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読む72時間  「長崎・五島列島 さよならフェリー」

2019年05月31日

名物TVウォッチャー・吉田潮が読み解く!『ドキュメント72時間』

 出会いと別れの場、あるいは日常の延長線上。それがフェリーターミナル。今回は長崎・五島列島の中でも最大の島・福江島にて撮影。3月末は島を出る人と見送る人々で混みあう。就職や進学、転勤で島を出る人、学校の教師も多い様子。カラフルな紙テープがなびき、歌や吹奏楽で盛大な送迎が繰り広げられる3日間。

 剣道着を着た男の子は友達の女子を見送りに来た。彼女が島に来てからは、居残り稽古を求めるほど剣道に熱が入ったそう。お互いにライバルと認め合うふたり。いろいろな気持ちをこめて「ありがとう」と叫んだ男子の目に涙。そして笑顔。切磋琢磨の友情は一生忘れないね。

 見送りに来た中学校の教師は吹奏楽の顧問。若い頃、ミュージシャンを目指して東京に出たが、夢破れて帰ってきたという。大自然と人情がある島を「当たり前のようで、実は恵まれていたんだなということに気づいた」そうだ。また、一度は別れた妻と再婚した53歳の男性は「一緒にいたら、当たり前と思ってわからなかったことがある。離れていた期間が長いから、今なら妻のことがわかる」とのこと。当たり前の裏には惰性や慢心がある。人間の業だよね。

 先輩を見送る看護師の女性は、島に移住してまだ4か月。心細い日々をその先輩に助けてもらったという。特別なことではなく、日常の挨拶やなにげない言葉がけが心強かったそう。

 夜、ひとりでテレビを見つめる83歳男性に遭遇。初めはカメラに悪態つくも、訥々と話し始めた。元塗装業。姫路でペンキ職人として、バブルの頃は懸命に働いた。生まれ故郷で死にたいと思い、56年ぶりに島に戻ってきたそう。妻は死別。子供はいない。「今、がっくりきてるの。なんで帰ってきたんだろうって」。言葉は少ないが、物語がある。当たり前の日常を失ったときに気づくこと。その大きさと尊さ。気づいた人はきっと強くなれる、と思いたい。

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ドキュメント72時間
ドキュメント72時間
人々が行き交う街角に3日間カメラをすえてみる。 同じ時代に、たまたま居あわせた私たち。 みんな、どんな事情を抱え、どこへ行く?
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