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異次元の少子化対策と言うけれど・・・

画像 2023年1月24日放送

「次元の異なる少子化対策」。
子育て支援は岸田内閣の金看板です。
将来的には、子育て関連の予算を倍増することも表明しています。

「経済的不安は10万円じゃ解決されない」。
「保育園に入れないと復職できない」。

子育て中の親たちからは、繰り返し繰り返し、環境整備を求める声が聞かれます。
本当に必要な子育て支援とは何か、子育て中の記者が取材しました。
(高松放送局記者・鈴木博子、石山寛規)

10万円相当の給付

岸田総理大臣は、子ども・子育て支援を最重要課題に掲げるとしています。

その一環として、去年決まったのが、「出産・子育て応援交付金」の給付です。
子育てにかかる経済負担を軽減しようと妊娠・出産時に、5万円ずつ、合計10万円相当の経済的支援を行うものです。現金のほかクーポンでの給付も可能です。
新たに妊娠・出産する人に加えて、2022年4月以降に出産した人も対象になります。
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NHKが香川県内の自治体に取材したところ、すべての自治体が現金で給付する方針とのことです。これまでの交付金と同様、煩雑な作業を避けたいという自治体の思惑もあります。

ことしに入ってから、給付の受付を始めたのは、高松市、丸亀市、坂出市、東かがわ市、多度津町、小豆島町、土庄町の7つの市と町。
2月にかけて受付を開始する予定なのは善通寺市、三豊市、宇多津町、綾川町、三木町、まんのう町。
観音寺市とさぬき市、琴平町、直島町は1月24日現在、未定となっています。
県内で子育て中の方々の反応を聞いてみました。
給付対象となる子どもの母親
(1歳の子どもと第二子妊娠中)
「助かるのは助かる。いろいろお金かかるので、おむつとか子ども用品などにあてようかと考えています」
子育て関連の商品は値上げが著しい状況です。
▽粉ミルクは去年11月までに5%から12%アップ、▽紙おむつは去年4月までに10%程度上がり、来月以降も値上げが予定されていて、やはり家計を圧迫しています。

一方で、一過性の給付になるのではと、いぶかしがる声もありました。
給付対象となる子どもの母親
(0歳6か月の子ども)
「10万円なんてすぐになくなる。まずは、子育て世帯に現金を配っておけばいいという思惑が透けて見えるんだけど、子育てってそういうものではない。国は私たちを馬鹿にしているのかと思ってしまう」
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この母親のことば、共感できるところもあります。
私も0歳の子を子育て中ですが、月々の出費は粉ミルクや紙おむつで1万円超。季節ごとの洋服や離乳食などで、さらに3万円から4万円。そして保育料として6万円近く。
給付されたとしても、本当に「あっという間に」なくなってしまいそうです。

「次元の異なる」に不安の声も

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政府は出産、子育てまでの一貫した伴走型の支援を目指しています。

①児童手当を中心とした経済的支援、②幼児教育や保育サービスの充実、③育児休業制度の強化を含めた働き方改革の推進という3つが柱です。

ただ、具体的な内容はまだ示されておらず、経済・財政運営の方針、いわゆる「骨太の方針」が策定される、ことし6月までにはその大枠を示すとしています。
また、岸田総理大臣は子育て予算を倍増させたいとしていますが、どう財源を捻出するのかはこれからの議論です。

こうした政府の“肝いり”の支援策ですが、これまでも幾度も議論されています。
本当に期待できるのか、私はおなじ境遇の人たちに率直に聞いてみたくなり、およそ20人の方にインタビューをしました。 そこで聞かれたのはこんな声でした。
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32歳母親(5歳の子ども、第二子出産予定)・パート 「出産育児一時金が50万円に増額されて、自分もその対象にはなるが、結局、出産するクリニックでは値上げされ、自分のところには還元されないのではと思っている」
30歳母親(3歳の子ども)・主婦 「児童手当が3歳になると月々1万5000円から1万円に減額されるのはつらい。3歳以降からの出費の方が増えた」
やはり経済的な支援のさらなる拡充を求める声は少なくありません。そして、あまり過度な期待はしていないという、諦めにも近い感情もありました。

そして多かったのは、子どもを保育施設に預けて働く上での不安でした。
26歳の父親(1歳の子どもを子育て中)・会社員 「保育園に入れないと、妻は仕事に復帰できず。将来どれくらいお金がかかるか不安つきない。1億円くれたらいいのに」
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33歳の母親(1歳の子ども)・育休中 「復職したら時短勤務で働く予定だが、結局共働きで保育料は5万から6万円とられて、支出を考えると育休手当をもらうのと同じくらい。なんのために働いているのかわからなくなりそう」
37歳の父親(1歳の子ども)・サービス業 「夫婦共にサービス業で土日が出勤日。保育園が休みの日曜日はどちらかが休んだり祖父母に預けたりしながらなんとか仕事をしているが、それなのに保育料は共働きで一番高い額を取られている。0歳~2歳も無償化してほしい」
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「保育園落ちた、日本死ね」という投稿から盛り上がった議論がありました。
それを発端に保育の受け皿は拡充され、待機児童数の減少につながりました。
しかし、実際に子どもを預けながら働く人の背景にはいろんな事情があり、現状の制度や支援策ではすべてをカバーできていないという実情がうかがえます。

自治体独自の支援 地域で“差”

香川県の池田知事も子育て支援を重点施策に掲げています。
また、私たちが住む自治体が独自に行っている支援もあります。

例を挙げると・・・

【観音寺市】
出産祝い金として今年度10万円を支給
【まんのう町】
第一子・第二子は5万円、第三子以降は10万円の祝金
【善通寺市・さぬき市】
新型コロナや物価高騰対策も兼ねた支援として子ども1人あたり5万円 など
【小豆島町】
すでに妊娠・出産にあわせた給付金制度を設けていて今回の政府の支援を加えると、妊娠確認時に15万円、出産時には11万円の給付に
【土庄町】
第二子の出産で10万円。第三子以降は20万円の祝い金の給付に加え、1歳~3歳の間は子ども1人あたり年間12万円の支給。

人口や財政事情の違いから、こうした支援も可能になるのだと思いますが、先ほどのインタビューした親も言っていたように、地域間格差のようなものはあるのかもしれません。

政府の支援策が具体的になるのはことしの春以降。
かけ声倒れにならないような支援策になるのか、注目していく必要があります。
編集後記 自治体の支援策を取材しながら私たちが感じていたのは、子育てには多くのお金がかかるだけに、現金支給は率直にありがたいということでした。

取材した私たちは高松市在住。高松市では物価高騰対策を兼ねた支援として子ども1人あたり2万5千円を給付していますが、所得制限があります。
財源に限りがある以上、仕方のないことですが、子育ては所得に関係なく千差万別で、それぞれが事情を抱えます。所得制限なく受給できる自治体の住民をうらやましくも感じざるを得ないとも思いました。

当然、ニーズは1人1人違います。ただ、重要なのは現場の実情をどのくらい踏まえて政策に反映させるかという点でもあります。
そして、合計特殊出生率を政府が掲げる1.8に引き上げるには、相当思い切った給付や支援が必要だという意見もあります。
より実態に即した支援にしていくために、スピード感も重視しつつも、試行錯誤しながらでも検討していく姿勢が、政治や行政に求められていると思います。
※なお掲載している情報は放送当時のものです。
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