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徳島ヴォルティスSPインタビュー~ラバイン新監督×小澤一郎~

  • 2023年02月17日

あわとく(2月17日放送)で放送した「徳島ヴォルティス新監督インタビュー」。番組では時間の都合で一部分だけのご紹介になってしまいましたが、今回特別に全文を公開します!小澤さんとラバイン監督のフットボール談義をじっくりとお楽しみください。

※スペイン語で行ったインタビューを日本語訳したものです。
※対談は1月25日に実施しました。

◆出演者 

徳島ヴォルティス 監督
 ベニャート・ラバイン(以下、L表記) 

サッカージャーナリスト
 小澤一郎(以下、O表記) 
※ジャーナリスト歴17年 。スペインなどサッカー強豪国の一流選手や指導者を取材


O: 監督という立場でのテレビ単独インタビューは初めてですよね?

L: そうですね、監督としては。

O: 緊張していますか? それとも気合十分?

L: いや、落ち着いていますよ。まあ、まだ2週間なので、インタビューにはそこまで慣れていないですけどね。

O: そうですよね。徳島での生活はいかがですか?

L: とても良いですね。思っていたよりもずっと温かく迎えてもらいましたし、そのおかげで色々とスムーズにいっていると思っています。

徳島ヴォルティス監督就任の経緯は…

O: ぜひお聞きしたいと思っていたことがあります。私たち皆が興味のあることですが、どのようにしてあなたに徳島から今回の提案が来たのでしょうか? これまで分析担当として仕事をされてきていたのに、今は監督として日本にいらっしゃる。ものすごく大きな変化だと思うのですが。

L: 大きな変化です。私はこれまで長い期間、下部組織を中心に、コーチや分析担当、アシスタントなどを担いました。直近の4年半はラ・レアル(レアルソシエダ―ド)で分析担当としてアシエル監督と半年間、残りの期間をイマノル監督の下でやってきました。イマノル監督にはサッカーのレベルに関して大きな影響を受けましたね。

O: 徳島に来る可能性について聞かれた、悩まれましたか?

L: そうですね、色々と悩みました。特にタイミングですね。シーズンの途中で、クラブ全体にとって大事な時期でした。自分のことをとても信頼してくれている人との約束を、シーズン途中で放棄することの難しさがありましたね。そのタイミングで離れることがクラブにとって良いことなのか、特にイマノル監督やロベルト(レアルソシエダ―ドの強化部門責任者)と話をしました。彼らのおかげで道が開け、その後はすぐに決断しましたね。今回の一歩に僕自身、とても満足しています。

O: 元上司からのビデオメッセージがあるんですよ。

L: 本当ですか。ロベルトはどんなことを言ってくれていますかね。

【レアルソシエダード時代の上司 ロベルト・オラベ強化責任者からのビデオメッセージ】

私たちレアルソシエダ―ド全体でベニャートの成功を祈っています。これから歩む道を楽しんで欲しいですね。毎日の生活の一部として。私たちはその日、その日の出来事を大切にしています。彼の健康を、そして幸運も祈っています。彼の任務の大きさを私たちは分かっています。在任期間中に成功を掴んで欲しいです。もちろんクラブにとっての成功も、です。徳島が目指している昇格も、ベニャートによって実現することを願っています。

O: いかがでしたか?

L: 言葉がないですね。ロベルトのような世界の手本のような人に褒めてもらえるのは嬉しいですね。イマノル監督率いるラ・レアルは今やスペイン全体の憧れのチームとなっていますし、ヨーロッパ全体の手本のチームでもあると思っています。

好きな日本食は寿司

O: 徳島での時間はまだ短いとは思いますが、街の中で最も好きな点は何ですか?

L: 引っ越しをしたばかりで、正直まだゆっくり見て回る時間がないのですが、ショッピングセンターはみましたよ。落ち着いた街で家族ともゆっくり過ごすことができるところが好きですね。お店やレストランもたくさんありますので、家族にとっても良いのではないかと思っています。特に今の時期のように寒い時期はね。徳島、好きな街ですね。

O: 日本食は好きですか?

L: はい、好きです。

O: どんなメニューが?

