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富山でクマ出没相次ぎ死者も もし出会ったらどうする?

クマの被害に遭わないために、注意すべきポイントをまとめました。
  • 2023年10月25日

富山県内で、クマの出没が相次いでいます。
今年に入って、5人がクマに襲われました。
10月17日には、富山市内の住宅の敷地内で、高齢の女性が死亡しました。

なぜクマの出没が増えている?
いつ、どこに出没しやすい?
クマの被害を防ぐには?
もしも出会ってしまったら?

現場や専門家を取材しました。
(2023年10月25日 発生状況など更新) 
(富山放送局 記者 杉山加奈・山口雅史)

家の庭でクマに襲われた?高齢の女性が死亡

10月17日、富山市江本の住宅の敷地内で、この家に住む79歳の女性が、頭や顔から血を流して倒れているのが見つかり、死亡しました。

死因は、首を引っかかれたことによる出血性ショックとみられています。

敷地内にクマの足跡があったことから、警察はクマに襲われたとみて調べています。

女性がクマに襲われたとみられる住宅敷地(富山市江本)
近くの小学校隣の畑では、クマの足跡が確認された
現場には多くの柿の実がなっていた

県によりますと、今年のクマによる人への被害は5人に上ります(10月24日時点)。

死者が出たケースは、平成18年以来だということです。

クマに襲われて4人がけが

このほかにも、人への被害が相次いでいます。

10月23日午後3時前、富山市安養寺の住宅の敷地内の納屋で、この家を訪れていた72歳の男性がクマに襲われて、頭や足などに大けがをしました。クマは納屋に潜んでいたとみられています。

クマが男性を襲った住宅(富山市安養寺)

また、10月9日午前6時半ごろ、富山空港に近い富山市栗山の住宅の庭にクマ1頭が現れ、この家に住む79歳の女性が顔をひっかかれるなどして大けがをしました。

クマが女性を襲った現場周辺(富山市栗山)
クマが襲った住宅の庭
近くに
住む
60代男性

女性が家の庭で倒れていて、担架で運ばれる時に顔にけがをしているのを見た。近くでこのようなことが起きて怖い。小学校に通う孫たちを車で送迎するなど気をつけたい。

今年8月には、午前6時ごろ富山市にある北アルプスの薬師岳の折立登山口で、県外から登山に訪れていた30代男性が食事をしていたところ、背後からクマに襲われました。
男性は腰からでん部を引っかかれて、軽いけがをしました。

また9月には、午前11時過ぎ、富山市の山あいを流れる神通川で、70代男性があゆ釣りをしていたところ、クマに左ひじをかまれたり肩をひっかかれたりして、全治1か月の大けがをしました。

なぜクマの出没が相次いでいるのか

県によりますと、ことしは県内全域でクマのエサとなるブナの実などが不作になっています。

そのため、冬眠を前にしたこの時期は、クマが食べ物を求めて1年の間で最も活発に活動するため、平野部でクマの出没が増えているということです。

クマ出没情報地図「クマっぷ」

県は、クマが出没した場所を地図上に示した「クマっぷ」をホームページで公開し、注意を呼びかけています。

クマ出没情報地図「クマっぷ」(10月25日時点)

この地図によると、出没件数は今年1月~10月25日で376件去年1年間の221件をすでに上回っています。

特に10月は25日までで191件と、去年10月の1か月間に報告された22件の8.6倍余りに急増しています。

赤いピンが、クマが出没した場所を示しています。
山あいの地域だけではなく、平野部にも出没していることが分かります。

10月17日、女性が死亡した現場の周辺です。
田んぼが広がる平野部にあり、住宅が点在する地域です。
山あいから2キロほど離れていて、近くには熊野川が流れています。周辺には小学校や中学校などもあります。

10月に入ってからは、ブナが凶作となっている県東部を中心に、平野部での出没が相次いでいます。
特に富山市を流れる熊野川や常願寺川など川沿いでの出没が多くなっているということです。

クマの被害を防ぐには?

クマの生態に詳しい「県自然博物園ねいの里」の間宮寿賴さんと赤座久明さんに注意点を聞きました。

「県自然博物園ねいの里」野生鳥獣対策推進員 間宮寿賴さん

クマが活動する朝と夕方に特に注意

【県自然博物園「ねいの里」野生鳥獣対策推進員 間宮寿賴さん】
クマは薄暗い時間帯に活動することが多く、朝方に明るくなるまで平野部で柿などを食べている。その後、明るくなるとやぶに一時的に身を潜める。その際、早朝に人が偶発的に出会って襲われる事例もあるため、朝と夕方は特に注意が必要だ

