赤ちゃんと歌おう!

すくすく子育て
2023年1月28日 放送

みなさん親子で歌ってますか? うたや音楽にまつわるいろいろな疑問について、楽しみながら考えます。

専門家・ゲスト:
志村洋子(埼玉大学 名誉教授)
加耒(かく)徹(声楽家/バリトン歌手)

赤ちゃんの好きな音って? 音楽を好きになるには?

息子が生まれてすぐのころから、歌いかけて遊んでいます。泣いていても、おむつのうたを歌うと、なんとなくおむつ替えだとわかるようで、おとなしくなります。アメリカ人のパパは英語のうたを歌って遊んでいます。

夫婦ともに音楽が好きで、子どもにも音楽に親しんでもらえたらと思って、いろいろ試しています。例えば、音の鳴る絵本をみせたりしますが、少し反応がうすいようです。うたを歌って聞かせると反応がいいのですが、単に私の声がうれしいだけなのかもしれません。
赤ちゃんは、どんな音や音楽に興味を持ってくれやすいのか、どのように接したら音楽に興味を持ってくれるのか気になっています。
(お子さん4か月のママ)

赤ちゃんがいちばん好きな音は、聞き慣れたママの声

回答:志村洋子さん

「私の声がうれしいかも」と言っていましたが、その通りです。赤ちゃんは、おなかの中で24週ごろから音が聞こえています。生まれる前から、ママの話し声もきちんと聞こえているのです。赤ちゃんは、聞き慣れたママの声が大好きです。

赤ちゃんはうたも好き。抑揚の大きい言葉かけが大事

回答:志村洋子さん

4か月ごろの赤ちゃんはうたも好きで、「♪おむつ おむつ」のように歌ってもらえると、うれしくなります。ゆっくりした、抑揚の大きい声かけが大事で、ふだんの声かけでも「♪これから〇〇するからね~」と調子をつけてあげると、赤ちゃんは楽しくなると思います。

顔・音が赤ちゃんに向いていることが大事

回答:志村洋子さん

4か月の赤ちゃんでも、うた(音楽)として聴いていることがわかっています。大事なのは、顔や音が赤ちゃんに向いていることです。自分に向かっている、なじみのある声のシンプルなうたを、すてきな声だねと思いながら聴いていると思います。

―― 加耒さんは、お子さんが赤ちゃんのころから、その歌声を聞かせていたのですか?

童謡や世界のうたを、やさしく歌っていた

回答:加耒徹さん

子どもには、小さなころから聞かせていましたね。赤ちゃんのころは寝かしつけのときに日本の童謡などを歌っていました。そのほか、オペラや外国語のうたなど、仕事で覚えないといけない曲を歌っていました。とはいえ、通常の声量ではなく、目を合わせて、やさしく、ささやくように歌っていました。

―― 赤ちゃんは、パパよりママの声のほうが好きですか?

パパが毎日歌いかければ大好きな声になる

回答:志村洋子さん

赤ちゃんは少し高めの声が好きだとわかっていて、ママの声のほうが好きだと思います。でも、毎日パパが歌いかければ、赤ちゃんは聴いています。そうやって、第2の声も大好きになるでしょう。

―― 音の鳴る絵本には、あまり反応がありませんでした。

聴く力が発達する途中、変化が目に見えるとわかりやすい

回答:志村洋子さん

おそらく、目の前に絵本があるけど、そこから音が出ていることがわからないのだと思います。4か月ごろの聞こえは、発達の途中なのです。音が耳に届いていても大人のような聞こえではありません。月齢によっても変わっていきますが、動かすと音が鳴るおもちゃのように、変化が目に見えるとわかりやすいでしょう。例えば、おもちゃのマラカスは振ると音が出るので、そこに集中できます。


子どもへの歌いかけについては、こんな質問も寄せられています。

3歳の息子は、赤ちゃんのころから歌いかけていたためか、今もうたが大好きです。でも、下の子が生まれてからは、忙しくて歌いかけができず、テレビの子ども向け番組のうたを聴かせるだけです。このままでは、弟はうたが好きにならないのでは? と気になっています。直接歌いかけるほうがよいのでしょうか。
(お子さん3歳4か月・9か月のママ)

直接歌うと伝わるものが違う。口の動きを見せることも大事

回答:志村洋子さん

赤ちゃんでも、人の声の違いはよく聞こえています。やはり、ママやパパの声など、聞き慣れている好きな人の声は落ち着いて安心できますね。
また、歌っているときの口の動きを見せることも大事です。赤ちゃんは、口の動かし方を見て、自分も口を一緒に動かそうとします。たまには、少し時間をつくって歌いかけてあげてください。テレビのうたもいいのですが、直接歌うと伝わるものが違います。

子どもの「なん語」をまねて、うたのように返すとよい

回答:志村洋子さん

赤ちゃんが「喃語(なんご)」を話して、それをまねて返してあげるとき、言葉よりうたのような発声で返してみましょう。歌いかける時間がなかなかとれなくても、例えば料理を作りながら、「♪トーン・トン・トン」のように抑揚をつけて台所から声かけをするのもよいでしょう。

親がうたを楽しんでいるところを見せる

回答:志村洋子さん

「うたは楽しいよ」と伝えることも大事です。子どもに、大好きな人(親)がうたを楽しんでいるところを見せていきましょう。


赤ちゃんに聞かせる音量はどのくらいがよい?