L: 寿司が好きです。生魚を食べる習慣もあったので刺身も好きですね。お箸を使っても食べやすいですし。

O: お箸の使い方は慣れないといけませんね。

L: 塊なら使えますけど、お米だけとなると難しいですね。私の国でも北部には高品質のものもありますが、ここの魚や肉も好きですね。でも日本はスーパーが高いよね。

O: あなたの街にはおいしいものがたくさんありますよね

L: そうですね、生ハムは持ってきました。

監督になることが目標だった

O: 次はあなたのキャリアについてお聞きします。監督のキャリアはどのように始めたのですか?

L: 地元で始めたのがきっかけでしたね。ベルガラクラブというところに所属していました。13歳か14歳のころ、子供たちの監督をするようになりました。

O: そんな早い時期から。

L: 私の弟や地元の子供たちが対象です。その後、マドリードでスポーツ科学を学びました。もちろん、監督になるということを目標にして。そこからいろいろなチャンスにも恵まれて。はじめは様々な場所で仕事をしていましたが、そこから目指す道を歩み始め、私の夢がかなうところまで来ることができました。

O: 子どもの頃、サッカーはしていましたか?

L: マドリードの大学に進学する17歳まで、地元のベルガラでサッカーをしていました。

あくまでも趣味としてで、プロとしてではありませんでしたけどね。

O: どこのポジションだったのですか?

L: ディフェンスですね。はじめはフォワードだったんですけど、だんだん上手い選手がそこにつくようになって。私は後ろ(守備のポジション)に下げられた、ということですね。でも、とても楽しかったですね。友人たちとよくサッカーをしました。すごく楽しかったです。

O: ずっとラ・レアル(レアルソシエダード)のファンですか?

L: そうです、ずっとラ・レアルのファンですね。試合は欠かさずに見ていました。古いスタジアムに行く機会はありませんでしたが、アノエタ(レアルソシエダードのホームスタジアム)には行っていましたね。行ける時は必ず行っていました。

O: ご家族もラ・レアルのファンで?

L: そうですね、ラ・レアルファンです。特に弟が熱心なファンです。もう一人の兄弟も監督をしていますが、家族皆、ラ・レアルファンです。熱狂的なサッカーファンというわけではないですが、サッカーは好きでラ・レアルファンです。

分析担当と監督の違いは「責任感」

O: レアル・ソシエダでは分析担当としてどんな役割を担っていたのですか?

L: 主に監督のサポートです。試合の準備をしたり、自分たちのチームの分析をしたり、できる時はピッチでも仕事をしたり、です。メインは対戦相手を分析して試合の準備をすることですね。

O: 相当ハードですよね?

L: そうですね、ハードではあります。でも、どの仕事も大変ですよね。私は、小さい頃から好きだった世界で仕事ができることをとても誇りに思っていました。同時に、監督になりたいという思いも持ち続けながら取り組んでいましたね。ラ・レアルの分析担当としてイマノル監督と過ごした4年間ではその後に役立つ多くのことを学びました。

O: 分析担当という職務と監督という職務の違いをどのようにとらえていますか?

L: 何よりも責任感ですね。今は、大きな責任を負っています。このクラブは非常に大きくて、たくさんの人が私のもとにいます。選手だけでなく、多くのスタッフがいますからね。正直、クラブに携わる人の多さには驚きました。こんなにもたくさんの人が仕事をしているのか、と。スペインで大きなクラブとされているラ・レアルよりも大きいですし、多くの人が働いていますね。

O: ロベルトさんとのインタビューの時に、あなたは生まれながらにして監督だ、常に監督を目指していた、とお話してくださいました。

L: えぇ、そうですね。幼い頃から、監督になりたいと、明確に思っていました。その思いは昔からずっとありましたね。アナリストとしての仕事は、監督という立場に向けて準備をしていくためにとても役立ちました。監督になるというタイミングが来た時には心の準備ができていますからね。

良い監督であるためには、パッションが重要

O: これまでたくさんの監督と仕事をされてきましたね。例えば、マドリードではモリエンテス監督ですとか。

L: そうですね。マドリードではモリエンテスとは3年間仕事をしましたね。

O: どのような監督になりたいですか?

L: どの監督からも学ばせてもらいましたね。フェルナンド・モリエンテス監督からは多くのことを教えてもらいましたね。その後、指導者としての道は退きましたが。彼は選手でしたので、特に選手との接し方について学びました。それから、エルチェではアルベルト・トリル監督から、リーズではトーマス・クリスチャンセン監督からも学びましたが、特に影響を受けたのが、イマノル監督ですね。あらゆる面で学びました。ですので、私はそういった点を生かしつつ、イマノル監督がチームを率いる際に伝えていることを、このチームでも共有していきたいと思っています。

O: イマノル監督はどんなタイプの監督ですか?

