立山信仰の世界

-立山信仰の世界-
2017年10月4日放送

富士山、白山と並ぶ 日本三霊山として古くから信仰を集めてきた立山。 先月、その立山信仰を体現する行事、布橋灌頂会が3年振りに行われました。 立山はなぜ霊山として信仰を集めてきたのか、 布橋灌頂会の儀式の様子や(ぬのばしかんじょうえ) 布橋のそばに安置されている閻魔さまの像を通して、 人々の立山への熱い思いを見つめます。

布橋潅頂会 白装束に身をつつみ目隠しをした女性たち

布橋潅頂会

白装束に身をつつみ目隠しをした女性たち。 この世とあの世の境界にかかるとされる橋を渡ります。 3年に一度行われる『布橋潅頂会』です。 海外も含め全国各地からおよそ100人の女性が参加しました。

立山町芦峅寺 布橋
立山地獄谷

布橋と霊山立山

かつて霊山立山への入り口として多くのお堂が建ち並んでいた立山町芦峅寺(たてやままちあしくらじ)。 ここにかかる布橋から先は、あの世である死者の世界とされました。

 

立山博物館学芸員 
加藤基樹さん
立山博物館学芸員
加藤基樹さん

「山はそのものが死者の世界であって、生きている人たちが行くところではないと。特に立山はそんな山の中に地獄谷があって、まさに地獄 そのものと考えられた。死者の世界に生きながらに行くことが、ものすごくパワースポットと考えられるようになって、そこが格好の修行の場所になっていくというのが、立山信仰の始まりです。」
立山曼荼羅

立山曼荼羅

江戸時代には、人は自分が犯した罪のために、死後、地獄に落ちると信じられていました。 そのため、つらい思いをして立山に登ることにより、罪が許されるという立山信仰が盛んになりました。 ただ、当時の立山は女人禁制とされ、女性は山に入ることができませんでした。

 

美女平 美女杉 かむろ杉

加藤基樹さん
「立山の山の神様が女性の神様であるということで女性が立山に登ると山の神様が怒ると言われました。ただ伝説があって、3人の女性が鏡を山の神に奉納する目的でだめだと言われている山に分け入っていったときに、 真っ先に美しい女性は標高1000m付近の美女平で美女杉に変えられる。小さな女の子もいたのですが、おかっぱの形のスギの木、かむろ杉に変えられた。」

標高2000m付近のうば石
「おばあさんは標高2000m付近まで上がれるのですが、 そこで石に変えられてうば石に変えられた。そういった女性たちに用意されたのが、布橋灌頂会だった。あの世の入り口まで入り、一度死んで生まれ清まってくることを経験することで、男性が山の中で修行するのと同じ効果が得られると信じられたと言われています。」
閻魔堂

閻魔堂

布橋灌頂会の際に女性たちがまず、自分自身の罪に向き合い汚れをはらう儀式を受ける閻魔堂です。堂内には、立山信仰の歴史を物語る大切な像が安置されています。

閻魔王の像

鋭い視線でグッとにらみつけてくるのは、 あの世で死者を裁くと信じられた閻魔王です。 閻魔五尊と言われる形式で作られたと考えられています。 閻魔王の像が立山のふもとに安置されたのには重要な理由があります。

立山は京都の都から見て鬼門の方角 北東の方角

加藤基樹さん
「立山信仰というものは、一番早く見えるのが平安時代と言って今から1000年前ですけど、その1000年前に京都のみやこの人々にいち早く知られる霊山がこの立山だった。京都の都から見て鬼門の方角、北東の方角。都を守護する重要な霊山として位置づけられていたんだろう。立山には地獄谷があって、それがまさに日本列島の中での地獄なんだと考えられた時代にこちらの閻魔王像も国家鎮護という国を守るという意識の中で整備されたのではと考えています。」

全国各地からの寄進により建てられた石仏や石塔

石仏や石塔

閻魔堂の周りには、全国各地からの寄進により建てられた石仏や石塔が数多く並んでいます。立山まではとても行けないけれど地獄に落ちないよう少しでも罪を軽くしてほしいという人々の切実な思いが1体1体に込められているようです。

加藤基樹さん
「京都のみやこの人たちにとっても、この立山というのはすごく重要な場所だった。『日本国の人罪を作りて多くこの立山の地獄に落つと言えり』 と言う風に言われるくらい罪を犯すとこの立山の地獄に落ちると考えられていたところです。そういう場所に都を守護するという意味でこの閻魔さまが安置された。この集落にとっても富山県にとっても日本にとっても非常に貴重なものと言えるかと思います。」

多くの女性たちを救った布橋灌頂会
閻魔さまが安置された閻魔堂
立山への人々の思いの詰まった像の数々

立山に入ることができなかった多くの女性たちを救った布橋灌頂会。そして立山への人々の思いの詰まった像の数々。立山信仰の歴史を今に伝える富山の宝です。

-リポート NHK富山 牧野 雅光-

インフォメーション

布橋灌頂会は、次回も3年後に開催される予定です。閻魔さまの像が安置されている閻魔堂は地元の人たちが管理しており、日中は開いていて、自由に参拝することが出来ます。

【問い合わせ先】
●立山博物館
富山県中新川郡立山町芦峅寺93-1
TEL(076)481-1216

※NHKサイトを離れます

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