人間国宝 大澤光民 おおざわこうみん

-人間国宝・大澤光民-
2017年8月9日放送

今回紹介するのは、高岡市在住の人間国宝・大澤光民さんです。(おおざわ・こうみん)大澤さんは、15歳で鋳物の道に入って以来60年間、見る人に喜んでもらえる鋳物を目指して、ひたすら努力を重ねてきました。この夏、9月の展覧会に向けて夏の暑さと戦いながら新たな作品作りに取り組む75歳の大澤さんの姿を追いました。

大澤光民 おおざわこうみん その鋳物作品と革新的な技法
大澤光民 おおざわこうみん その鋳物作品と革新的な技法

漆黒の表面に赤や銀色の線や点が浮かびます。長い歴史を持つ鋳物の世界で新たに考え出された革新的な技法です。

 

大澤光民 おおざわこうみん 富山県内に住むただ1人の人間国宝

この鋳物を作った 大澤光民さん。高岡伝統の鋳造技法を継承し、独自の新たな技法を生み出したことが評価され、平成17年に国の重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定されました。富山県内に住むただ1人の人間国宝です。

大澤光民さん

「結果が出て答えが出てきますから。いい仕事に出会えたのかなとやってもやっても飽きないというか、時間が足りなくて。」

 

高岡市下伏間江

高岡市下伏間江。(しもふすまえ) 田んぼが広がるこの場所で 大澤さんは 農家の長男として生まれました。

1歳のころ 大澤光民 おおざわこうみん

中学卒業後、高校に進もうと受験しますが、合格することができませんでした。

大澤光民 おおざわこうみん インタビュー

大澤光民さん

「僕は合格できんでもショックじゃなかった。 これで勉強せんでもいいわというくらいで。」

その後、農繁期に農作業をてつだえるならと鋳物工場に就職。職人として働くうちに鋳物のおもしろさに目覚め、27歳で独立。生まれ育った自宅の隣に工房を構えます。

大澤光民 おおざわこうみん 昭和44年の鋳物作品

仕事のかたわら当時できたばかりの技術者養成スクールにも通い、新たな考え方に触れ、多くの刺激を受けました。

独立した頃の大澤光民 おおざわこうみん

大澤光民さん

「自分でものを作って展覧会とか新しい発想で時代に合ったものを作っていかなんだら、時代遅れになっていくから、絶対これから勉強せえて、仕事腕に入っとるんだから、創作性、造形デザインの勉強をして、展覧会に嫌と言うほど出せて。高岡の市展に初めて出して、それがいきなり奨励賞とかあたって、そうしたらものすごいうれしいやろ、ドキドキしてうれしくて、ものを作る感動って何ちゅうかすごいと思って。」

その後大澤さんは、 伝統的な花器から現代工芸まで技術的に難しい仕事にもどんどんチャレンジします。さまざまな展覧会にも出品し、数多くの賞を受賞します。

大澤光民 おおざわこうみん 二重透かし鳳凰文花瓶 鋳物作品
 流動 鋳物作品

新たな作品作り

新たな作品作りに挑む大澤光民 おおざわこうみん

大澤さんは75歳のこの夏、 9月の展覧会に向けて夏の暑さと戦いながら新たな作品作りに挑みました。作品のイメージが固まると、まず設計図を描きます。

定規を使いミリ単位まで測って細密に描く設計図

定規を使いミリ単位まで測って細密に描くため、設計図を仕上げるだけでも、3日ほどかかると言います。

土で作った鋳型に銅やステンレスの線をくぎで慎重に固定する

作品のテーマは、火と水です。設計図を元にして、土で作った鋳型に銅やステンレスの線をくぎで慎重に固定します。これは大澤さんが編み出したこれまでにない全く新しい技法です。