日中も被害発生 鈴やラジオで対策を

さらに10月には、日中でもクマに襲われる被害が発生しました。専門家は、朝と夕方だけではなく、日中も注意が必要だと指摘しています。

【県自然博物園「ねいの里」・野生鳥獣共生管理員 赤座久明さん】
クマは本来、奥山にいるときは日中に活動していますが、人里に下りてくると人を避けるため、昼はじっと潜んで夜に活動するというように、生活リズムをシフトさせる。日中、どこかにクマが潜んでいるかもしれない。そのクマと鉢合わせした場合に、攻撃される状況になりうる。

県は、日中も自分の存在を知らせるために、鈴やラジオで音を出すなど対策を呼びかけています。

果樹の実、やぶや草むらを取り除く

【県自然博物園「ねいの里」野生鳥獣対策推進員 間宮寿賴さん】
クマを引き寄せる柿の実などは早めに除去することが重要。柿の木がなければ、クマの滞在時間も短くなる。またクマが身を潜めるやぶや草むらを刈り払いリスクを下げることも大切だ。富山市の庵谷地区など、地域ぐるみで柿の木を伐採することでクマの出没が少なくなり、成果を上げている地域もある。

県は、カキなどの果樹の伐採に一部補助を出しています。

12月上旬まで外出注意 戸締まりも

クマは冬眠を前に、食べ物を求めて活動が活発になります。
そのため12月上旬ぐらいまで外出時は注意するほか、クマの侵入を防ぐため住宅や倉庫などの戸締まりの徹底が必要だということです。

もしクマと遭遇したら?

それでも、もし、クマと遭遇してしまった場合はどうしたらいいのでしょうか。

立山の野生動物の専門家で、クマの対処法に詳しい「立山カルデラ砂防博物館」の学芸員、白石俊明さんに聞きました。

「立山カルデラ砂防博物館」白石俊明さん

まずクマに出会ってしまった場合の対処法を聞きました

まず興奮させてはいけない 素早く物陰に隠れてクマを落ち着かせる
▼物陰に隠れることでクマが突進してきた場合にも盾になる
背を向けて逃げるとクマの追いかける習性を引き出す可能性があるので、クマをしっかりと見ながら後ずさりして、その場を離れる

襲われたら即座に“防御姿勢”を!

それでもクマに襲われてしまったら、すぐに致命傷を防ぐ姿勢を取る必要があるということです。

首ガードうつぶせ法

それがこちらの「首ガードうつぶせ法」です。
これはクマの専門家の間で広く普及している防御法で、組んだ手で首の後ろをしっかりと覆い、そのまま地面に顔と胴体をくっつけることで、クマの牙や爪による致命傷を防げる可能性が高まるということです。

白石さんは「手や腕がかまれそうと思うかもしれないが、クマの一撃があたると致命傷になる顔や首、胴体を優先的に守る方法だ」と話します。

またクマが人を襲うのは、自分が逃げるために相手をひるませるためで、この姿勢で動かないでいるとクマの攻撃が短時間で終わることにもつながるということです。

帽子やヘルメット、リュックがあるとより広い範囲が守られる

また、帽子やリュックサックを身につけておくと、より防御の効果が高いということです。

【白石俊明さん】
クマは背後や物陰などから突然襲ってくることもあるので「襲われた」と思ったら、すぐにこの姿勢を取れるよう、日頃から練習しておく必要があります。
いま、県内はどこでもクマに襲われておかしくない状況なので、外出時には荷物が少なくてもリュックサックを持つほか、日差しが強くなくても帽子をかぶるなどしておくと、熊に襲われた時の被害を最小限に抑えることができます。日頃の意識が大切です。

ツキノワグマ出没警報

県は10月18日、今年3回目の「ツキノワグマ出没警報」を発令。この中での注意点が、こちらです。

▼畑でまだ収穫していない野菜の回収や、家庭での生ゴミの管理徹底など、クマの餌となるようなものを自宅や畑の周りに置かないようにする。
農作業はなるべく複数で行い、朝夕の時間帯は避け、山中に入らない。朝夕の不要不急の外出は避け、自宅近くや玄関先であっても、鈴やラジオなどで音を出すようにする。
▼クマの糞や足跡、爪跡など痕跡を発見したら、注意して引き返す
子グマを見たらそっと立ち去る。近くには必ず母グマがいる。子グマがかわいいからと近づくと母グマは子グマの危険を感じて人を攻撃することがある。
キノコ採りはほどほどに。クマの生息域のため、夢中になりすぎず、常に周囲の状況確認する。

  • 杉山 加奈

    富山放送局 記者

    杉山 加奈

    2018年入局 千葉局の事件・司法担当を経て、2022年から富山局で行政や経済を担当。登山が好きですがクマに気をつけます。

  • 山口 雅史

    NHK富山放送局 記者

    山口 雅史

    2006年入局 宇都宮局・長野局・国際部・フィリピンのマニラ支局をへて富山局記者。労働問題・福祉・教育などを担当。趣味はダイビングで、富山湾に潜ることが目標ですが海岸にもクマが出たことがあるそうなので注意が必要です。

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