もいち早く察知できる。
 「象の鼻」「キリンの首」は、人間が誰でも持っている得意分野、長所の比喩なんですね。初心にあったのは、その自分の長所を伸ばそう、という抱負だったはずだ。

 

人 星星星人人人の初詣で/ホッと射てさん

吉崎先生 星と人をそれぞれ三つずつ並べて、初詣での雰囲気を表現して見せた意欲的な作品。伊勢神宮とか熱田神宮、鈴鹿市では椿大神社など、大きな神社だと、除夜の鐘を聴きつつ初詣でに出かけられる人も多い。空を見上げれば満天の星、具体的に、「大勢の人」「満天の星」などと言わず、「星星星人人人」と詠んだのがユニークだった。
 日本人は大昔から初詣でに行くことを楽しみにしてきた。それゆえ、お題が「初」でなくても「初詣で」を詠んだ句は無数にある。内容的に独自性のある句を詠むことが川柳の王道だが、この句のようにレトリックに工夫を凝らすのも一興。

 

<入選>

初体験元号の無いカレンダー/ゆきちさん

初夢は亡夫とデートをしてみたい/よっちゃんさん

初夢もやはりテストにうなされる/アラレさん

拝まれる訳を知らずに出る初日/デコやんさん

初顔が毎年増えるお正月/冬子さん

町工場男二人の初仕事/スイッチさん

初めてと言うとやさしくなる現場/こまっちょさん

合格の発表待って初滑り/よしじろうさん

初舞台顔を見せない馬の足/陽気爺さん

初挑戦あの悔しさは忘れない/ 佐藤邦夫さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 新年に相応(ふさわ)しいお題でした。初夢や初詣で、初日の出など、初にまつわる句材はたくさんあります。みえDE川柳は「一人で何句まで」という制限はありません。句材をなるべく取り替え、また、視点も上下左右、異次元、動物、物体など、あらゆる角度に切り替えて詠んでみることをお奨(すす)めします。自分を解放して固定観念から脱却してみる。そうすると楽しく作句できるし、それでいて、その句の中にはちゃんと作者である貴方(あなた)が存在するでしょう。いつも言っていることですが、独創性が大切です。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50


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