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症状と対策を解説 鳥取県内で流行「感染性胃腸炎」

  • 2023年05月26日

鳥取県内で「感染性胃腸炎」が流行しています。4月の感染者数は過去5年間で最も多く、今月に入ってもそのペースは落ちていません。一体どんな病気なのか?対策方法を取材しました。

流行中の「感染性胃腸炎」とは

「感染性胃腸炎」とは、細菌やウイルスが体に入ることで、嘔吐や下痢などの症状が起きる病気です。ウイルス性のものとしては、ノロウイルスやロタウイルスが知られています。通常の流行時期は冬がピークで、春ごろにも小規模ながら増加するとされていますが、今年は春の流行の規模が例年より大きくなっています。

県内の月別推移をみると、ことしは患者数が多い状況が続いて、4月の報告数は速報値で698人、4月としては過去5年間で最も多くなっています。さらに、5月に入ってもペースは落ちていません。このため県は5月中旬に発表した速報で、県内全域を「感染性胃腸炎が流行している」状態と判定しています。

幼稚園や保育園での集団発生も

特に感染が広がっているのは、幼稚園や保育園などの子どもの施設です。10人以上の感染疑いの患者が出る「集団発生」の事例でみますと、県内でことし起きた34件のうち、子どもの施設が31件を占めています。
 

感染性胃腸炎の流行するなか、施設では地道な対策が進んでいます。鳥取市中心部にある、こども園です。

対策を進めるこども園

感染を防ごうと、特に力を入れている対策が「手洗い」の徹底です。子どもたちに手洗いをテーマにした歌を歌ってもらい、爪や指の間など細かい部分まで時間をかけて洗えるようにしています。

おう吐セット

また、子どもが園内で急に下痢やおう吐をしたときに、感染が広がらないための対策もしています。すべてのクラスに備え付けているのが「おう吐セット」です。吐いたものなどを片付けるポリ袋や消毒用品、子どもを2メートル以上離すなど、注意点をまとめたマニュアルが用意されています。

一方、小さな子ども同士は、お互いの距離が密接になりがちです。こども園では、新型コロナの5類移行に伴って子どもが元の生活に戻っていく中、対策を取ることがより難しくなった面があるといいます。

鳥取福祉会むつみこども園 看護師 北川恵里奈さん
マスクが外れて子どもたちも遊びも今まで通りに戻りつつあるので、子どもたちに「密にならないで」といっても難しいところはあります。

コロナ前の日常が戻りつつあり、子どもたちも活発に過ごしているだけに、こども園の職員もいっそう注意深い対応が必要になっています。

家庭での感染対策は?

こども園だけでなく、家庭などでも感染対策が重要です。子どもたちを感染性胃腸炎から守るためにはどうすればいいのか、医師に聞きました。

石谷小児科医院 石谷 暢男 院長

小児科医の石谷医師は、まずは「大人が感染源にならない」 ことが大切だと指摘します。そのためにも、手や顔など、子どもが触れそうな部分は特に入念に洗うことをすすめています。 

外から仕事で帰ってきたら、お父さんお母さんの顔は、会話の後とかでつばも付いてるでしょうし 、いろんなところが汚れております。それで子どもさんを抱き上げると、顔に頬ずりしたりもあるので、帰られたら手洗いとうがい、必ず顔もきっちり洗ってから接することが大事になると思います。

また、石谷医師は子どもは大人に比べると感染した場合に症状が重くなるリスクが高く、 十分な予防策をとってほしいといいます。

子どもは腸の長さが短く、ウイルスが入ってきたときに体に比べてウイルス量が多くなるため、症状が強く出ると思っています。睡眠を取って基本的生活習慣をしっかりしておいて、普段から免疫力を上げておくということが大事だと思います。

もしも感染したときは?

ただこうした対策を行っても、感染してしまった場合にはどうすればいいのでしょうか?

石谷医師によりますと、子どもなどがおう吐してしてしまった場合、消毒には塩素系の漂白剤など、次亜塩素酸ナトリウムを使う必要があります。ノロウイルスなどには、新型コロナ対策で使っていたアルコール消毒では効果が薄いためです。
また、おう吐が続くと、子どもが脱水症状を起こすこともあるため、経口補水液を飲むなどして、水分と栄養を取ることが重要です。予防のためにはせっけんなどを使って時間をかけて手を洗うことも欠かせません。

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが今月、5類に移行して感染症対策がいったん落ち着いたとも受け止められている中ですが、流行が続く感染性胃腸炎には注意して対策を取っていく必要があります。

  • 南幸佑

    鳥取局記者

    南幸佑

    令和2年入局 
    鳥取市政や遊軍を担当
     行政、スポーツなど幅広い分野を取材中

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