L: 私にとっては完璧な監督ですね。試合の局面は全てコントロールしていますからね。多くの人は、ラ・レアルのボールの扱い方について言いますが、私にとって最も勉強になったのは、ゲームにおける様々な場面での守りについてですね。試合の前、最中に相手チームをどうかわすか、などです。彼は情熱的でもありますね。常にクラブのことを考えていますから。あらゆることを把握していてコントロールできる監督だと思います。
モチベーションや戦略に加え、身体面のトレーニングの管理も素晴らしいと思いますが、トレーニングは選手にとって相当厳しいものですよ。試合に備えてしっかりと鍛えていきますから。イマノル監督は私にとって、また、スペインリーグにとって完璧で最高の監督だと思っています。

O: 良い監督になるために欠かせないことは何ですか?

L: まず何よりも監督であることを意識することだと思います。それから、チャンスがあればいつ、どこへでも飛んでいけるように、常に準備をしておくことも必要だと思います。それにはパッションが必要ですよね? ですので、最も重要なものはパッションだと思います。
加えて、先ほどもお話したように、チーム全体の空気を良くしたり、戦略を練ったり、モチベーションを持たせたり、チームをまとめたり、選手それぞれのことを知ったりすることも必要ですね。つまり、監督という立場は、全てがそろっていなければならないと思っています。

最新のサッカーとは、いかなるタイプのサッカーにおいても、どのような状況においても適応でき、対応できるということ

O: 現代サッカーの戦略の傾向についてお話したいと思います。私はラ・リーガ中継の解説をやっているのですが、今のラ・レアルは順調ですよね。それはチームが最新の状態だからですか? それとも新しいティキタカを取り入れているからですか? 例えば、カタールW杯ではスペインはモロッコに勝つことができませんでしたよね。パスが非常に多かった印象を受けます。ですが、ラ・レアルには、そこまでのボール回しは必要でないように思っています。なぜならば、縦のプレーが多いですし、スピードもあります。
こういったタイプのサッカーは現代サッカーなのですか?

L: ラ・レアルは試合の状況に合わせて、うまくまとまって戦うことができていると思います。試合においてボールが主役であることはもちろんです。最大の目的であるゴールを決めるために、20のステップが必要なところを4つのステップで進めなければならないとき、その状況を理解すること、また、理解して4つのステップに対する守りをすることが必要となります。ですので、私にとっての最新のサッカーとは、いかなるタイプのサッカーにおいても、どのような状況においても適応でき、対応できるということですね。

O: レアルソシエダードの試合運びに大きな影響を受けていますか? 例えば、4-4-2のダイヤモンド型フォーメーションなど。

L: えぇ、でも私のフォーメーションは決して閉鎖的ではありません。自分のチームにいる選手がどんな選手なのかを知らなければなりません。そして色々なフォーメーションを複合的に使っていきたいと思いますね。ある時はダイヤモンド、またある時は4-3-3と試合によって対応できるようにしたいです。このチームには優秀な選手がたくさんいますし、どのようなフォーメーションにも対応できるようチームを理解し、学ぶためにここ2週間しっかりと観ています。

O: 現状のフォーメーションは4-4-2ですよね。このフォーメーションはサイドのポジションがないですよね? サイドアタックをする場合はどのように攻めますか? サイドバックが大きく上がってくることが必要になるかと思いますが。

L: 鹿島戦での後半は4-3-3のフォーメーションに変更しました。数少ないウイングの和希と瑛を入れました。サイドバックのケサダ(新外国人選手)はウイングにも起用できると思っています。いずれにしても4-4-2のダイヤモンド型フォーメーションでのサイドのスペースは、サイドバックかフォワードがうめることになるかと思います。

O: 昨日は、フォワード2人がサイドに開いていましたよね? あれはどうご覧になりましたか?

L: えぇ、そうですね。ウイングバックが崩してくることはわかっていました。それから、中軸がトップ下を崩してくることも見えていました。ですので、そこからセンターバック2人の間にスペースを作り出したかったのです。あの状況を作り出すことができてよかったと思っています。吉と出るか凶とでるか、わかりませんでしたが、選手たちは作戦を理解してくれたので、あらゆる動きを調整していくことができました。

O: 親善試合の後は試合の録画を改めて観たいですか?

