2023年2月24日

【みえDE川柳】 お題:忍者

天   人参がどうも苦手という忍者/ゆきち さん

橋倉久美子先生 思わず笑った。忍者とて人の子、苦手なものもあるだろうが、よりにもよって人参(にんじん)が苦手だとは。クールでスマートなイメージの忍者が、これではまるで子どもではないか。
  「どうも苦手」という言葉選びも秀逸で、黒頭巾の忍者が人参(にんじん)の入った料理を前に、「これだけはどうも……」と頭を掻いている様子が目に浮かぶ。「ニンジン」という響きも、忍者が口にする(?)「ニンニン」というセリフを思い起こさせて楽しい。ナンセンスユーモアを感じさせる句。

 

地 イケメンの忍者がそろう武家屋敷/よっちゃん さん

橋倉久美子先生 この忍者は、観光地の忍者屋敷で忍術を披露したり、マスコミ相手に広報活動を行ったりするのが仕事。当然ながら身体能力が高く、身だしなみにも気を配っている。派手な衣装とアクロバティックな演技で客を魅了し、拍手と歓声を浴びる存在である。
 忍者というと、表に出ない陰の仕事と思われがちだが、そもそも高い身体能力や特殊な技能・知識を必要とする仕事でもある。現代の忍者は、そのプラス面を押し出すことで、人気を得ているのだ。

 

人 百態を演じひっそり逝く忍者/あそか さん

橋倉久美子先生 忍者にもいろいろな仕事や勤め方があると思うが、この句の忍者は、ある時は職人に、ある時は店主になどと様々な顔を使い分けながら務めを果たしていたのだろうか。おそらく知人や縁者は少なくないのだろう。ところがその素顔を知る人はほとんどおらず、ひっそりと死んでいったというのである。
 「百態を演じ」と「ひっそり逝く」の落差のつけ方がうまく、一人の忍者の生涯を思わせるドラマチックな句になった。

 

<入選>

電車まで忍者にさせる伊賀の国/ぬいぐるみ班代表まきば さん

世界中マスクだらけにした忍者/ごん太 さん

忍者すら忍び込まないゴミ屋敷/みく さん

経年で忍者屋敷も手すり付き/春爺 さん

忍者とて文化遺産で残る道/夜半亭あぶらー虫 さん

うかつには言えぬ間者の孫がいる/アカエタカ さん

かくれんぼ忍びの術が役に立つ/こまっぴ さん

病室の寝息忍者が見て回る/トラス さん

週刊誌忍者たくさん飼っている/横山閲治郎 さん

ジェンダーレスくノ一なんて呼ばせない/田舎のマダム さん

 

橋倉久美子先生 橋倉久美子 先生

「忍者」という題は難しいかと思っていたのですが、442句ものご投句をいただきました。
入選句はもちろん、投句されたほとんどが、「現代の忍者」を詠んだ句でした。「忍者」はどちらかというと過去のもので、身近とはいえない存在なのに、きちんと自分の近くに引き寄せ「今」を詠んだ句となっていることは、たいへんよかったと思います。
一方、リズムの悪い句、駄洒落(だじゃれ)を使った句の他、「忍者」という題がないと何が言いたいかわかりにくい句も少なからずありました。特に具体的なものを表す名詞が題の場合、題の言葉を使って句を作る方が、伝わりやすい句になります。

 

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


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