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讃岐うどんをインドに

画像 2023年1月26日放送

みずから「うどん県」と称するほど、香川県民にとってのソウルフードとなっている讃岐うどん。ただ、新型コロナの影響で国内での消費は落ち込んでいます。さらに、輸入小麦などの価格高騰で、事業者にも追い打ちが。こうした中、海外でうどんの売り込みを図ろうという動きが、いま広がり始めています。(高松放送局・富岡美帆/ニューデリー支局)

インドでカレーうどんの試食会

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さまざま文化が入り交じる、多民族国家、インド。
1月中旬、首都・ニューデリー近郊にある商業施設のレストランで、香川県内の業者によるある試食会が行われていました。
インドは人口が14億人を超え、ことし中国に代わって世界一になるとみられ、今後、日本のある“庶民食”の販路拡大に向けて、注目しているというのです。
振る舞われたのは、日本でもおなじみ、カレーうどん。
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男性
試食した人

ベリーナイス

麺は香川県がうどん用に開発した小麦でつくったうどんを利用しました。
いま、うどんを海外に展開し、県産小麦の販路につなげようという動きが広がり始めています。

うどんの消費落ち込む

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「自分たちで育てた小麦でうどんを」という関係者の思いを受けて開発された、県産のうどん用小麦「さぬきの夢」。

多くのうどん店がオーストラリア産を使う中、実際に「さぬきの夢」を原料のひとつとして利用しているといううどん店では、客の評価は上々でした。
男性
うどん店客

すごくおいしい。弾力とだしの感じが好きで、よく来ています。

男性
うどん店客

うどんも、小麦の香りがしますし、ちょうどいい弾力。

食べた時、鼻に抜けるような小麦の風味があるのが特徴だそうです。
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しかし、新型コロナの影響でうどんの消費が落ち込んでいます。
総務省の「家計調査」によると、高松市の「日本そば・うどん」の外食で年間の支出金額は、令和元年は一世帯あたり1万4792円だったものの、感染拡大後の2年間で減少しています。
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当然、「さぬきの夢」にも影響を与えています。
令和3年の生産量はおよそ9000トンとこれまでで最も多くなりましたが、このところは業者の希望購入量は減少し、ピーク時のおよそ3割に。製粉業者が多くの在庫を抱えている状況にまで陥りました。

インドで受け入れられるか

国内での消費は頭打ちになりかねない。
そこで注目したのが、人口の増加が著しいインドでした。
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冒頭の試食会を手がけたのは、香川県に本社を置く「石丸製麺」。
現地に赴いたのは営業担当の石丸昌邦部長です。

試食会は、3年前にインドでの展開を始めた、大手カレーチェーン「CoCo壱番屋」の協力を得て行われました。

店舗は、国際的な企業が集まる地域にあり、さまざまな国の飲食店も並んでいます。
そして、日本から逆輸入した「CoCo壱番屋」のカレーも一定の評価を得ています。
石丸部長は、独特の「コシ」がある讃岐うどんの麺と掛け合わせた「さぬきカレーうどん」に、期待を持って臨みました。

試食会に招かれたのはインドで日本料理などを提供する店のオーナーや今回の試みを聞きつけた広告代理店の人たち。果たして反応は・・・。
男性
試食した人

インドのうどんはパサパサしているが、日本のうどんはもちもちしている。
もちもちしたうどんは初めてで、とても気に入りました。

これまで提供されていた麺よりも、もっちりとした食感には評価を得ることができました。しかし、思わぬ反応もありました。
それは「讃岐うどん」の命とも言うべき「コシ」についてでした。
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カレーうどんに続いて食べてもらったのは、一度ゆでたあとに、水で締めただけの麺。
「コシ」をじかに味わってもらおうというのです。しかし。
男性
試食した人

アルデンテのような堅さがある。冷やして食べる文化がインドにはないので、十分に料理されていないと誤解を生む可能性がある。

讃岐うどんにとって「コシ」は命ともいうべき重要な要素。
意外な反応でした。
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石丸製麺 石丸昌邦部長 「インドでは麺のコシはまだ受け入れられていないなと感じた。
どのぐらいコストを下げてインドの飲食店まで安く我々の讃岐うどんを届けるか課題として残る。
インドは非常に魅力的な市場ですのでそこの方々に合った商品を作ってお届けしたい」
ニューデリー市内のホテルでも試食してもらいましたが、こちらでは「焼きうどん」などにマッチするのではないかという評価も寄せられました。
今後、浸透させていくことができるかどうか、さらに市場調査を進める予定です。

更なる拡大の動き

別の地域でも展開しようという動きもあります。
県内の製麺業者2社が、県の後押しも受けて、新たな商品を開発しました。

狙うのはアメリカ。
日本からの麺類の輸出額が最も多く、受け入れの土壌もあると言えます。新型コロナの影響で、自宅で食事をする機会が増えているとみて、生活スタイルの変化に合わせた商品を売り込もうというのです。
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そのうちの1社で、製麺業や県内外にうどん店を展開する「あっとん」が開発したのは、温めればすぐに食べることができるように、冷凍しただしのうえに、冷凍うどん麺と具材が乗せられたうどん。
すでにアメリカのバイヤーのもとに試験的に送られていて、今後、商談が成立すれば、令和7年度から本格的な販売を始めることを目指します。
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あっとん 神原轟代表取締役 「日本の人口が減少する中で、将来的に日本の市場が縮小していく不安がある。
さぬきの夢っていう小麦を、世界のブランドにできるようお手伝いがしたい。
世界の人々が讃岐うどんをどう評価していただけるかワクワクしている」

賞味期限延長への研究

こうした取り組みを支える動きもあります。
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香川大学では、乾麺よりも「コシ」を味わうことができる、半生麺の賞味期限を伸ばすための研究が行われています。

半生麺は、賞味期限がおおむね90日ですが、より多くの地域への展開を踏まえ、賞味期限を伸ばせないかという要望があがっていたのです。

去年8月から始まった研究では、輸送中の最高温度とされる35度と、25度の環境で、それぞれ長期保存した場合に、麺の水分量や折れやすさ、ゆでた後の食感などがどのように劣化していくか、1か月に1度のペースで調査を続けています。

これまでの研究で、35度で保存した麺は劣化が早く、賞味期限から1か月ほど経過するとおよそ5%水分量が減少することや、白色の麺が黄ばんでいく速度が速いことが分かりました。研究は、ことし4月まで研究が続けられる予定です。

讃岐うどん、浸透なるか

文化の異なる地域に食を浸透させるためのカギは何か。 専門家は、食事の文化的な背景などもあわせて売り込むことが必要だと指摘しています。
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食品の輸出などを研究する
日本大学大学院
加藤孝治教授
「うどんだけ売り込むのではなく、食文化が生まれた背景にある歴史やなども含めて輸出することが必要。例えば、讃岐うどんコシのある状態がどのような職人たちの努力によってできてきたのかといったストーリーは、ヨーロッパの人たちなどは興味深く聞いて購入につながることがある。いいものを作れば売れるという考えだけではだめだ」
県民のソウルフードが、海外でも定着を図れるのか、挑戦は始まったばかりです。
※なお掲載している情報は放送当時のものです。
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