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深~い!点訳の世界

  • 2023年04月20日

点訳の“スーパーボランティア”

徳島県北島町。人口2万3000あまりの小さな町です。
ここに、全国規模で活動を行う、ボランティア団体があります。
いわば“スーパーボランティア”集団です。

その名は、「点訳燦(さん)の会」
「点訳」というのは、目の不自由な人向けに、本の文字を点字にすることです。
会は20年以上前から活動を行い、1500冊を超える書籍の点訳や点訳者の育成に取り組んできました。その功績が認められ、昨年度(2022年度)の文部科学大臣表彰に選ばれました。

4月から大忙し!その理由とは

会では、4月になり、「1年で最も忙しい時期」を迎えているといいます。
それはなぜかというと。

青少年読書感想文全国コンクールの課題図書が、「毎年4月上旬に」発表されるからです。
読書感想文。「子どもの頃、夏休みに書いたなー」という方も多いかと思います。
会では、今年度も、小中学校向けの15冊をすべて点訳して、希望のあった全国の盲学校に届けることにしています。

点訳燦(さん)の会、会長の田房英子さん
「会は児童書の点訳をメインにしています。その中でも課題図書の点訳は一番大きな活動で、4月に始めて、夏休みまでに、みんなで一斉に点訳にかかっています」

点字は、6つの点の組み合わせ

点字は、6つの点の組み合わせで表します。

「1」「2」「4」で母音を、
「3」「5」「6」で子音を表現し、その組み合わせで50音全てを表します。

色が変わっているのが、ふくらんでいる点です。
例えば、「あ行」は上段のように、
「か行」は下段のようになります。
か行は、共通して右下の点があり、母音は、それぞれ上と同じで点で「か・き・く・け・こ」となります。

会長の田房さんに、点訳の方法を教えてもらいました。

パソコンで専用ソフトを使って入力します。

かなを入力すると

点字になっていました!

入力の際に気を付けることは、「音に忠実に入力すること」。

例えば、助詞の「は」は、「わ」の音なので、点字でも「わ」に相当する字を入力します。
また、文節や単語のあとなどに「スペース」を入れて、言葉のまとまりを判別しやすくすることも必要です。

会で点訳する、小中学校向けの課題図書のうち、ページ数の多いものでは、点訳の完成まで1か月半ほどかかるそうです。
まず、点訳者が入力→第1校正者がチェック→第2校正者がチェック→別の人が最終チェック。1つの本の点訳に、4人が関わって、ようやく完成。根気のいる、地道な作業です。

 

入力した点字は、専用のプリンターで、点字の突起を作り出し、立体的に印刷されます。

でき上がったものに近づいてみると、「両面」に突起がついています。
表にも、裏にも点字があり、両面を指でなぞって読めるようになっています。

点字は指で触るものであるため、基本的に大きさが決まっていて、印刷する用紙も大きさが決まっているそうです。

(左側が点字の教科書)

そのため、ページ数が増えやすく、例えば、小学5年生の国語の教科書では、3倍ほどの厚みになっていました。

点訳するのは本だけではない

点訳燦(さん)の会には、現在14人のメンバーがいます。昨年度は、北海道から沖縄まで、26の盲学校に、ボランティアで、点訳した本を届けました!
普段は、主にそれぞれの自宅で活動し、月に1度会合を開いて、情報交換などを行っています。メンバーはどんな人なのかというと

60歳で定年になってから、何かしなきゃいけないかなと思って、講習を受けて会に参加しています

高校生の時に独学で始めました。目の不自由な方に読んでいただけるというのが、すごくうれしいなと思います

本以外の点訳にも取り組んでいます。

パソコン画面には、「もやせるごみのひ げつ もくよーび」の文字が。

これは、ごみ収集カレンダーを点訳したものです。目の不自由な方のリクエストに応え、年度ごとに、点訳をしているそうです。まさに生活を支える活動です。

会には、点訳を受け取った人からの点字の手紙も届いています。
盲学校の子どもからは、お礼の言葉と共に、お気に入りの本の感想が届きました。

点訳燦(さん)の会、会長の田房英子さん
「どこかで誰かが喜んでくれていることをモチベーションにして、
会の方たちとの交流も楽しいので、地道にこれからも活動できたらなと思います」

点訳で、知的好奇心や、生活そのものもサポートする、“スーパーボランティア”の皆さん。
間違いなく、「徳島の誇り」です。

  • 下境 秀幸

    徳島局・アナウンサー

    下境 秀幸

    サッカーをはじめスポーツ実況を長く担当
    徳島では様々な分野が取材でき、発見の毎日
    最近の趣味は、娘との百人一首かるた 

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