「ゆう６かがわ」のコンセプトアニメを制作漫画家・まつざきしおりさん

: 子どもにしかできない発想や、大人から見るとふしぎな言葉のセンス。子育て中にめぐりあう、きらめく瞬間をとらえたこのマンガの作者は、直島在住のまつざきしおりさんです。柔らかいタッチで描かれたイラストは、ＳＮＳで人気を集めています。夫と、娘「みーたん」との３人暮らしの日常のなかで、実際にあったちょっと面白い出来事を、マンガで記録しています。

: （まつざき）
娘が大きくなったときに私ってこんなんだったんだなみたいなのを読み返せたらきっとうれしいんじゃないかなというふうに思って。「子育てって思っている１００万倍大変だな」みたいなふうに思っていたんですけど、その分、一瞬一瞬でおもしろいこととか、逆に大変だったことを漫画にすることで面白さに昇華していくみたいなのがすごくあったりとか。「子どもの頃の記憶をこの日記を通して思い出すことができてありがとうございます」みたいな感想をいただけたらすごくうれしい気持ち、温かい気持ちになりますね。

: マンガの主人公の「みーたん」は、この春小学３年生になります。; （まつざき）
「おかあさん、そんなに頑張らんでも、かあさん頑張ってるんやで、十分」とかいわれて、「あっ、ありがとう」みたいな。; （五味）
はげましてくれる。; （まつざき）
そう。すごくよく見ているし、的確なアドバイスをくれる存在としてなんか面白いなって思ったりします。親と子でも関係が変化していく、変化していくっていうか厚みを増していくみたいな感じがすごくいいなと思います。

: ２０１１年に移住したまつざきさんの直島との出会いは、大学生の頃でした。; （まつざき）
島の流れる空気だったりとか雰囲気だったりとか、都会にはない緩やかな時の流れっていうところにものすごく感動して。社会人時代ちょっと心身ともに疲れた時期があったんですけど、その時にふと、もういちどあの海がみたいなと思った時があって、一人島を訪れたんです。本当に癒やされるというか癒やしてもらうというか、人として生きる感覚というものを取り戻せたっていうのが、ものすごくありがたい経験で。そのときに改めて本当に移住しようっていうふうに決めて。; （五味）
移住、成功だったと思いますか。; （まつざき）
そうですね、それに関してはもう、ああ来てよかったっていう時と、ああ失敗した、間違えたって思うときが…。でも本当に、島に来ていないと経験できなかっただろうなとか、こんな人生歩めなかっただろうなっていうこととか、人との出会いとか、本当にたくさんあったので、そういった面では私の人生の中で一番のターニングポイントで、本当に島には移住してよかったなというふうには思いますね。

: まつざきさんは移住後、そのてんまつを描いた本で漫画家としてデビュー。一度はあきらめかけた子どものころからの夢を、島で実現しました。; （まつざき）
漫画家という夢をかなえるというか、絵を描く仕事が今できているっていうのはやはり島に移住するっていうことがなかったら、なかったんじゃないかなというふうに思いますね。過去の自分に、「いや、なれたよ。」みたいな。「諦めかけていたけど、本当に、絵を描くこと、好きなことを仕事にできているよ」っていうふうに伝えたいと思います。; （五味）
けっこう軽やかな感じなんですね。「あ、なれたよ」っていう。; （まつざき）
そうそうそう。「なれてんなれてん、ちょっと聞いて聞いて」みたいな感じで。

: 今回、まつざきさんは「ゆう６かがわ」のコンセプトを伝えるアニメでイラストを担当してくれました。最初のシーンでは、小さな女の子が一番星を見つけます。; （まつざき）
女の子にとってはそれこそ将来大人になってもふと思い出す、大切なシーンだと思うんですよね。そういうものが本当に人の数だけ存在している。無限にあるけども１つ１つがものすごく大切なものだと思います。もう単純にアニメーションを見て温かい、ほっとした一日を、「ああ、きょうも自分頑張ったな」とか、「きょういろいろあったけど、明日はきっとまたいいことがあるだろう」みたいに思って頂けたらすごくうれしいなと思います。