カラオケ好きのパパは、息子(3か月)に、よくJ-POPを歌っています。曲を伴奏代わりに流しながら歌うことが多いです。反応はいいようで、一緒に歌っていると錯覚するぐらいに声を出してくれたり、歌っている口元をじっと見て笑ったりしています。

ただ、心配なのが音量です。親が聴いて気持ちがいいくらいの大きめの音量にしてることもあります。赤ちゃんにとっていい音量はあるのでしょうか。また、ロックが好きなのですが、そんな音楽を赤ちゃんに聞かせてもいいのでしょうか。
(お子さん3か月のパパ・ママ)

大きい音、強い音を聴き続けるとダメージを受けやすい

回答:志村洋子さん

赤ちゃんは、みなさんが思うよりもよく聴こえています。子どもの耳は大人と比べると繊細で、大きな音・強い音を聴き続けると、ダメージを受けやすいことがわかっています。
親が好きな音楽を聴かせる場合、ロックなどでも構いませんが、音量は小さくしましょう。

音を全く流さない、耳を休める時間が必要

回答:志村洋子さん

また、大きくない音でも音の流しっぱなしは耳にダメージを与えるので控えましょう。赤ちゃんは、身の回りのたくさんの音の中から、聴きたい音だけを選んで聞くことが苦手です。大人には気にならないエアコンや足音などの生活音も、歌声や話し声、音楽などと一緒に耳に届いてしまいます。13歳くらいまで、聞き分ける力が未熟です。
そのため、音を全く流さないような、耳を休める時間をつくることも大切です。常に音が流れている環境にならないようにして音量を小さくしたり、たまに音が出るぐらいにしたりしましょう。

―― 例えばオルゴールや、心が休まるBGMもよくないのでしょうか?

音楽を聞くとき・止めるときのメリハリをつける

回答:志村洋子さん

どんな音も、小さい子どもにはBGMはないほうがよいでしょう。例えば、リラックスするための時間に音楽を流して、子どもが寝つくなど、目的を果たしたあとは消しておく。そのように、音楽を聞くとき・止めるときのメリハリをつけるとよいでしょう。

音楽を止めるからこそ耳に入る音も大事

回答:加耒徹さん

音楽に関わる仕事をしているので、やはり音楽を流したくなる時間が多くなります。ですが、ときおり耳を休ませる時間は、とても大切だと思います。
何も音が鳴っていない中で子どもと話していると、窓の外から虫の声や風の音が聞こえてきます。子どもと「虫の声が聞こえてきたね」といった会話があるのも、音楽のひとつではないかと感じます。子どもと音を共有する時間も大事にしたいですね。

―― 歌いかけるときに、伴奏はあったほうがいいのでしょうか?

伴奏はあってもよいが小さめに。うたのメロディーが通るように

回答:志村洋子さん

うた以外の音をあまり上げないほうがいいと思います。子どもは伴奏があるとうたのメロディーがわかりづらくなることがあります。親が歌ってあげるときも伴奏の音量は小さめにして、うたのメロディーだけが通るようにしましょう。
だっこして顔を見て歌いかけているので、お子さんも、一生懸命にパパが歌うところを見ていましたね。とても楽しそうに歌っているので、ぜひ続けてください。


親が音痴で、子どもに歌いかけると影響がある?

娘は、子ども向け番組のうたに合わせてノリノリになり、うたや踊りが好きなようです。保育園でも楽しく踊っていると聞いて、うたやリズムを楽しめるテレビを見せたり、音の出るおもちゃで遊ばせたりするようになりました。
でも、夫婦ともに音痴の自覚があり、親が歌って聞かせることはありません。うたが嫌いなわけではありませんが、親が音痴だと、歌いかけることで子どもに影響が出ないか気になります。
(お子さん1歳6か月のママ)

音がずれてもいいから親の声で歌いかけて

回答:志村洋子さん

そもそも、音痴の定義を決めないとわからないことですが、音程やテンポがずれると「うまく歌えないな」「自分は音痴だ」と思ってしまうことかもしれません。ただ、それが親から子へ伝わるといったことを聞いたことはありません。親の声、個人性がのった声は、テレビなどから流れる歌声とは伝わるものが違います。音がずれてもいいから歌いかけてあげてください。

