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国際女性デー④シングルマザー

  • 2023年04月19日

3月8日は国連が定める「国際女性デー」。
NHK富山放送局では「あなたと変えたい」をテーマに社会的・文化的に作られた性差=
「ジェンダー」に関するさまざまな問題についてみなさんと考える特集をお伝えしています。

コロナ禍と物価高騰で追い込まれるひとり親家庭

富山県は三世帯同居が多く、親に頼ることができるのではないかと考える人もいると思いますが、
ひとり親家庭の中には親族を頼ることができない人も多くいます。 
また、母子家庭は父子家庭と比べても、非正規雇用の割合が高く収入が低い状況に置かれています。 
そこにさらに追い打ちをかけているのが、新型コロナウイルスの影響物価高騰です。

母子家庭を支援する団体「えがおプロジェクト」

個人や団体からの寄付で母子家庭の支援を行う、NPO法人「えがおプロジェクト」では、2月上旬、ぎりぎりの生活をする県内の母子家庭に無償で提供する食料などを箱詰めする作業を行っていました。

えがおプロジェクトの代表を務めるのは出分玲子さんです。出分さん自身も離婚を経験し、3人の子どもを育てました。 相談できる人が友人ただ1人しかいなかった当時を振り返り、シングルマザーの立場がよく分かるからこそ、悩みを相談できる場をつくろうと12年前に活動を始めました。

出分さん

何で自分がこんなつらいめにあわなきゃいけなかったんだろうって
結構思ったりして。
そういう経験があるからこそ、お母さんたちのつらさやしんどさが分かるし、
子どもたちが置かれてる状況も分かります。
それがいま活動をするエネルギーになっているのかなっていう風に思います。

えがおプロジェクトには多くのシングルマザーから切実な声が寄せられています。苦しい生活を送っていた母子家庭は、新型コロナでさらに厳しい状況に追い詰められています。
派遣なのでいつ解雇されるかいつも不安」 「食費を削って生活している
あした何を食べさせてあげられるか毎日悩む

県が行った調査の結果です。年間の就労収入が200万円未満の世帯は、父子家庭では約17%なのに対し、母子家庭では約46%にものぼり、収入の差は明らかです。

そこで3年前からは、食料を無償で提供する活動を始めました。さらに物価高も重なったこの冬
電気代や燃料費の負担が大きい冬を乗り切れるよう165世帯に配りました。この日はえがおプロジェクトの活動に賛同し、これまでも寄付金を寄せてくれていた富山市の商業施設が、場所を貸してくれるとともに、社員が箱詰めを手伝ってくれました。

中には米や調味料、マスクなどの必需品に加えて、季節を感じてもらえるひなまつり用のちらしずしの素やひなあられを入れました。母親と子どもたちの気持ちを明るくしたいという思いからです。

同じ境遇の人とリラックスして話せる場を
えがおプロジェクトでは、シングルマザーの心のケアにも取り組んでいます。
DVを受けた母親が講座を受けたり、アートやヨガを楽しみながら悩みを共有しあったり。
障害のある子どもを育てている母親たちが集まり、交流を深めたりする会などを開催。
こうした取り組みでは、スタッフが子どもを見ている間にリラックスしながら語り合えるよう
工夫しています。

就労支援も
また、出分さん自身がかつて再就職の難しさを感じた経験から、就労支援も行っています。
4月にはその一環として、パソコン教室を開くため、準備を進めています。
出分さん自身がかつて再就職するにあたってパソコン教室に通った経験や、母親たちから「就職するにはパソコンの技術を求められる」といった声が寄せられたことから、パソコン教室を開くことを計画したと言います。
パソコンを持っていない母親も多くいましたが、東京の企業から寄贈してもらうことができました。
スキルアップすることで応募できる仕事の幅を広げ、就労の可能性を高めたいと考えています。

出分さんは、収入の安定が母親と子どもの精神的な安定にもつながるとして、企業などにも協力してもらいたいと考えています。そのためにも母子家庭の現状についてより多くの人に知ってもらえるよう、発信し続けたいと思っています。

いろんなお母さんがいます。本当に大変なお母さんたち。
だけどよく頑張ってるなと思う。
子どもが幸せになるためにはお母さんを支援しないと幸せになれないんですよね。
なので、お母さんを支援するってことを考えてほしいなと思います。

シングルマザーが経済的に厳しい原因は?
シングルマザーが経済的に厳しい状況に置かれている根本的な原因は、女性の非正規雇用率の高さ賃金格差です。

県が行ったひとり親家庭の実態調査結果によると、父子家庭は正社員がおよそ70%
母子家庭でも、正社員が半数を占める一方、臨時やパート、それに派遣社員もあわせて30%ほどとなっています。
これはひとり親家庭に限らず社会全体を見ても、女性と男性ではこのような差があります。
貧困や格差の問題に詳しい専門家は、独身の女性と男性を比べても女性の方が貧困率が高いことを例に挙げ、これまでの社会で求められてきた性別による役割分担の意識が、現在も労働市場に残っていることで、女性の賃金が低く抑えられ続けていると指摘しています。

