日本で暮らす外国人の子育て

すくすく子育て
2022年12月3日 放送

日本に住む外国人の数は約280万人(2021年)。外国にルーツを持つ子どもたちは年々増えています。でも、外国人のママ・パパたちは、日本での子育てに不安がいっぱいです。手助けしたくても、どんなふうに接したらいいかわからないママ・パパも多いはずです。私たちにどんなサポートができるのか、専門家と一緒に考えます。

専門家:
汐見稔幸(東京大学 名誉教授/幼児教育学・保育学)
南野奈津子(東洋大学 ライフデザイン学部 教授/社会福祉学)

今回のテーマについて

古坂大魔王さん(MC)

日本人でも、ママ友・パパ友との人間関係や園などの環境の変化で悩むのに、言葉や文化・風習も違うので大変だと思います。

鈴木あきえさん(MC)

私のまわりにも増えている印象です。例えば、園にはたくさんの外国人のママ・パパがいます。でも、「日本語を話せるのかな、私は外国語話せないし⋯」という気持ちが先行して、なかなか話しかけられません。

南野奈津子さん

日本は少子化が進んでいますが、外国にルーツを持つ子どもは年々増えています。そんな方たちが、どのような子育て環境で生活しているのか。その中で保護者の方がどんなことを感じたり、悩んでいたりしているのか。私たちが具体的に知る機会は少ないと思います。

汐見稔幸さん

日本の社会は、日本で働いてくれる人がいないと維持できなくなってきます。必然的に、外国から来ていただくことも増えるわけです。まだまだ、これから課題がたくさんあると思います。


外国にルーツを持つ子どもたちの保育

まずは、外国にルーツを持つ子どもたちが多く通う保育園の様子を見せていただきました。そこにはどんな工夫があるのでしょうか。

こちらは、10か国の外国にルーツを持つ子どもたちが通っている保育園「桜本保育園(神奈川県川崎市)」です。日本人と外国人を隔てることなく、多文化に配慮した保育を行っているのが特徴です。

例えばバースデーカレンダー。「おめでとう」をさまざまな国の文字で表記することで、子どもたちが自然と他国の文化に触れられるようにしています。

園にある絵本も、スペイン語や中国語など、いろいろな言語で書かれたものがあります。子どもたちは早いうちから、いろんな言葉に触れることができます。

給食では、月2回ほど、外国にルーツを持つ子どもたちの各家庭料理をみんなで食べています。韓国料理やボリビア料理、ブラジル料理、フィリピン料理など「にじいろメニュー」と名づけ、子どもたちに大人気です。

子どもたちは一緒に育つことで、世界にはいろんな文化があり、違いがあることを自然と学んでいきます。文字や名前、味付けが違うことが当たり前なのです。その中で好みがあっても、違うことがいけないこととは思いません。

運動会や発表会などのイベントでは、各国の民族衣装を着て踊ります。この日は、韓国の伝統芸能を披露しました。

さまざまな文化を体験することで、違いをありのままに受け入れ、その違いをすばらしいと感じる気持ちを育てています。「21世紀を生きていく子どもたちは、いろんな場所で生活する可能性があり、どこにいても、自分のアイデンティティを否定することなく、自分らしく生きてほしい」という思いがあるそうです。


ここで、園長の朴栄子さんに話を聞きました。

―― 保育園をここまでしていくのは大変でしたか?

朴栄子さん(桜本保育園 園長)

1980年ごろから、いろんな国の人たちがこの地域にも来ました。そこで、それぞれの文化をみんなが楽しめたら、と思ったのです。私が若いころには、異文化理解のためにチマチョゴリ(民族衣装)を子どもたちに着せると、日本人の保護者から、「朝鮮人に思われるでしょ」と言われていました。今は、日本人の保護者から「文化を知りたい」という要望もあり、イベントのときに民族衣装を着るような機会をつくっています。周りが変わってきて、続けてよかったと感じています。

―― 保育園の中では、いろんな言葉が飛び交っているのですか?

朴栄子さん(桜本保育園 園長)

基本的に、生活言語は日本語です。私自身も日本語しか話せません。もちろん、子どもたちは日本語以外の言葉を話す子もいます。保護者向けには日本語だけというわけにはいきません。そんなときは、外国籍のスタッフが寄り添えるようにしています。例えば、日本語で困ったときは、スタッフが一緒に過ごしたりしています。


コメント:汐見稔幸さん

幼いころに、いろんな文化があって、それぞれがそれぞれのよさを持っていることに触れる。そこが新しいですね。おそらく外国で暮らすことになってもうまく適応できる、その原体験になっていくと思います。日本のモデルのようになるのではないでしょうか。


外国人の日本での子育てには、どんな悩みがあるの?

日本で暮らす外国人にとって、日本語や文化に慣れない中での子育ては悩みがつきないようです。役所やNPOにサポートを求めてきた親たちに、どんな悩みがあるのか聞いてみました。

まずは言葉。日本語の問題です。

  • 日本語ができないと、出産で大変だと思います。(ミャンマー出身ママ)
  • 子どもが病気になったとき、一人で病院に連れて行くのが少し難しいですね。記入するものがあると困ります。(フィリピン出身ママ)
  • 小学校に入るとき、いろいろわからないことがありました。書くことが多くて困りました。(バングラデシュ出身ママ)

育児のしかたでも迷うことが多いようです。

  • 日本だと毎日シャワーやお風呂に入れますよね。ネパールでは、風邪をひいてしまうので、お風呂は週に1~2回くらいで、毎日1~2回オイルマッサージをします。(ネパール出身ママ)
  • 離乳食は、お米、肉、野菜を一緒に煮込んだものを食べさせるのですが、日本の離乳食はとても細かいですね。ごはんやおかずを分けて赤ちゃんに食べさせてます。(ベトナム出身ママ)

