2020eye 世界はTokyoをめざす

東京2020をめざす世界のアスリートは、自分の国や地域が抱える厳しい現実の中で、身体能力や技の向上にとどまらない懸命な努力を積み重ねています。2020eyeでは、そんなアスリートを取り巻く環境や状況と向き合う人々を見つめます。

トレーニングの日々 リー族のサッカー少女の心を支える宝物は?

女子サッカーの強豪国、中国。アジアの頂点に何度も立ち、ワールドカップやオリンピックで準優勝をしたことがあります。リオデジャネイロ五輪ではフィジカルな強さを武器に激しい守備と積極果敢な攻撃でベスト8に進出。中国では“鋼鉄のバラ”と呼ばれました。

取材ディレクター:李 雲(オルタスジャパン)

今回の番組の舞台は、中国出身の私のふるさと、中国の南端に位置する海南島です。この島には、“海南の小さなバラ”と称されるユースの「琼中女子サッカークラブ」があります。国際大会でも優勝経験がある国内屈指の強豪チームです。このチームを日本のみなさんにお伝えできることは、同じ海南人の私にとって誇りに感じます。

実は選手のほとんどは海南島の少数民族のリー族です。かつて山間部で主に狩猟で生計を立てていた民族です。今も貧しい暮らしをしている人が多く、女の子のほとんどは10代のうちに結婚するか、大陸に出稼ぎに行きます。クラブの少女たちはサッカーで身を立てることが人生を切り開くための希望なのです。

4月初め、亜熱帯の島は春にもかかわらず、気温は30度ほど。日差しの強いグラウンドで、選手たちは日々6時間以上、トレーニングを積んでいました。そんな中、目にとまったのは高校3年生の王霞選手です。ポジションはチームの舵取り役、ボランチ。最大の武器はロングパスです。視野が広く、一発のロングパスで敵の守備を崩し、得点チャンスを作り出します。監督からはチームにとっての“絶対的存在”として信頼を得ています。

浅黒い肌と無造作にまとめた髪、試合で男子にも負けないフィジカルの強さを持つ王霞選手ですが、カメラの前ではとても恥ずかしがり屋。“サッカーいのち”の純朴な少女です。
今まで一度もメイクをしたことがありません。
普段はスポーツウェアで過ごすので、おしゃれな服は持っていません。

そんな王霞選手がクッキーの空き缶に大切にしまっているものがあります。それは“安物”だというアクセサリーやブレスレット。恥ずかしくて一度も身につけたことはないそうです。それでも「見ていると気分がよくなるんです」といって、うれしそうに見せてくれました。

自分と家族の未来を切り開くため、一生懸命、練習に励む日々。心の支えになるのは、意外にもおしゃれのための小物でした。取材現場で、王霞選手の純粋さに驚き感動しました。そんな王霞選手はきっと国家代表入りの夢を叶え、東京の舞台に立てると信じています。