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五重塔はどう揺れる

( 高松放送局・佐藤和枝 )

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(左)善通寺五重塔(右)本山寺五重塔
日本が誇る伝統建築、五重塔。実は、国内に現存する五重塔が地震で倒れたという記録は残っていません。しかし、なぜ地震に強いのかはわかっていません。
その謎の解明につながるかもしれない取り組みが、今、進んでいます。
善通寺市にある総本山善通寺の五重塔は、創建以来4代目の塔として明治35年に建てられたもので、国の重要文化財に指定されています。
三豊市にある本山寺の五重塔は、明治43年に再建されたもので、細長い形をしているのが特徴です。
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(左)振動を感知するセンサー(右)風向や風速を測定するセンサー
去年から、この2つの五重塔の揺れを常時観測する取り組みが始まりました。東京大学と本山寺五重塔の解体修理を監修した専門家などでつくる委員会が主体となり、2つの五重塔に振動を感知するセンサーと、風向や風速を測定するセンサーを設置。リアルタイムで収録したデータを東京大学地震研究所の観測サーバーに転送しています。
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塔の中央にある心柱
これまで五重塔の耐震に役立っているのではないかと指摘されてきたのが、塔の中央にある「心柱(しんばしら)」です。総本山善通寺と本山寺の五重塔の心柱は、いずれも上からつり下げられていて、地面から浮いています。さらに、本山寺の心柱の下には、小さい石が大量に入った重量箱もついています。今回の取り組みでは、五重塔が揺れたときに、心柱がどのように動いているのかを確認することで、五重塔の耐震メカニズムの解明に近づくことが期待されています。
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本山寺整備委員会委員長/建築家
多田善昭さん
「本当に心柱が耐震上役立っているのか、何もわかっていない。2つの塔にこれだけの最新の機械をつけて、地震も風も揺れをチェックすることで、心柱が耐震上役立っているということがきっと立証できるのではないか」
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揺れのデータ
ことし5月、取り組みの報告会が開かれ、研究者らがこれまでの成果を発表しました。
心柱は、塔が揺れる際、本体とは違う動きをしていることがわかりました。耐震を目的に設置されたかどうかはわからないものの、結果的には地震の力を軽減する方向に動いていることがこれまでの観測結果から裏付けられたということです。
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東京大学地震研究所 楠浩一教授 「心柱としては五重塔に悪さはしない、どちらかと言うと揺れを緩和する方向に動いているということが1月に善通寺市で震度2を観測した地震のデータからもわかった。心柱が耐震性能をあげるために、もとから計画されて配置されたことはないと思うが、結果的に五重塔の性能をよくする方に動いていそうだということは、観測を始めてまだ半年だが、少しみえてきたと思う。近代の高層ビルは、建物が揺れる際におもりが建物と逆方向に動いて揺れを低減する制震技術が取り入れられているものもあるが、五重塔の心柱はそのおもりと同じような働きをしていて、それが100年も前に建てられたというのは、ただただ驚き。その謎を観測が明らかにしてくれるのではないかと期待している」
ただ、劇的な耐震効果をもたらすには心柱が軽すぎるほか、これまでにとれたデータは比較的小さな揺れに限定され、もっと大きな揺れの場合に心柱がどう動くかはわからないため、引き続き注視していく必要があるということです。
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東京大学大学院 藤田香織教授 「実際の地震や風でどういうふうに揺れているのかを計測できたのは非常に大きな成果。五重塔は地震で倒壊した記録がないということがなんとなく神秘化された部分があるが、いいところもあればそうでないところもあるので、冷静に学ぶべきところは学び、何か今後の建物に役立てられることがあるならば、それはぜひ生かしていくべきだ」
2つの五重塔で行われている常時観測のデータは一般にも公開されています。2つの五重塔の前には、この取り組みを紹介する看板が設置され、看板に記されたQRコードをスマートフォンなどで読み取れば、リアルタイムで揺れのデータを確認することができます。
【関連リンク】
 「古い建築物 “保存”には“活用”を」
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