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鳥取 原点の”白”を追求 ~人間国宝・前田昭博さん~

いろ★ドリ「精鋭」
  • 2023年12月25日

見る角度によって様々な表情を見せる焼物「白磁」。
この白磁の製作に人生をかけて取り組む職人が鳥取にいます。
人間国宝の前田昭博さん(まえた・あきひろ)。
鳥取県在住者として初の「人間国宝」に認定されてから10年がたつ中、
ここまでの人生、「白」に徹底的にこだわり続ける前田さんの今を取材しました。
(鳥取放送局 アナウンサー 保田一成)

 

白を基調とする「白磁」。
派手な装飾はせず、形の変化で陰を生み出します。 
光の当たり方しだいで作品に様々な表情が現れます。

(前田昭博さん)
「光が当たって陰影ができると、その陰影の美しさであったり、何か品格のようなものを、私の作る焼き物から感じていただけたら」

【人間国宝から10年 節目の個展は地元・鳥取で】

人間国宝認定から10年。節目の個展は地元鳥取で8年ぶりの開催です。
初日から多くの人で賑わいました。

(ファン歴46年の男性)
「静かに語り掛けていく、モノローグと言いますかね。心にしみる、ハートに訴えかけていく作品が多いですよね」

 

(ニューヨークから来たファン)
「白磁はシンプルに見えるけど、光の当たる角度によって、力強さを感じる。特に彼の作品のフォルムを見ると、土の力が伝わってくるよ」

”白”を追求する原点

鳥取市内から車で30分ほど

前田さんの出身地、鳥取市河原町です。
生まれ育ったこの地に、工房があります。

作るのは「磁器」。
高温で焼くことで粘土をガラス化させた焼き物を作ります。

白磁を作り続けて40年あまり。
一貫しているのが、「無地の白」へのこだわりです。
原点は”山陰の雪景色”でした。
鳥取で生まれ育ったからこそ感じる白を焼き物で表現したいと話します。

(前田昭博さん)
「鳥取に降る、朝、窓を開けますと、あたり一面に真っ白な銀世界になっている光景を見ると、どこか温もりのある。そんな色だとずっと思って育ってきましたし、山陰に降る雪の白から具体的な微妙な色の感じを見て、それが私が目指す白磁の色だと思っています」

大学卒業後に職人の道へ。
地元・鳥取からあっと言わせる作品を作ろうと意気込んでいました。

こちらは新人時代の作品です。
当時は、それぞれの面が強調されていて、光と影がはっきりした印象です。

(前田昭博さん)
「(若手時代は)色んな方に認めてもらいたいという思いが強かったのと、やはり僕らしい個性的なものを作らないといけないという思いも強かった。特に白磁という絵や色を入れないで、控えめな表現をしようと思っている中で、それを強めに出すというのは、あんまり結果的には良いことじゃないなと」

光と影が織りなす陰影の美しさ

今も前田さんは、理想とする山陰の雪景色を再現しようと、試行錯誤の日々です。

理想の白を表現する上で最も重要な工程が「面取り」。
丸みを帯びた素地に徐々に変化を生み出します。

今、特に追い求めているのは省略されたシンプルな世界。
凹凸を極力無くしながらも、いかに陰影を出すか。
長年の自分の感覚を頼りに、少しずつ指や手で押さえていきます。

(前田昭博さん)
「包丁のようにストっと切り落とす面じゃなくて、指で押さえることで、微妙に面の抑揚が出来て、それに光が当たることで、何とも言えない陰影が生まれてくると思うんです」

人間国宝・前田さんの挑戦は続く

 

来年、前田さんは70歳。新しい挑戦へと向かっています。
4月、初の海外での個展を開きます。場所は、フランス・パリです。

(前田昭博さん)
「割と西洋のものは装飾的な焼き物が多くて、出来たら私は、なるべくシンプルで、省いたり省略する事で装飾的にいろんなものを書き加えた以上の魅力が出ないかな、もっと出るんじゃないかなと」
「山陰でしか生まれない、また、私じゃないと作れない、そんなものがうまく白磁という焼き物の中に溶け込んで、こういう世界があるんだなと、思っていただいてご覧いただくといいなと思っています」

山陰の白を世界へ。前田さんの飽くなき挑戦は続きます。

  • 保田一成(やすだ・かずなり)

    鳥取局・アナウンス

    保田一成(やすだ・かずなり)

    平成31年入局。広島市出身。
    前任地の佐賀で陶磁器に魅了される。

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