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小澤一郎さん ヴォルティスの今季を語る インタビュー全文

  • 2023年11月07日

サッカージャーナリストの小澤一郎さんに、ホーム最終戦テレビ中継の解説の後、ヴォルティスの今季についてインタビュー。その全文を掲載します。聞き手は下境秀幸アナ。

サッカージャーナリスト 小澤一郎さん

NHK徳島のJリーグ中継を解説 小澤一郎さん

小澤一郎さんは、サッカージャーナリスト・解説者。
スペインサッカーを現地で学び、現地で指導経験もあります。
スペインリーグの解説のほか、国内外のサッカー情報の発信も精力的に行っています。
徳島ヴォルティスは、今シーズンのキャンプから取材。
NHK徳島で中継したホーム最終戦(△0-0藤枝MYFC)の
テレビ解説を務めた直後に、インタビューしました。

聞き手は下境秀幸アナ(左)

ホーム最終戦は「今シーズンを象徴する試合」

【試合概要】11月4日(土)第41節 徳島ヴォルティス 対 藤枝MYFC
前節、ともにJ2残留を決めた両チームの対戦。前半39分に、藤枝が退場で1人少なくなる。守備重視でカウンター狙いに切り替えた藤枝に対し、ヴォルティスは計16本のシュートを放つも、ゴールを奪えず。0-0の引き分けに終わった。

(下境)
Qホーム最終戦は、0対0の引き分けというゲームでしたけれども、振り返ってどんな印象ですか?

(小澤さん)
勝たなければいけない試合で勝ちきれなかった、得点できなかったっていうところは、相手が前半で1人退場になって、後半はまるまる相手が10人で、押し込む場面も作れましたから、やっぱり決定力、最後のアタッキングサード(相手ゴール近くのエリア)のクオリティーという所で、今シーズン通して見えてきた課題が、このホーム最終戦でも見えてしまったかなというふうには思いました。

試合中継の直後にインタビュー

(下境)
Q今シーズンを象徴するようなゲームだということも、解説の中でありましたが、どんなところにそれが現われましたか?

(小澤さん)
近年の徳島ヴォルティスの戦いはJ2の中では、まあJ1もそうですけども、浸透していますから、ボールをしっかりと握って、ビルドアップのところからしっかりと前進を作ってくると。その時にやっぱりスピーディーに攻撃をされたくないので、相手の帰陣が速くなっているのは、もう近年明らかですから、それだけ相手に警戒されてきているクラブ・チームになってると思うんですね。その中で、今シーズンは序盤からどうしても遅い攻撃、要するに、相手が引いた状態で、相手を崩すっていうところの攻撃のクオリティーを見せつけることができなかった。どうしても、今シーズンで言うと、ラバイン監督の時もそうですけれども、少し相手に攻めさせて、引き込んでカウンターの方が得点が取れたっていうところは、正直、今シーズンずっとあったと思いますから、きょうに関しては、やはり相手が、1人退場になって以降は、藤枝がずっと後半は、基本4-3-2で引いてきましたから、その引いた相手をどう崩すのかっていうところは、結果的には、その課題を克服することができなかった試合かなと。そういう意味で、シーズンを象徴するような試合になったかなと思っています。
 

(下境)
Q引いた相手を克服するということになる前の段階で、ヴォルティス側が速い攻撃をするという面では、どんな点がもの足りなかったでしょうか?

(小澤さん)
そうですね、あの立ち上がり早々の3分のところで、杉本選手から縦、裏抜けした森海渡選手に出て、それで決定機を序盤に作りましたし、ああいう攻撃、それから相手のディフェンスラインの背後への意識は、序盤からあったと思います。実際に森海渡選手にうまくついたようなシーンも前半の序盤にありましたから。ただそこで森海渡選手に入った時に、周りのサポートが正直遅いなと。まあおそらく、そこは2列目の選手、あるいは中盤の選手たちのタイプが、そういう速攻でカウンターになった時に、素早くスピーディーに攻めきるような選手ではないというところがあると思います。どうしても近年のヴォルティスの中盤より前の選手は、テクニカルでどちらかと言うと小柄で、パワー・スピードよりも、そういう足元のテクニックで魅せるような選手たちが多い編成になっていますから、そういう意味で、やっぱり近年のヴォルティスのサッカーで築いてきた、選手の編成と、今求められる、今のヴォルティスに求められるサッカーはどうしても、相手が引く前に速く攻めて決定機を作る、ゴールを奪うというところですから、まあなかなか、そこのギャップを埋め切れないシーズンの中で、この試合に関してはまさにそういうシーンが象徴的だったんじゃないかなと思いました。
 

今シーズンをどう捉えた?