声を聞かせる、歌い方を見せることが大事

回答:志村洋子さん

例えば、将来、子どもが「昔ママが歌ってくれていたうたと少し違うかも」と思うことがあるかもしれませんが、それを気にすることはありません。それよりも、声を聞かせてあげること、歌い方を見せてあげることが大事です。息を吸ったり、口を動かしたり、どのように歌うのかを教えてあげてください。

音が違っていても気にせず、子どもとの音楽の時間を楽しんで

回答:加耒徹さん

音が間違っているのではないかと不安で歌わないよりは、音がどんなに違っていても思い切り子どもと一緒にうたの時間をつくったほうが、子どもに残るものになると思います。子どもとの音楽の時間を楽しんでください。

わらべうたのように声をかける

回答:志村洋子さん

わらべうたのように「♪〇〇ちゃん~うたおうね~」と声をかけるだけでもいいと思います。例えば、抑揚がある聞きやすい声で「♪ワンワンいるねぇ」と歌うように声をかけたら、子どもも「♪ワンワン~」と同じように声を出してきます。自然に始まる歌い合いを楽しんでくださいね。

―― 歌うのは苦手というパパ・ママに、おすすめのうたはありますか?

うた選びのヒント

回答:志村洋子さん

親自身が子どものころに歌ってたうたがいいかもしれません。歌詞はうろ覚えでも一部分でもいいのです。
子どもと一緒に歌いやすいのは、次のようなうたです。

  • 高低差が少なくゆるやかで単純なメロディー。
  • 繰り返しや掛け合いがある。
  • リズミカルで発声しやすい。
  • わかりやすい歌詞。
  • 伴奏や手拍子は控え目に。なくても楽しめます。
  • 「お気に入り」が1曲あればよい。

例えば、童謡の「アイアイ」は、いくつかあてはまりますね。パパ・ママが小さいころ歌った童謡は、あてはまるうたが多いですよ。
歌っているときに、間をつくったり、話しことばにしたり、アレンジで驚きを持たせてあげると、子どもはおもしろがって、「もう1回歌おうよ」と言ってきます。きれいに正しく歌おうとする必要はありません。音楽で遊んで楽しみましょう。


評価にとらわれずに、楽しく音楽を続けるには?

娘(4歳)は、歌って踊るのが大好きです。弟も一緒に楽しんでいます。最近ピアノを習い始めて、ピアノもうたも、楽しんでいます。

ただ、今後、だんだんうたや演奏を評価されるようになって、楽しめなくなるのではないかと心配です。私自身、上手に歌えないことから苦手意識を持ってしまいました。音楽を楽しんで続けていくためには、どうしたらいいでしょうか。
(お子さん4歳・2歳3か月のママ)

楽しい雰囲気で教えてくれた先生に感謝している

コメント:加耒徹さん

私は4歳のころバイオリンをはじめました。精密な楽器で、どうしても音程がとれなかったり、集中力が切れてイライラすることもありました。でも、先生が楽しい雰囲気で教えてくれる方で、「ここは本当にすごいね。ここを少し直すといいね」のように、ほめながら段階的に教えてもらえたことに感謝しています。

親が人と比べない。「大好き」と伝えれば揺るがない

回答:志村洋子さん

音楽は歌ったり楽器で遊んだり、好きでいることが大事なので、基本的に、親が人と比べないことです。また、「あなたがやってる〇〇は、こんなにいいのよ」のように、はっきり「私はこんなに大好きだ」と表明していれば、子どもは揺るぎません。
例えば、子どもが学校での評価を気にしていても、「もっと練習した子がいたんだね。でも、私はあなたのファンだよ」のようにフォローできます。


―― 加耒さんはお子さんにうたを教えるときに、気をつけていることはありますか?

音楽で遊んで、楽しんでほしい

加耒徹さん

教え方については全く意識せず、一緒に遊ぶような感覚です。例えば、仕事で歌詞を覚えるのが大変で、家で何回も練習することがありますが、子どもの前では大変そうな姿を見せないようにしています。もしよければ、一緒に歌うぐらいの雰囲気を心がけています。うたをもって、親子の時間に彩りが与えられたらいいなと考えています。音楽に限らず、子どもには楽しんでほしいと思っています。

―― 親子で歌うことは、どうして大切なのですか?

うたはコミュニケーションでもある。子どもにとって一生心に残るもの

志村洋子さん

音楽は、世界のどこにもあって、親が子に歌う子守歌やわらべうたは、どの国にもあり、どの時代も人は歌っています。人間の特質なのかもしれません。子どもがうたを歌い、親も子どもに寄り添いながら歌い、常にそのように関わっていく力は、コミュニケーションの力でもあります。言葉が話せないうちから、一生懸命に赤ちゃんとコミュニケーションしようと歌いかける親の姿は、子どもの心に一生残っていくと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです