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1998年/アメリカ映画/上映時間1時間29分
出品受賞暦
1996年「シネマ100・サンダンス国際賞」アメリカ部門最優秀脚本賞受賞
1998年「サンダンス映画祭」観客賞、映像作家トロフィー賞受賞
1998年「第11回東京国際映画祭」正式出品作品、最優秀芸術貢献賞受賞 |
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クレジット
監督:クリス・エア
製作:スコット・ローゼンフェルト/ラリー・エステス
製作総指揮:デビッド・スキナー/カール・ブレスラー
共同製作:シャーマン・アレクシー/クリス・エア
製作補:ロジャー・バーウルフ/ランディ・スアー
ライン・プロデューサー:ブレント・モリス
脚本:シャーマン・アレクシー
撮影監督:ブライアン・ケイプナー
編集:ブライアン・バーデン
美術:チャールズ・アームストロング
音楽:BC・スミス
衣装:ロン・リーモン
支援:シネマ 100/サンダンス国際賞
主催:NHK, NHKエンタープライズ21、西友、キネマ旬報、サンダンス・インスティチュート
キャスト
ビクター・ジョセフ:アダム・ビーチ
“火をおこす”トーマス・ビルズ:エバン・アダムス
スージー・ソン:イレーヌ・ベダード
アーノルド・ジョセフ:ゲイリー・ファーマー
アーレン・ジョセフ:タントー・カーディナル
少年時代のビクター:クディー・ライトニング
少年時代の“火をおこす”トーマス:サイモン・ベーカー
トーマスの祖母:モニク・モジカ
ランディー・ペオーネ:ジョン・トゥルーデル |
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【監督プロフィール】
「スモーク・シグナルズ」で監督デビューを果たす。オレゴン州クラマス・フォーブス出身のシャイエン族とアラパホー族の血を引き継ぐ28才のフィルムメイカー。エアはこれまでに6本の短編映画を撮影し、さらに7本の短編の監督・才作を手がけている。その中には「スモーク・シグナルズ」の二番目の挿話をもとにした「Someone Kept Saying Powwow」や「Tenacity」といった作品があるが、後者はこれまで20を越える映画祭で上映され、ユニークな視点とテクニックを持ったフィルムメイカーとして世界的な注目を集めている。
エアはニューヨーク大学で芸術の修士を獲得し、大学院時代には教職助手をつとめ、ヘイグ・マヌージアン賞、ワーナー・ブラザース賞、マーティン・スコセッシ・ポスト・プロダクション賞、それにニューヨーク大学の初上映映画祭(ファースト・ラン・フィルム・フェスティバル)のモビール賞の一等賞に輝いた。また、1995年には権威あるロックフェラー財団文化映画奨学金も受けている。
クリス・エアはアメリカの非営利団体、ネイティブ・アメリカン・プロデューサー同盟の活動メンバーのひとりである。
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【あらすじ】
消えたインディアンは、二度と戻らないという言い伝えがある。
ビクターとトーマスは1976年に生まれた。その年の7月4日、トーマスの両親が白人の独立記念日を祝ってアイダホのクールダレーヌ族史上最大の花火大会を開いた。大勢のインディアンが集まり、みんなが酔いつぶれて寝静まっている午前3時、火事が発生した。トーマスの両親はその火事で焼け死ぬが、ビクターの父、アーノルド(ゲイリー・ファーマー)は赤ん坊だったトーマスを火事の中から助け出した。トーマスの祖母はアーノルドを孫の命の恩人と感謝するが、彼はその時から長い髪を切って喪に服し、二度と髪を伸ばすことはなかった。
それから12年後、母はいつものように酒に酔って暴力を振るうと父と口論し、やりきれなくなった父はトラックで家を出て行った。そして、その日から二度とビクターは父の顔を見る事はなかった。
1998年、22歳になったビクター(アダム・ビーチ)は母のアレーン(タントー・カーディナル)から、アリゾナ州フェニックスの小さなトレイラーの家で、父が死んだことを知らされる。母は自分の代わりにビクターに遺灰を引き取りに行ってくれと頼むが、彼は家族を捨てた父を恨み、それに加えてアリゾナまで行くには大金も必要だったので、即座に断るのだった。そのことを聞かされた “火をおこす”トーマス(エバン・アダムス)はビクターに自分の貯金をはたいて一緒に行くことを持ち掛ける。トーマスは赤ん坊の時、火事の中から自分を救ってくれたのがビクターの父だということを祖母からいつも聞かされていたので、恩返しもしたかったのだった。他に選択の余地がないとビクターはしぶしぶトーマスの申し出を受け入れ、2人の若いインディアンは、生まれて初めて居留地を出て旅に出発する。
旅の間、ビクターはトーマスから父をめぐる物語を延々と聞かされることになる。−「君のパパが消えた夏、僕らは12歳だった。夢でスポーケンにある滝に行けというお告げがあったので、一日がかりで歩いて、滝の上の橋に立ってお告げを待った。僕は数時間も滝の流れを見つめてじっと待った。サケを見たかったがもう棲んでいない。その時 “ここで何してる?”。君のパパが大声でそういった。夢のお告げを待っているというと、パパは大笑いした。そして、デニーズで、午後だったけど、デラックス朝食セットをご馳走してくれた。生まれて初めて食べる、豪華な朝食で、死んでもいいと思った。」 −と。トーマスは悲哀とユーモアをこめて物語を話すが、時には事実とフィクションがないまぜになっていた。細部まで尾ひれをつけて語られることもあるその物語は、ビクターの古傷をうずかせた。ビクターの父への恨みと、父に愛されたかった心の渇望をトーマスは知っていたが、両親の顔も覚えていない彼にはやっぱり羨ましかった。ビクターはトーマスに「本物のインディアンらしく、クールな戦死のような態度を見せろ」と反撃に出る。ビクターは静かで、ストイックな戦士こそが、人々の尊敬を集められると考えていた。しかし、そうすることでさえ、ビクターの傷が癒されないことをトーマスは知っていた。
フェニックスに着き、父が死んだトレイラーで、彼らは若いインディアンの女性スージー・ソン(イレーヌ・ベダード)に会う。ビクターの母に父の訃報を知らせてくれたのは彼女だった。スージーは生前、アーノルドが打ち明けた秘密をビクターに話した。アーノルドは自分の過ちで22年前、火事を起こして人を殺してしまったことを悔やみ、家族を捨てたのだと。子供の頃から父を憎んでいたビクターは、母と自分を気づかいながらも、過去に犯した罪に苦しみ、家に帰れなかった父の本心をはじめて知るのだった。
彼らはアーノルドの遺灰の入った壷を乗せ、父が家を出た時のトラックでアイダホに戻ってくる。トーマスは彼の帰りを待ちかねていた祖母に、心からのキスを贈った。ビクターはスポーケン川にかかった橋の上から、激しく流れる水に向かって父親の灰をまく。ほとんど一緒に過ごしたことがなく、決して許すことができなかった父のために涙を流すのだった。
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