2018年11月30日 (金)【みえDE川柳】 お題:色

天 鈍行に乗って初めて見える色/船岡五郎さん

吉崎先生 世の中にはさまざまな「色」があるが、この句の言う色はどんな色なのだろう?その色は特定せず読者にちょっと考えさせるところが、この句の良さかも知れない。
 私が一読して思ったのは「地方色」だ。鈍行はもっぱら、その地方で生活される人々の足として利用される。方言も飛び交う。乗り降りする人々の表情(顔色)も窺(うかが)える。窓の外の景色もじっくり鑑賞できる。「見える色」の「見える」は、「鑑賞する」「味わう」ということ。特急列車ではとても地方色は味わえない。

 

地 5ミリほど残る色気で髭を剃る/前川真さん

吉崎先生 この句のお手柄は、冒頭の「5ミリほど残る」である。なんのことかと思ったら、「色気」のこと。色気を測るのに普通「ミリ」なんて単位は使わない。「ほんのちょっぴりを「5ミリ」で表現したところがユニーク。
 5ミリというけど、髭(ひげ)の長さとは関係ない。残っているのは色気。この場合の色気とは、まだ異性を意識している色気、あるいは金儲(もう)け、ほんのちょっぴりと言っているので、定年はとっくに過ぎたけど、まだ世の中と関わっていたいという程度の色気なのかも知れない。

 

人 黄色い声出なくなってもまだフアン/たごまる子さん

吉崎先生 正確には「ファン」だが、外来語だから昔は「フアン」と言った。「フィルム」も「フイルム」と発音した。だからこのような場合、私はどちらでも可としている。文芸と学校の試験はちがうのだ。それに、この句の作者は黄色い声が出ないのだから、当然「フアン世代」なのだ。
 フアンというものはありがたいもので、負けても負けても、どこまでもフアンなのだ。この句の良いところは、導入部の「黄色い声出なくなっても」にある。歳(とし)を取っても未(いま)だに、という気持ちが上手(うま)く表現されている。

 

<入選>

秋色を引っ張っている赤トンボ/久実さん

青春の色がまぶしいユニフォーム/こまっちょさん

就活とわかってしまうモノトーン/天空ハルさん

弁当のインスタ映えを狙う色/つれづれさん

仲良く減ってほしい三色ボールペン/すずっぽちゃんさん

ハザードマップの赤にちょっぴり身構える/アラレさん

何色を足しても似合わないカラス/まゆゆさん

その上にまだ色つけてくれと言う/E子さん

マドンナはまだ色褪せぬクラス会/あけみちゃんさん

父からはカラーになっている遺影/ゆきちさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「色」というお題は、一文字二音で熟語も多い。意味においても拡(ひろ)がりがあって、作りやすいテーマでした。それだけに同想句(誰もが同じようなことを詠んでしまう)が多かったように思います。「幸せな花は自分の色で咲く」という先人の名句にあるように、自分にしか詠めない「色」を詠むことがポイントですね。これは「色」という題に限りません。やはり、どんな文芸でも独創性が大切です。三才はじめ入選句には、それぞれに個性が読みとれました。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50


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