【みえDE川柳】 お題:拾う
周波数君に合わせて拾う声/ごん太さん
騒がしい中でも、恋心を抱く相手の声を聞きたいと懸命に耳をそばだてる。
なんとしても君の声をキャッチしたい。なんとも微笑ましく楽しい句である。
君の声だけに集中する様子を周波数を合わすと表現したところが、きわめて素晴らしい。
そして、きっちりと周波数が合い、目標の声が聞こえてくるさまを「拾う声」と
したところが、さらに素晴らしい。「拾う」の題にピッタリである。
あっさりとメッキが剥げた拾い読み/ジャック天野さん
しっかりと熟読をして得た知識は簡単にメッキが剥げることはないが、
拾い読みで得たものは、あっさりと剝がされてしまう。同様にスマホなどで、
簡単に得たにわか知識は表面的なもので、少し突っ込まれると答えに窮する。
やはり、経験やたゆまぬ努力によって得た知識や技術は本物の輝きを放っている。
眠れない鍵を拾ったばっかりに/カラリさん
素直にこの句の解釈をすれば、鍵の落とし主は、きっと家にも入れず、
あるいは車のドアも開けることもできず、困っているだろうと思うと気の毒で
なかなか寝付けないということになるだろう。
しかし、それではあまり川柳として面白いとは言い難い。少々理屈っぽい解釈になるが、「鍵」を「何かの問題解決のためのヒント」と解釈すればどうだろう。
それも「拾った」というのだから、自分の努力ではなく、人から与えられたのかもしれぬ。
有難いような、悔しいような複雑な思いが、頭をめぐる。
或いは、「鍵」を「重要な役目」と置き換えれば、さらに面白いストーリーを
想像してしまう。
<入選>
孫たちと拾い集める秋の色/みほりんさん
女子会で噂拾って不眠症/久実さん
趣味の会そっと孤独を拾い上げ/水谷裕子さん
七転び八起きその度拾う傷/化石さん
山ほどのエールを拾う負け試合/汐海 岬さん
幸せを分かち合うため拾う猫/八木五十八さん
掛け声でベンチを目指す球拾い/夜半亭あぶらー虫さん
幸運を拾う四つ葉のクローバー/こまっぴさん
目に見えぬ努力を拾う師の温み/福村まことさん
動物園命拾われ牙捨てる/奥田よしさん
丹川修先生
「拾う神…」「球拾い」「拾い読み」「ゴミ拾い」などを題材にした句が
多く寄せられました。
いつものことながら、その中でも、意外性、独自性が強く感じられるもの
(同想にならないもの)を入選とさせていただきました。
また、中には「拾う」をやや強引に使用した句や「拾う」の反対語である、
「捨てる」を使った句もありましたが、少し、無理があるように思いました。
できる限り多くの方に入選を果たしていただけることを願っております。
多数ご投句いただきありがとうございました。