L: えぇ、そうですね。

O: 全て?

L: 昨日は雪がすごかったので、どんな録画になっているかわかりませんけど、観たいですね。観ることは好きですし。それに、試合を見直し、修正をし、フォーメーションを考えていくことはプロフェッショナルとしての義務だと思っています。

O: 昨日の大分との試合では強いプレスをかけられていましたよね? あのような状況ではどうやって崩していきますか? 特に前線が昨日のように3人のフォワードの場合ですね。

L: 昨日は5-2-3で試合をしましたよね。送ってもらった録画を観ました。ですが、ここでは作戦は明かせませんね。なんせ、大分とは第一戦であたりますからね。

O: それはそうですよね。

L: ですが、選手たちは大体わかってくるとは思います。昨日いくつかのアドバイスはしました。良かった部分もあるけれど、足りなかった部分もある、と。まだ時間はありますから調整をしていきながら明確な戦略をもって初戦に臨みたいですね。

O: 徳島の昨シーズンの試合も観たかと思いますが、どんな印象を受けましたか?

L: まず、ダニ(ダニエル・ポヤトス前監督)が取り組んだことを観ましたね。土台として残してくれたものを、できるだけ活用したいと思っています。もちろん、似たような考え方の部分もありますし、そうでない部分もあります。ですので、その部分を私のスタイルとして、またチームにとってより良いスタイルとして伝えていきたいと思っています。
昨年までの取り組みを可能な限り生かし、ボールを通してゲームの中心でいられるようにしたいと思っていますし、試合ごとにチーム力を高め、新しいアイディアを広げていきたいと思っています。

徳島の選手の技術力の高さには驚いた

O: 徳島はこれまでに多くのスペイン人監督のもと、スペインサッカーをやってきました。次のシーズンでは、どんな新しいことをチームにもたらしたいと思っていますか?

L: そうですね、このチームにリカルド(リカルド・ロドリゲス元監督)は4年間いましたよね。その期間で昇格するなど実りある期間だったと思います。そういった中、人材や設備をはじめ、あらゆる面が整った大きな組織を持つクラブと私は出会いました。

私にとって、通訳の存在は非常に大事で、テツヤ(小澤 哲也通訳)と出会えたことは大きいですね。今日ここにもいますけど。彼にはすごく助けてもらっています。ある日、彼にこう言いました、まるでスペインでトレーニングをしているみたいな感じだ、とね。私にとって来日初日にもらった贈り物のようなもので、そのおかげですぐに馴染むことができたと思っています。ですので、できる限り早く私の考えをクラブに伝えていきたいですね。

O: ということは、日本サッカーにおける徳島の選手たちの技術の高さには驚いたというわけですね。

L: 来る前から高い技術を持っていることは知っていました。ビデオを通して、技術レベルを観ていましたし、それはヨーロッパに引けを取らないものだと思っています。エリアなどについては強化できる部分もあると思っています。ですが、技術レベルで言うと、私はとても良いチームを持ったと思っています。素晴らしいスポンサーもついていて、私自身がとても心強く思っています。チームの理解力はとても高いですし、すぐに学んでくれます。まるでスポンジみたいに、ね。

O: 昨シーズンから新しいチームになって、具体的にどのような点で改善が必要だと思いますか?

L: そうですね、縦の攻撃が必要な場合はどんな時かをもう少し理解したいと思っています。スペースの活用がうまい和希、海渡、太陽、千葉寛汰、大生といった選手がいますし、インサイドには太郎、理吾、駿斗、曜一朗、白井に櫻井もいます。ですので、チームとして、いつポゼッションするのか、プレッシャーをかけられている時はどうするのか、などを理解していけると思います。
それからゾーンディフェンスについても挙げられますね。より攻撃的だったり、クリアしたりする点を改善していきたいと思っています。

O: 具体的に曜一朗はどんな役割を担うことにありますか?

L: 彼は多くのことを学んできていると思います。日本にとって非常に重要な選手でもありますからね、代表として18回出場していますし。徳島に来たがっていましたからね。仮のポジションでのここ数日のトレーニングを観ていますが、その姿は周囲の選手にとっても良いお手本になっていますね。喜ばしいことですし、これまでとはまた違う姿を見せてくれると思っています。やる気も十分ですから、彼にとっても、チームメイトにとっても、そして間違いなくチームにとっても良い影響を与えてくれると思っています。

O: 彼は、レアルソシエダードでいうダビド・シルバ(元スペイン代表 2010年W杯優勝)のような働きができると思いますか?