この技法、ある失敗から生まれたと言います。鋳型を固定する際に使う『こうがい』という鉄の棒を抜き忘れたため、銅合金の鋳物の表面に鉄の色がついてしまったのです。

大澤光民 おおざわこうみん インタビュー 鋳ぐるみ法について

大澤光民さん

「仕上げて着色したときにあっちこっちに変な傷みたいなものがあるよと言われて行ったら、こうがいの抜き忘れで、逆にこんなが利用して何か作れんかなて。」

鋳ぐるみ法が施された鋳型

その後、試行錯誤を重ねて銅合金の表面に、ほかの金属で文様を付ける大澤さん独自の新たな技法「鋳ぐるみ法」を(いぐるみ)編み出しました。

炉の中で鋳型を焼く

炉の中で鋳型を焼きます。鋳型の材料となる土の配合や焼き上げるときの温度調整が難しく、熟練の技術を必要とする伝統の技です。 炉の温度はおよそ900度。あまりの暑さに呼吸が苦しくなります。

溶けた金属を鋳型に流し込むタイミングを測る大澤光民 おおざわこうみん

休憩を取り、体力を回復する間も、溶けた金属を鋳型に流し込むタイミングを測ります。

10時間以上かけて焼いた鋳型に溶けた金属を流し込む作業

朝5時から10時間以上かけて焼いた鋳型に、ドロドロに溶けた金属を流し込みます。作品を作る際に、最も集中して神経を使う瞬間です。

大澤光民 おおざわこうみん インタビュー 作業中の熱さについて

大澤光民さん

「あーひどい。本当に大変や。こないだからずっと、朝3時4時まで ずっとやってるから。」

金属が冷えて十分に固まったところで鋳型を壊す

翌朝、金属が冷えて十分に固まったところで鋳型を壊します。イメージ通り出来ているかどうか緊張の中、鋳物が取り出されます。

大澤光民さん

「今のところは、よかった。」

鋳ぐるみ鋳銅花器 火と水と

『火と水と』

2週間近くの仕上げ作業を経て新たな作品が生み出されました。

金属の線はところどころ溶けたり動いたり 鋳ぐるみ独特の有機的な味わい

鋳型に仕込んだ金属の線はところどころ溶けたり動いたりして、 鋳ぐるみ独特の有機的な味わいを醸し出しています。

大澤光民さん

「大変やったけど仕上がったら、そういう疲れも吹っ飛ぶと言いますか、またやっぱり何か作りたいみたいなそういった感動の繰り返しが、 どんどん奥深いものをこれと違ったものをまた目標を持って、次どういうもの作ろうかなとか進化していくんで。今後もこういう気持ちを忘れずに命のあるかぎり頑張りたいなと思っています。」

見る人に喜んでもらえる鋳物を求めて挑戦しつづける人間国宝・大澤光民さん

見る人に喜んでもらえる鋳物を求めて挑戦しつづける人間国宝・大澤光民さん。富山の誇る日本の宝です。

~取材後記~

大澤さんにお会いする前はとても厳格な方なのではと勝手に思いこんでいて、ものすごく緊張してご自宅にお邪魔したのですが、実際にお会いしてみると、笑顔が爽やかなとても気さくな方で、私の質問にも一つ一つ丁寧に答えて下さいました。

まずはどういうものを作り作品で何を表現するのか考え、それを形にしていきます。1つの作品を生み出すのに、およそ半年ほどかかるそうです。そして映像にもありました、鋳型を焼いて溶けた金属を流し込む作業、大澤さんが肉体的にも精神的にも自分の限界と戦っている様子を見て心が揺さぶられる思いでした。

大澤さんが若いころから大切にしていることを教えていただいたのですが、「人に話を聞くときに大事なことは、真剣に分かるまで聞く、そして聞いたことはすぐ実行する」ということでした。 そのことばを聞いてはっとしたのですが、私自身人の話しを聞くときに 何となく分かったつもりで終わっていることが多いことに気付かされました。「真剣に分かるまで聞く、そして聞いたことはすぐ実行する」このことばを胸に刻んで私もよりよい仕事ができるようこれからも頑張っていきたいと思いました。

-リポート NHK富山 牧野 雅光-

※NHKサイトを離れます

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