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南海トラフ巨大地震に備える 子どもたちを守れ

  • 2023年03月07日

命を守る 由岐小学校の防災教育

東日本大震災から12年となるのを前に、徳島県南部の美波町にある由岐小学校の児童7人が抜き打ちの避難訓練を行いました。

「緊急地震速報や、地震くるよ!」

児童が校外の街を散策していると、突然、緊急地震速報が鳴りました。児童は、声を掛け合って、倒壊の恐れのある建物の近くを避け、頭を抱えてうずくまり、揺れが収まったとなると、わずか1分ほどで近くの高台に駆け上がりました。

2回目の訓練では、さらにレベルアップします。

揺れでうずくまっている最中に「次は城山に行こう」などと避難先を相談し、近くにいた高齢者と外国人旅行客役の教員の手を引いて避難しました。

ところが、予定していた避難路は、崖崩れで塞がれ通ることができません。しかし、児童は、とっさの判断で、覚えていた別の避難路にう回して高台への避難に成功しました。

児童の対応力の背景には、日頃から防災教育を積み重ねてきたことがあります。

美波町由岐地区は、南海トラフ巨大地震で津波が早ければ10分ほどで到達し、最大で10メートルを超える恐れがあると想定されています。由岐小学校も港の近くにあります。児童は、災害から命を守るため、自分自身で考えて命を守ることを最大のテーマにして日頃の備えの大切さを繰り返し学んでいるのです。

訓練のあと、児童からは「遊んでいるときでも正しい判断ができるような気がしたし、自信がついた」、「本番はもっと大変だと思う」、「いろんな避難場所とかも知っておきたい」と話し、学びが身についていると感じさせました。

災害時に子どもたちが自分で判断できるようにする教育は、他の地区でも役立つかもしれません。

由岐小学校の講師を務めた徳島大学の井若和久研究員は、「実際の災害時にはもっと大変なことが起こるかもしれないので、パニックにならないよう何度も習慣化したり訓練で身につけたりすることが大事だ」と話し、行政や地域も一体になって日頃から備えることが必要だと強調していました。

避難所に子どもの居場所を

大規模な災害では、子どもたちが避難所でどうやって過ごすかも課題です。同じ空間で大勢が避難生活を送るため、これまでも子どもの泣き声などが原因でトラブルになったり、子どもたちもストレスをためてしまったりしがちです。

そんな子どもたちを支援しようと、鳴門教育大学の学生たちが企業と共同で研究を進めているのがおもちゃです。

災害時の避難所に最適なおもちゃはどんなものか。

学生たちがまず考案したのが、10の条件です。音を出しにくい、狭い場所でも使える、電気がなくても遊べるなどで、これらの条件に合うおもちゃを世界中から探しています。

例えば、ドイツから輸入したブロックは、柔らかい素材ででき、避難所の床に落としても大きな音を立てず、踏んでもけがをしにくくなっています。丸洗いすることも可能で、泥を被るなどして汚れても、きれいにして遊ぶことができます。

レールを組み立て、ボールを転がす台湾のおもちゃは、穴の空いた専用のボードを壁に立てかければ、そこにはめ込むことができるため、狭くても楽しめます。

こうしたおもちゃの研究成果を連携する企業と共有し、避難所での利用につなげようとしているのです。

東日本大震災から12年となるのを前に、鳴門市でおもちゃの体験会が開かれました。

参加したのは、「徳島ママ防災士の会 Switch」の母親とその子どもたち。学生たちは、教員養成大学で学んだ知識も生かして、子どもたちが楽しんで遊べるようにサポートしました。

すると、子どもたちはブロックで車や掃除機を組み立てたり、レールの上をボールがどうしたらうまく転がるか考えたりと、おもちゃに熱中していました。

子どもたちは「楽しかった!一番楽しかったのはレールブロックで、長いのと短いのとでいっぱいできた」などと喜んでいました。

見守っていた母親たちも、「小さい子どもたちがいるだけで避難所に行きづらいと思う保護者も多くいる。安心して過ごせる場はすごく大事なことだと思う」と歓迎していました。

鳴門教育大が去年、避難所になる学校の教職員を対象にしたアンケートでは、特別なおもちゃをそろえるなど、子どもたちのケアの具体策を検討しているという回答は、35%程度にとどまっています。学生たちは、自分たちの研究成果をまとめたパンフレットを作成し、自治体などにPRして、避難所に適したおもちゃの普及を進めたいと考えています。

おもちゃの研究を進める鳴門教育大学のグループの代表・松岡勇和さんは「避難所に行くと、不安だったり精神的な不調を抱えたりしてしまう子どもがいる。すべての避難所で、子どものケアについて考えてもらえるようになったら」と話していました。

  • 大橋 夏菜子

    徳島局・記者

    大橋 夏菜子

    2020年入局
    事件から環境・教育問題まで広く取材
    趣味はアウトドア
    県南最高!

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