鍵は家族の絆!"特別防犯対策監"杉良太郎さんが語る
俳優の杉良太郎さん、杉さんの妻で演歌歌手の伍代夏子さん、それにEXILEの松本利夫さん。実は3人は、全国各地で特殊詐欺の被害防止の啓発活動を行っています。
NHK津放送局では3人が三重県警察本部を訪れた際に単独インタビュー。杉さんによると被害を防ぐ鍵は“家族の絆”にあるといいますが…。インタビューのほぼ全文を公開します。
(聞き手:津放送局 周防則志 記者)
被害を防ぐポイントは3つ!
記者)
特殊詐欺の被害を防ぐポイントはどこにありますか?
松本さん)
特殊詐欺にはいろいろありますが、全てにおいて「お金の話が出たらまずは疑え」というのが1つポイントだと思います。オレオレ詐欺、還付金詐欺、クレジットカードの暗証番号を聞かれたりもそうです。お金の話が出た時点でまず疑うこと、そのあとに人に相談をするのがポイントです。
杉さん)
声に出す(会話をする)ことです。年をとると、なかなかしゃべりなれない。家族としゃべる機会もない。朝から誰ともしゃべっていないと隙をつかれる可能性がある。話し相手になって喜んでしまう可能性もある。みんなと話す、怖がらないで声に出していくことでしょうね。
伍代さん)
「絶対に私は大丈夫です」とみんなおっしゃるんですよ。「誰と話をしたって大丈夫、だまされないから。息子の声ぐらいわかるし」っておっしゃるんですけど、それでも被害が後を絶たない。
だから、犯人と思われる人や知らない人と話さないことが1番です。電話に出ないのは、本当に皆さん勇気がいるみたいなんですね。ずっと電話が鳴っているのに出ないのはもしかして知っている人かも、急用かもと思って、ドキドキするみたいなんですね。でも犯人の巧みな話術に絶対にひっかかってしまうので、知らない人からの電話は切る。もしくは留守電にするとかをおすすめします。
詐欺電話かかってきた経験ありの人も多い?
記者)
活動には多くの芸能人の皆さんが携わっていますね。
杉さん)
芸能界の中の有志が集まって、皆さんの力を借りると発信力も違いますので、説得力を持ってやっていくためには、こういった社会活動に対して相当理解していただいている事務所とかご本人にお願いをして、一致協力しながらやっています。
アイドルの方は、若い人たち、子どもたちのところにメッセージを送って、「お父さんお母さんおじいちゃんおばあちゃんに、家に帰ったらこう言ってね」と言ったり、年配の我々は、老人ホームや高齢者のところへ行ってお願いをしたりしています。
警察だけではなかなか届きにくいことも多いですから、防犯協会とか町内会長さんとか、地域の人の力を得てやっています。成功している地域ではやはり話し合いがある。みんながいろんなことを言い合う。それが犯罪阻止につながっているかなと。
記者)
これまでの活動の中で印象に残っていることはなんでしょうか?
伍代さん)
(啓発イベントに)お集まりいただく皆さんは高齢の方が多いんですけれども、そこで必ず聞くんです。「詐欺の電話がかかってきたことありますか?」って。そうすると結構手が上がるんです。びっくりして「だまされたんですか?」と聞くと、だまされちゃった人もたまにその会場の中で1人いるかいないかの割合いる。
中には「相手と会話をしている。6時くらいにかかってくるんだよ毎日」と言って、楽しみに待っちゃっている男性が1人いたんですよ。「ダメですよそんなの。それを誰かに言いましたか?」と聞くと、「今初めて言いました。警察にも言っていません、家族にも言っていません、誰にも言っていません。だけど、向こうがだまそうと一生懸命になっているところが面白い」って言う人もいたんです。それがものすごく印象的だったんです。
「ご近所にも知らせた方がいいです。そうやって言ってくださいね。気をつけましょうね、地域でみんなが注意しましょうね」って言ってその時は終わったんですけど、やはり電話はかなり無作為にあちこちにかけているんだなと、これだけたくさんの人が電話を受けたことがあるんだなと思って。
新型コロナウイルスの影響も…
記者)
コロナ禍で啓発活動の制限もあったと思います。
松本)
やはりこうやって現場に来て自分たちのメッセージを直接伝える場がなかなかなかったですね。コロナが少しでも収束して、自分たちもメッセージを強く伝えていくことが1番の望みです。この先もまだコロナがどうなるか分からないですが、詐欺自体は多発している中で、少しでも1人でも救われるよう、今後も頑張っていきたいです。
記者)
新型コロナの影響は被害に遭う側にも何かありますでしょうか。
伍代さん)
「おうち時間」が多くて、電話に出てしまうんですよね。それで丸めこまれてしまう。お家にいる時間が長い方への対策は、とにかく留守番電話とか警告が流れる電話に変えていただくか、犯人と話さないでいただきたいなと思います。
“家族の絆”が薄れる中で
周防)
そこで“家族の絆”が大切になるという活動をされていますよね。
杉さん)
私がこの職に就く時の話し合いの中心になったのが「家族の絆」なんです。家族団らん、家族が集まって食事をしたり、話をしたりする機会がなくなってきているんじゃないかと。
「家族の絆」が希薄になってきている、そして高齢者が増えておひとり住まいも増えてきた。そこにつけ込んだのが特殊詐欺です。お年寄りは1人で自分を守れないという、計算されつくした犯罪じゃないかなと思っています。
記者)
家族の間では、日ごろどんなことを気をつけていればいいのでしょうか?