L: そうですね。選手の顔ですよね。中間ポジションがとれて、ゴールもこれまでに何度も決めていますよね。きっと今回もやってくれると思っています。私たちを支えてくれるはずだと信じています。

O: ですがもし、フォワード2人が開いている場合は、柿谷のようなトップ下がより得点をしなくてはなりませんよね? または、偽9番としてプレーするとか。

L: 昨日は開いていましたが、通常、フォワードはもっとインサイドですね。 ですので、曜一朗はトップ下としてつないだり、アシストしたりする役割を担ってほしいと思っています。彼はとても質の高い選手だと理解していますので。

O: 徳島の長所を踏まえると、ボールに触れる時間を短く、素早いプレーが必要ですよね?

L: そうですね。先ほども話しましたが試合中は、1タッチ、2タッチ、3タッチが必要な時もあれば長いドリブルが求められる時もあります。サッカーはその瞬間に判断をしていくものですからね。私は選手の動きを制限したくありません。選手が自ら判断をしていくことを望んでいますね。

思い切ったチームになる

O: 新たなシーズンに向け、徳島のサポーターは準備万端かと思います。彼らはどんなサッカーを観ることができるでしょうか? 何がこれまで違うでしょうか?

L: ファンの皆さんがシーズンの始まりを心待ちにしてくれていることは理解しています。伝わってきますので。ですので、チームと一緒に楽しんでほしいですし、勝っても負けても応援してほしいですし、サポートしてほしいと思います。良い時も悪い時も支えてもらえたらと思っています。
いずれにしても、チームと一体となって、サポーターの皆さんも楽しんでほしいと思います。思い切ったチームになりますし、ボールを通して試合を支配し、チャンスを作っていきたいと思っています。

O: あなたのフィロソフィーとしては、1-0で勝ちたいですか? それとも5-4ですか?

L: ゴールを決められることは好きじゃないですね。

O: そうですか。

L: ですけど、5-4の試合というのもあり得ますよね。それは否定しません。

O: 今の時点で、選手たちに満足していますか?

L: とても満足しています。私が満足していることは初日から話していますが、今はさらに、です。チーム始動から11日目になるかと思いますけど、とても満足していますよ。

O: 徳島のプレゼンテーションで、「反逆者であれ」という言葉を使いましたね? 具体的にどんな意味になるのですか?

L: 日本人はとても働き者ですし、まじめで目上の人を尊重しますよね。選手たちには少しずつで構わないので、もう少し自身でイニシアティブをとり、自立してほしいと思っています。チームの中においても、ですね。例えば、和希や太郎は、向かっていく精神を持っている選手ですよね。彼らは状況に応じ、試合が求める形に自ら動いていくことができる力を持っています。それを私たちは実行していきたいと思っています。

O: それはとても興味深い点ですよね。あなたは日本人選手と一緒に取り組むのは初めてですよね。タケ(久保建英選手・レアルソシエダード所属)がいますが、彼は日本人というよりスペイン人ですからね。加えて、あなたにとっては初めての日本での生活です。それにも関わらず、どのようにして日本人の特徴をつかんだのですか? 私たちは従順すぎる時もあると思いますが。

L: そうですね、とても従順ですね。日本に住んだことがある人達に片っ端から聞きましたね。それを通して、文化を知りましたし。住んだことがある人、仕事をしたことがある人に、この国のこと、日本人のことなどを何度も聞きましたからね。

O: ということは、こちらに来る前にダニやリカルドと話をすることもあったということですか?

L: ダニとは一度話をしましたよ。リカルドとは、アシスタント(コーチ)として来てくれたシシーニョが話しましたね。

O: 日本人についてどんなことを言われたのですか?

L: 今話したようなことを言われましたね。日本のリーグは非常に整っていて、クラブは、仕事をする環境にふさわしく、安定と自由を与えてもらえる、とね。人々はリスペクトする心を持っているし、従順であり、働き者である、と。それから監督に対しても尊敬してくれるということで、それはまさに私自身が感じていることですね。

O: ということは、徳島の選手は自分たちの判断で試合ができる場合もあるということですね?

