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線状降水帯 被災の気づきを次に生かす

  • 2023年10月11日

ことし7月、発達した積乱雲が帯状に連なって大雨をもたらす“線状降水帯”が県内で発生。各地で土砂崩れや河川の増水、はんらんが相次ぎ、多くの被害が出ました。

このうち、砺波市の山あいの地区では、以前から土砂崩れなどに備えた対策を進めていましたが、今回、対策が不十分だった点も発覚。

大雨や台風が再びいつくるかわからない中、7月の気づきを次に生かそうと、住民たちは早くも備えのアップデートに取り組んでいます。

7月の大雨 そのとき山あいの地区では

砺波市の山あいにある栴檀山(せんだんやま)地区。2023年8月末時点で157世帯360人が暮らしていて、半数以上が高齢者です。

7月の大雨直後に撮影された地区の土砂崩れ現場

7月の大雨では、道路に土砂が流れ込み通行止めになったほか、電線が切れたためおよそ20戸で2日近く停電しました。

当時、情報収集にあたっていた地区の防災士、満保幸美さんは、今までにない雨の降り方に驚いたといいます。

地区の防災士 満保幸美さん

「高齢者の方がびっくりするくらいの、初めての降水量でした。土砂災害のリスクがある地域だとはわかっていましたが、こんなことになるのかと思いました」

市街地と違い、家と家との距離が離れている栴檀山地区。

道路が寸断され、最も心配だったのが、住民が無事かどうかでした。

安否確認にデジタル活用

そこで役に立ったのは、住民どうしで文章や動画をやりとりできるアプリでした。

栴檀山地区では、スマートフォンを持っていない人でもこのアプリを使えるよう、2021年に希望する世帯へタブレットを配布。

大学生によるタブレット勉強会

おととしと去年は、富山大学の学生が地区の高齢者にタブレットやスマートフォンの操作方法を教える勉強会も開催し、ハード面・ソフト面ともに体制を整えました。

こうしたサポートもあり、住民たちは日頃から何気ないやりとりにアプリを使うように。使い方に慣れていたため、7月の大雨の際もスムーズに連絡が取れました。

自治会の役員が要支援者の避難を呼びかけたところ、8割の住民が“既読”。

さらに、住民側から身の回りの被災状況や現場の写真が次々に投稿され、お互いの情報を素早くキャッチすることができたのです。

 

富山大学都市デザイン学部 安江健一 准教授

富山大学の勉強会に携わった専門家も、9月に栴檀山地区を訪れてこうした状況を聞きとった際、住民どうしの結びつきが強い地区だからこそ、こうしたデジタルでの情報共有がうまくいったと評価していました。

富山大学都市デザイン学部 安江健一 准教授

「平時から頻繁にタブレットを使って自然に情報交換ができていた。それで災害時にも使って役立てているというのは、素晴らしいなと思います」

被害に遭って気づいたことも

ただ、完璧というわけにはいきませんでした。

停電が長引く中で、住民から、スマートフォンの充電が切れてしまいそうだと連絡があったのです。

地区では、避難所となっている公民館にガソリンを燃料とする発電機を備えていましたが、住民たちの中で十分に知られていませんでした。

地区の住民

「忘れてしまったもんだから、使っていないです。後から気付いたもので」

幸い、近くのスキー場に電気が通っていたため、通信機器のバッテリーを充電できた住民もいましたが、満保さんはこうした事態に危機感を覚えたといいます。

地区の防災士 満保幸美さん

「発電機は使えるようにしないとダメなんだなと思いました。(防災対策に)100%ってないですね」

気づきを次に生かす

大雨や台風はまたいつくるかわかりません。

10月には、毎年恒例の避難訓練が迫っていました。

そこで、満保さんたち地区の防災士が集まって、今回の経験を次に生かすためにはどのようにしたら良いか話し合いました。

「住民の方に“一番困ったのなんですか”ってきいたら、充電だと言っていました」
「発電機では使いづらい。ポータブル電源にしとけばいい」
「そういう情報を住民にも教えてあげないと」
「誰かが持っていたら貸し出してもらえばいい。近所どうしで誰が持っているか情報共有してもらえばいい」

議論は1時間以上に及び、「夜の避難をどうするか」「道路の寸断にどう備えるか」など、テーマも多岐にわたりました。

防災士の1人は、議論の最後、力を込めてこう話していました。

「防災士どうしでこれだけ話したのは初めてだと思う。今までは一般的な流れの訓練ばかり重視していて、実践的に“こんなのもある”“あんなのもある”といったアイデアをなかなか出せなかった。きょう出た課題や対策をどんどん実践して波及させていけばいい」

デジタルで情報共有を進めるなど、防災に力を入れてきた栴檀山地区。

それでも、本当に災害が起きて気づくこともありました。

満保さんは、これからも備えのアップデートに取り組んでいくといいます。

地区の防災士 満保幸美さん

「大雨の被害はすごく悲しいことだったけれど、それをきっかけに地域のみんなの気持ちがまとまりました。誰1人取り残さずみんなが生きていけるように、毎年毎年、対策を積み重ねていかないといけないと思います」

訓練は10月29日に予定され、現在、富山大学の学生の協力も得て、さらに実践的なかたちを目指しています。

都市部でもリスク あなたの備えは

今回は山あいの地区を取材しましたが、オール電化の家が増える中、都市部に住む人にも同じような課題があります。

では、どんな対策をとればよいのか。日本防災士会の渋谷香奈理事に聞きました。

日本防災士会 渋谷香奈 理事

渋谷理事によると、まず大切なのは、自分がどれだけ電気に依存しているか把握すること。
家にあるものにシールやふせんを貼っていくと、視覚的に把握しやすいそうです。
自分の依存度がわかれば、生活を維持するためにどれくらい備えるべきなのか、あるいは使う道具を変えて依存度を減らすべきなのか、といった考えをめぐらせることができます。

次に、災害時に必要なものについては、機器にあわせた電池やモバイルバッテリーを準備する必要があります。使い方の確認も忘れずにしておきましょう。

さらに、栴檀山地区では、今回の大雨で道路の寸断もありました。

都市部でも、一部の避難所に人が殺到したり、渋滞や道路の冠水によって通れなくなったりと、想定していた経路や避難所が使えなくなることもありえます。
ふだんから自分が通る道で何が起きるか予想し、避難の仕方も複数考えておけば、いざというときに動きやすいということです。

ただ、いくら予想しても、経験しなければ気づけないこともあると思います。

だからこそ、今回の大雨は被害を受けなかった人も、満保さんたちのような経験した人の“気づき”を教訓にして、さらなる備えにつなげてほしいと思います。

  • 吉田紘生

    富山局 記者

    吉田紘生

    2020年入局
    岐阜局を経て、2023年8月から富山局で県政を担当。
    最近、容量の大きいモバイルバッテリーを買いました。

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