東京都立大学 阿部彩教授

子どもがいるとかそういった理由がまったく付かないところでの男女差もあって、
そこも改善しなくてはならないところだと思うんですね。
また、女性が働くときには家庭の中での副収入にすぎず、それくらい低い賃金で社会保険もつけなくて良いと理解されてきたことが問題。
この考え方自体を変えないといけない。

重なる困難…養育費未払い・DV
たとえ離婚しても、子どもを養う責任は母親にも父親にもありますが、県の調査によると、母子家庭で養育費を1度も受けとったことがない世帯は、4割あまりにのぼっています。
さらに、えがおプロジェクトの出分さんによると、DV=ドメスティックバイオレンスが原因で離婚した女性の中には精神的に不安定になって思うように働けなかったり、子どもが引きこもりになったりするケースも多いということです。 母親と子ども双方へのケアが必要だと感じます。

行政の支援は?
医療費の自己負担分の助成や、養育費について弁護士が無料で相談に応じる事業。
ひとり親家庭の母親や父親が、看護師や介護福祉士等の資格取得を目指して専門学校などで学んでいる期間の生活費を支給する制度などがあります。
また、県はことし1月末から、国・県・市町村などが行っている、ひとり親家庭が利用できる制度などをまとめたサイト「富山県ひとり親支援ナビ」を新たに開設しています。
富山県ひとり親支援ナビはこちら

編集後記
富山は幸福度が高く、3世帯同居が多いから、子育てもしやすいところだろう。
私の中にも、そんな漠然とした思いが心のどこかにあったように思います。
しかし、取材を進めると現在の支援では足りず、「明日何を食べさせてあげられるか毎日悩む」
「子どもの学用品がなかなか新調できない」「大学進学に必要なお金がない」など、大変な思いをしている母子家庭の現状を知りました。現在の支援では足りず、貧困状態にある人たちがいる。
ひとり親家庭を支える社会の制度や、根本的な社会の考え方を変えていくことが必要だと取材を通して強く感じました。今回取材させていただいた、出分さんと阿部教授のお話の中で、本当はお伝えしたかったものの、放送できなかった部分を最後にご紹介したいと思います。

出分さん

制服が買えないとか、冬のコートが買えないとか、
自分が食べるのを我慢して食事を抜いているとかそういう人がいます。
いま特に電気代が高くなっているので、冬の寒いときでも暖房を我慢して、
そういうところでなんとかお金を使わないようにしている人も結構います。
そういう人たちがいるっていうことを言うと『富山にそんな人おんがけ』って
言われたりもするんですけど、実際シングルのお母さんたちの中ではそういう人たちが普通にいます。お母さんたちはすごい頑張っているんですよ。
頑張っていても、どうにもならない社会なんですよね。
なので、これってお母さんたちのせいじゃない
自己責任ってみんな思うかもしれないけど、お母さんたちのせいじゃなくて、社会が変わらなきゃだめだなと本当に思っています

阿部教授

一般的にイメージされる貧困は、子どもが飢えているといったような状況だと思いますが、先進諸国における貧困というのは、十分に食べるものがない、飢えてはいないけれども、栄養にかたよりがあって成長に影響がでてきているという状況です。
そういった家庭の中の事情は、あまり見えないというのがあるので、なかなか日本の貧困が、リアルに受け止めてもらえないところがあると思います。
日本の賃金が30年間も非常に低迷しているという状況がある中で、やはり日本全体の中で、生産性が低い産業からより付加価値の高い産業に移行していくというような産業政策が必要だと思います。また、一時的な支援よりも恒常的に所得をあげる政策が必要です。日本の貧困ワーキングプアの問題です。非正規や正規であっても、賃金が低いような職に付かざるを得ないような方々の問題なんです。
なので、スキルアップできる支援が必要です。
日本の貧困問題は、コロナ禍やいまの不況などで起こっている問題ではなく30年間ある問題なので、一時的な支援でなくなるものではないです。根本的に労働市場を変えていくという視点で見ないといけないと思います。
子どもの貧困や母子家庭の貧困というのが、”かわいそうな境遇の人”という理解ではなくて、日本の構造的な問題・誰にでも影響がある問題なんだと考えてほしいです。労働市場における男女差があるのは、もし一生独身のまま働き続けるとしても、ずっと追ってくる問題ですし、労働市場がこのような状況にあることは、すべての人に影響します
この状況は30年前と同じです。いまの若い人が『いまはこういう状況かもしれないけど、自分たちが老後になったら大丈夫だ』と思っていたら、それは間違いで、いまアクションを起こして変えないといけないということかなと思います。

  • 櫻井里沙

    記者

    櫻井里沙

    令和2年入局。
    富山局が初任地。
    これまで警察・富山市政を担当。 現在はジェンダーの問題などを取材。

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