(下境)
Qシーズン全体の中では監督が変わるというシーズンになりました。全体の印象としては、どんなシーズンと捉えていますか?(ヴォルティスは第41節を終えて、勝ち点48の14位)

(小澤さん)
そうですね。全体としても、やはり決して満足できるシーズンじゃなかったと思いますし、監督交代があった以上、そして残留が結果的に目標になってしまった以上、不本意なシーズンになったと思います。ただチームとしてクラブとして積み上げてきている、しっかりとボールを握るところから、スペイン流のサッカーをベースに、今シーズンの序盤はラバイン監督の下で、(ボールを)持ってるだけで相手に引かれて崩せなくなるので、だからこそ早めにテンポよく攻撃を中央から仕掛けようという形で、新しいシステム戦術に挑みました。残念ながらそれを浸透させることはできなかったので、またそこは来年に持ち越しだと思いますけれども、停滞することができないという意味で、新たなチャレンジはした、ただそのチャレンジがうまくいかなかった時に、結局は4-4-2で少し重心を下げてバランスを取りに行って、なんとか残留を手にしたという意味では、まあ停滞で進歩はなかったんですけれども、かと言って後退もなかったんですけれども、まあやっぱり現状維持のシーズンに見えてしまうなっていうのが、正直、厳しいですけれども感じています。
 

ベニャート・ラバイン監督時代の不調の要因は

ベニャート・ラバイン氏

(下境)
Qラバイン監督のサッカーがうまく結果が出なかった理由はどんなところにありますか?

(小澤さん)
はい、シーズン序盤からキャンプから取材させてもらって、中盤をダイヤモンドにすることによって、中盤に人は多いんですけれども、ツートップ編成で4-4-2ですから、サイドのウィングが、4-3-3のようにいないと。まあそうした時に攻撃の起点、相手は当然中央をしめてきてますから、その時にサイドに人を配置していない分、攻撃でもそして守備のところのプレッシングでも、サイドに人がいない分、誰を出そうというところで、まあ1人1人の距離感が広がってしまいますし、その1人1人の距離感を伸ばす、広げるような作業のところで、結果も伴わなかったので、ラバイン監督のやりたい戦術と選手たちの信頼感がなかなか、融合しなかったなあっていうところがありますから、どうしてもチームが、この監督の戦術のもとで大丈夫かなと、疑心暗鬼になりながらプレーしているようには、印象を序盤は受けましたから、やはりそこのトライがうまくいかなかったってところは、序盤の開幕11試合勝ちなしというところに集約されてるんじゃないかなと思います。
 

吉田達磨監督の残留に向けた手腕は

8月下旬に就任した吉田達磨監督

(下境)
Q残り11試合で吉田監督が就任して、結果、ここまで4勝を挙げ、残留を決めました。どんなところが一番良くなったんでしょうか?

(小澤さん)
そうですね。まあやっぱり守備の安定感で言うと、それほどアグレッシブにハイプレスには出ない。ダブルボランチにして、永木選手と白井選手でどっしり構えると。まあその分、相手に多少攻められる時間はあるんだけれども、逆にそれをしっかりと守備で吸収して、森海渡選手を中心にカウンターを打てるようなチームに、少し変えていったと。ラバイン監督もそのようなイメージで新しいシステム戦術にはトライしていたと思うんですけども、吉田監督の方がより現実的に、難しくないシステムで、選手たちも4-4-2のシステムは幼い頃からおそらくやってると思いますから、しっくりくるような、一番現実的な路線で、うまく守備からバランスを整えていった印象は受けています。
 

来シーズンに向けて

 

サッカージャーナリスト 小澤一郎さん

(下境)
Qまだ来シーズンの監督も編成も決まっていないですが、それでも、積み上げてきたヴォルティスのサッカーというのはある中で、来シーズンへの期待はいかがでしょうか?

(小澤さん)
きょうの残念ながら0対0で勝ちきれなかった試合でも、やはり後半、もちろん相手がひとり少ないっていうのがありますけれども、迫力ある攻撃は見せたと思うんですね。後半の左サイドの西谷選手の突破、そして右に髙田選手が入ってから、やはりまずウィングをしっかり置いてそこで突破できる。そうなると相手は広がりますから、中央で、後半の序盤で言うと、トップ下でライン間で杉本選手がうまく受けてましたし、それからツートップ編成にして、坪井選手、渡選手のところに、結構長めのボールを入れて行く。中央の攻撃も迫力がありましたから、やっぱりサッカーの攻撃もバランスですから、サイドで強い選手、1対1で仕掛けられる選手がいると、相手の中央をより攻略しやすくなるっていう意味では、まあそっちからやはり始めた方がいいんじゃないかなと思いますから、改めてスペインサッカーの原点回帰で4-3-3、あるいはサイドをしっかり攻略するような選手を置いた上で、中央で違いを生み出せる選手をうまく置けるようになると、バランスよく外からも中からも攻撃で決定機をつくれる、得点できるチームに仕上がるんじゃないかと。そのベースはもう確実にありますから、そこは自信を持って、あまり多くを変えすぎずに、今シーズンの手応えとそれから収穫と課題をしっかりと分析した上で、必要な部分を上乗せしていただきたいなと思っています。
 

冷静に分析しながら、期待を込めて、時に厳しく、今シーズンのヴォルティスについて語った小澤さん。3人のスペイン人監督たちとともに築いてきた土台を生かして、さらに進化させてほしいです。残り1試合、来シーズンにつながる試合を期待しています。

  • 下境秀幸

    徳島局 アナウンサー

    下境秀幸

    サッカーをはじめスポーツ実況を長く担当。徳島では様々な分野が取材でき、発見の毎日。最近の趣味は、娘との百人一首かるた。

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