L: 彼らの判断というわけではないですね。

O: 時には監督の指示通りではなく。

L: そういう意味で言ったのではありません。私たちが持っている基本を土台として、その瞬間に試合で求められていることをやっていく、ということです。その中で、つまり、作戦の中で、それぞれが自分の意志をできる限り表に出し、彼ら自身がイニシアティブをとっていってほしい、ということです。

O: 徳島には若い選手が多いですよね。スペインの若手と徳島の若手の違いは何でしょうか?

L: そうですね、若い選手には注目していますね。例えば、斗和、理吾、太陽、昴大といった選手には目を引かれますね。彼らは多くの能力を持っていますし、成長していくためにしっかりと準備が整っています。いつの日か、ヨーロッパでプレーをするかもしれませんね。

O: 日本人は技術を学ぶことに前向きですよね。

L: そうですね。先ほども言いましたけど、スポンジのように学んでいきますね。学ぶことに非常に前向きな印象を受けていますし、向こうの選手たちよりもずっと多くの質問が出てくることにも驚いています。常に質問したり、聞いたりしていますね。学びたい、よりうまくなりたい、ということですよね。

日本サッカーの弱点は「エリア」

O: 昨年の徳島のボール支配率はリーグ3位でした。しかし、ゴールをなかなか決められませんでした。これを踏まえ、今年はどのように攻めようと、ゴールを狙っていこうと考えていますか?

L: 去年と同じことはやりたくないと思っていますし、前を向いて進んでいきたいですが、私が観る限り、このチームには優秀なフォワードがそろっていますね。改めて名前を挙げると、大生、太陽、坪井、曜一朗、海渡といった選手ですが、彼らはゴールにつなげてくれると思います、トップ下には和希もいます。ということで、私にはゴールを生み出す、そして決める人材が十分にそろっていると言えますね。

O: チームメンバーの中でどの選手に最も驚きましたか?

L: 正直、全員ですね。先ほども話ましたが、若手選手には大きな感銘を受けましたね、理吾や斗和といった、高校から来た選手、大学から来た選手などがいますが、強い感銘を受けましたよ。

O: 徳島は育成に関してラ・レアルと協定を締結しましたね。徳島には今後、どんなメリットがあるでしょうか?

L: 協定の条件などの詳しいことについてはわかっていませんが、徳島にとって、そしてラ・レアルにとっても前向きな協定であると思っています。徳島にとってのメリットは、ラ・レアルから定期的にやってくるコーチ陣からの技術面でのサポートが挙げられるかと思います。それから方法論を学んだり、よりよくするために、また必要なものとして、導入するものに気づいたり、といったこともあるかと思います。もちろんその逆も言えると思います。双方にメリットがあるものだと思うので。しっかりと鍛えられた徳島の日本人選手を(ラ・レアルが)獲得する機会が出てくる、など、ラ・レアルにとってもメリットがあると思います。

O: 初めてのJリーグとなりますが、スタジアムに出る時にはどんな気持ちになると思いますか?

L: わからないですね、考えたことがないので。どんな雰囲気になるのかもわからないですし…。

O: とても良い雰囲気になると思いますよ。

L: そうですか。それなら良かったです。私たちにとって特別で、とても感動的な瞬間になるでしょうし、一生忘れないと思います。早くその時が来てほしいですが、まだ3週間 残っていますね。それまでにしっかりと準備をして、良い状態で臨めるようにしておきたいと思います。

目標はJ1昇格

O: 最後の質問です。目標として掲げる具体的な数字はありますか?

L: 目標ですか?

O: そうです、具体的な目標は。

L: クラブが昇格することですね。ですが、それには日々の努力が欠かせません。毎日を全力で取り組まずして昇格について話すのはナンセンスですよね。まずは毎日のトレーニングに集中し、できることには全て取り組んでいきたいと思います。目標に近づくことができれば、と思いますし、その目標を掴むことが私たちにはできると思っています。

O: どうやって呼ばれるのが良いですか? べニャートですか?

L: べニャートですけど、日本は最後に「t」が来た時の発音が難しいんですよね? ですので、ベニと呼んでください、ベニ、と。それか、苗字のラバインで。ここではそのどちらかで呼ばれていますね。

O: 今日はありがとうございました

L: こちらこそ。

O: お会いできてよかったです。

L: 私も

O: ありがとうございます。

L: またここでお会いしましょう。

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