JUDGE'S PICK越田乃梨子

製作中大谷麻美

技法 / 影

越田乃梨子コメント

「影」で文字を作るためだけに人形がセットされたのではなく、その人形たちのシチュエーションが(作者本人が行っているような)映像制作現場であるという、メタ構造になっているところがうまいと思いました。
手法自体に新しさはありませんが、手法とそこに映る内容の関係性を考え、丁寧に作りだしたことがよく分かります。
その人形たちも影をテーマに映像制作していることが分かれば、もっとドキッとするかもしれないなと思いました。

FALLING増渕健太

技法 / 同ポジ

越田乃梨子コメント

映画やテレビで様々なスペクタクルなカメラワークやアクションも見慣れてしまっているにも関わらず、この映像を見てワクワクする気持ちを持てたのは、そこに作者が体験した、身体が拡張したような視点の発見が素直に映し出されているからだと思いました。
途中、編集の意図が読み取れない部分もありましたが、テンポのよい勢いのある映像になっています。視点移動のリズムを楽しみながら編集した姿を想像させられます。

Waves of sand脇川諒

技法 / 時間操作

越田乃梨子コメント

“時間操作”技法の応募作品の多くが逆再生の手法をとっていたのですが、その中でも素材の持つ特性をうまく引き出した作品だと思いました。
手法にフォーカスしすぎるとワンアイディアの現象のみしか見えてこないということがよくあります。しかし、この作品は手法を元に適した素材を見つけてきて、さらにその素材自体の持つ特性を丁寧に映像で表現しようとしているところが、現象のみにとどまらない豊かな表現につながったのだと思います。
TECHNEの文字が浮かび上がる瞬間はゾクっとするような感覚があります。もっと高精細で見てみたいです。

INK佐藤寛子

技法 / 時間操作

越田乃梨子コメント

この作品を見て、映像の手法というよりも実写映像の持つ情報量の多さを再確認しました。ここでのインクの質感や色の混ざり方はデジタル処理では生み出せない、画の説得力があります。
実写映像には予想を超えたものが偶然写るということもありますが、ここでは作者の見たい画が明確にあるがゆえに、ただ色の現象の偶然性を狙って記録したのではない、完成度の高い映像になっています。
実物でみるのとは違うリアリティを持った映像を表現するための撮影手法や、予想を超えた偶然性を生み出すような撮影手法に挑戦してみるのもおもしろいかもしれません。