2017年07月28日 (金)【みえDE川柳】 お題:星

天 仲直り星がきれいに見える夜/にゃごしさん

吉崎先生 夜空の星は客観的には美しいものである。しかし、それは星を見る人の、そのときの気分にも大きく左右される。作者も、たとえ満天の星が煌(きら)めいていようと、それを美しいとも感じられない事情があったのだろう。作者は今夜、ようやく親しい人との誤解が解けて仲直りできたのだろう。ひときわ奇麗に見える今夜の星たちである。
かっこいい言葉も技巧も用いず、ただ事実を素直に詠んだだけで成功した秀句。

 

地 星空へキリンは首を持て余す/てんじょうさん

吉崎先生 一読「はてな?」と思わせる句。しかし言いたいことは解(わか)る。人間であれば星空は近くから観(み)るほど美しい。少しでも高い所から眺めるほうが良いに決まっている。その点、キリンは首が長い、つまり顔が高い位置にあるので星空を満喫するには有利である。しかし、当事者であるキリンにとっては、満点の星にさしたる意味はなく、ただ煩わしいだけだろう、とキリンの身になって詠んだ句。「持て余す」が巧(うま)い。

 

人 火星から新婚さんが越してきた/山路橙葉さん

吉崎先生 最近の若い人の言動の不可解さ故に、「宇宙人」と形容することがあるが、この句は「火星人」と表現している。それも、ただの火星人ではなく、新婚さんである。隣に引っ越してきた火星人に、地球の先輩としていろいろ教えてあげたいが、なかなか話の噛()み合わないじれったさがある。そんな新婚さんを指して「火星から越してきた」と皮肉を言っているが、「新婚さん」が効いていて悪気は感じられない好句。

 

<入選>

この星で生きよう旨いもの食べて/比呂ちゃんさん

新星が現れゲームから将棋/わらび餅さん

万華鏡覗くひとりの星祭り/スターダストさん

白内障癒えて楽しむ空の星/よもやま話さん

座布団が舞う金星のインタビュー/颯爽さん

給料のわりに希望の星とされ/福村まことさん

流れ星一緒に落ちる願い事/あーさままさん

まな板にオクラ空には天の川/水たまりさん

星ばかり見て気づかない水たまり/汐海岬さん

ひっそりと星を孕んだ真珠貝/アラレさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「星」という身近なものがお題だったので、400句を超える句が投句されて来た。
意欲は嬉しいのだが、佳い句と良くない句の差が顕著であった。上手な人は視点を変えた句を、それぞれよく推敲(すいこう)されて投句されている。一方、同じような句を、あまり推敲されず、一部の言葉だけ変えて出されている人が多かった。たった17音だが、決して「数打てば当たる」というものではない。どんな「お題」であっても、「自分にしか作れない句」を目指して作句してほしい。それが「創作」というものであろう。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50


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