松本さん)
日ごろからコミュニケーションを取ることです。先ほど杉さんもおっしゃっていましたが、声に出して会話する。ほかにも電話するとか、今ではメールやLINEなどあるので、とにかく連絡を取り合うという環境作りがとても大切です。
若い人も両親から相談されやすい雰囲気、環境作りをする。コミュニケーションをとることで、詐欺のグループに犯罪を起こしづらい状況をこちらで作っておくのが大切なんじゃないかなと。日ごろから心構えを持っておくことです。
犯人をあらゆる点で追い詰める!
記者)
特殊詐欺の加害者に対して言いたいことはありますか。
杉さん)
警察庁でも、あらゆる点で追い詰めようと、とにかくてっぺんを取りに行くということで、壊滅作戦を今やっているところです。
突っ込んで言えば、詐欺罪というのはちょっと軽いと僕は思っているんです。軽いから安易にやってしまうとか、適当にやればこれだけの利益になるとか、アルバイト料の何十倍、何百倍ともらえるみたいな、そういったことはもう許さない。安易にこういったところに手を染めちゃいけない。
記者)
これほど情熱をもって進めている杉さんの活動の原動力はどこにあるんでしょうか?
杉さん)
わからないです。質問されると昔は「お母さんの影響がありました」とかなんかいろんなことを言ってたんですけど、近頃はわからないですね。ただやってるんですよ。一生懸命やるとかいろいろ考えてないんです。
まぁそういった性格なんじゃないですかね。今の仕事、9割は法務省と厚生労働省と警察庁です。ちょっと前までは外務省があった。今ほとんど、芸能界は離れているかな。
“家族の支え合い”“電話でお金の話は不自然”
記者)
今後はさらにどのような活動をしていこうと考えていますか?
杉さん)
根本的にやらなきゃいけないのは、家族の支えあいがないと、思いやりがないと防げないということ。人の弱いところ、寂しいとかそういった隙間を狙ってくるのは、非常に悪質だと思っているので、電話、それからご本人たちの「家族の絆」です。
また金融機関などで、できたら暗証番号だけではなく、顔認証とか指紋認証を加えて欲しいなと思っているんです。なかなか一足飛びにはできませんが。
今、各県の警察からいろいろな要請があります。地域によって文化や習慣が違いますので、土地に根付いたようなところをまたさらに頑張っていきたいなと思います。
記者)
最後に県民の皆さんにメッセージをお願いします。
松本さん)
やはり家族間のコミュニケーション、連絡が取れる状況を常に心がけることが、本当に詐欺を撃退するのには一番いいのかなと思っています。日ごろから、家族間で合言葉なども決めながらコミュニケーションをとっておく。そして常に1人1人が自覚をもっておけば詐欺にあわないんじゃないかと思いますので、「家族の絆」を心がけていただきたいなと思います。
伍代さん)
とにかく知らない人に現金を渡さない、キャッシュカードも渡さない、そしてATMにもいかない、これを心がけていただきたいと思います。
杉さん)
本当にこれだけ覚えておいて欲しいのは、「電話でお金の話が出るのは絶対不自然」ということです。
「俺だ俺だ!」と言われても、「俺って誰?」って一言聞いてほしいなとは思いますね。「俺だ俺だ!」と言われて、自分の方から「なになにちゃん?」って子どもの名前を言っちゃったりなんかするのは特に良くないですから。それだけ気をつけるだけでも全然変わるんですよね。
「知らない人からの電話は詐欺ですよ、お金の話が出たら詐欺ですよ」というステッカーが貼ってあるのにだまされちゃうこともある。最初は詐欺かな、と思うけれど、「多分詐欺じゃないかな」と思ってだまされていくっていうケースもあるので、お金の話が出たら切ってください、そして電話があったということを警察に連絡してください。
周防則志 2020年入局
“地域の課題を解決する”報道を目指している