続いて、教育の悩みです。

  • 子どもより親のほうが漢字をできないくらいなので、子どもが勉強で困っているところを手伝うときに困りますね。(インド出身ママ)
  • 外国人なのでいじめが心配です。日本人も外国人も同じ人間だから、仲よくしてほしいですね。(フィリピン出身ママ)

そして、こんな悩みも。

  • 日本だとまわりに親戚などがいなくて、子育てをするのがとても大変です。(ミャンマー出身ママ)

ここで、パラグアイ出身ママに、外国人の親たちの悩みについて話を聞きました。

パラグアイ出身ママ

私は、小さなころに母と妹と一緒に日本に来ました。当時、母はまったく日本語がわからず、言葉の問題、壁、文化の違いなどいろいろあり、そんな母の背中を見て育ってきました。簡単ではありませんでしたが、周りにいた優しい方々のサポートや助けがあり、今はこうしてママになりました。以前は、外国籍の方が少なかったのですが、今は増えつつあります。外国にルーツを持つ子どもたちも増えています。
私にも2人の子どもがいますが心配もあります。例えば、子どもたちは日本語しか話せません。今後は、スペイン語も取り入れて、いろんなものを見て、学んでほしいと思っています。食文化の違いもあります。家で出す料理と、友だちのところで出るものが違うので、友だちの家で「これなに?」となることもあります。


―― 外国人保護者の悩みは、多岐に渡っているのですね。

コメント:南野奈津子さん

例えば、園に持たす弁当はこんな感じでいいのか、連絡ノートに書かれたことはこんな意味だろうかなど、日々のちょっとしたことをわざわざ聞くことはできない。そのように悩みが積み重なってしまうことも多いのではないかと思います。

コメント:汐見稔幸さん

これから、このような悩みが日常化することを考えれば、方法もあると思います。例えば、実際に「こういうことがわからない」と質問された場合、次からは説明のためのイラストや写真をつくって対応する。そのように、親はわからないことを聞いて、園は丁寧に応答していくようなスタイルができれば、心のこもったサポートができていくと思います。

―― 違うことが当たり前な子どもに育ってほしいと思いますが、日本人ではないことで、相手を傷つけたり、悲しい思いをさせたりしないように、親としてできることはありますか?

回答:南野奈津子さん

子どもは、「見た目が違うね」といったことを、悪意がなくても感想として言ってしまうことがあります。それでも、言われたほうは「やっぱり自分が外国人だから」となってしまう。例えば、「あなたも、人と体の大きさが同じではないし、髪の感じも違う。得意なこと、得意じゃないことも違う。でも、それを含めてあなたのよさですごく好き。そんなふうに違いがあるところも好きになってあげたらいいと思うよ」といった話をするのもいいのかなと思います。

回答:汐見稔幸さん

もし私が親で、子どもが外国の方もいる園に通っているとしたら、金曜日の夜にでも、家にその家族を招待すると思います。一緒に食事しながら、親が「〇〇ちゃんはおもしろい子だね」「違う文化がなかなかいいな」など、本気で話をする。子どもはそのような態度を親から学ぶと思います。


外国人の子育てに、どんな支援があるの?

日本で子育てをしている外国人には、どのような支援があるでしょうか。いくつかの取り組みを紹介します。


こちらは、外国人の子育て支援を行なっているNPO法人「ホームスタート・二葉(東京都新宿区)」です。子育て経験者50人のボランティアスタッフが支援活動を行なっています。ここ数年、悩みを抱える外国人の訪問が増えているといいます。日本に来ていちばんに困るのは手続き。例えば、幼稚園・保育園に入るときのシステムがわからないという方がとても多いのです。

この日は、語学が堪能なボランティアスタッフと一緒に、フランス出身ママのお宅を訪ねました。来日4年目ですが、一緒に公園などに行ってくれる話し相手がほしかったそうです。友人のように寄り添いながら、育児の悩みを聞き、子育ての楽しさを伝えています。


こちらは、地域で外国人とつながりをつくる取り組みをしている任意団体「地球っ子グループ(埼玉県さいたま市)」です。この日は、4か国の外国人を含め、およそ30人が集まり、自然の中で交流を深めました。

散策のあと、みんなで楽しんだのは「クリスマス・リースづくり」です。こういった外国人と一緒に楽しむイベントを定期的に開催しています。

井上くみ子さん(地球っ子グループ)

外国人といっても、外国から通っているわけではなく、近所に住んでいる人たちです。その感覚を大事にしています。特別な何かをするのではなく、自然体で楽しく一緒にやっていきましょうと考えています。


こちらは豊島区と連携して、特に出産前後のケアサポートに力を入れているNPO法人「Mother's Tree Japan(東京都豊島区)」です。

7か国語に対応した出産に関する動画配信もしています。日本での出産の方法や妊娠届の書き方など、きめ細かい情報を伝えています。

出産のときに役立つ指さしボードは11の言語に対応。妊婦が伝えたいことを、イラストを指さすことで意思表示ができる便利なアイテムです。

毎月開催している母国語母親相談会では、さまざまな言語の通訳者と一緒に悩みごとを聞いています。外国人ママ同士がつながれる場所にもなっています。

地方からもオンラインで相談を受けています。「地域にどうつながっていいか」「日本人のママ友をつくりたいけどできない」「どう話しかけたらいいかわからない」といった相談がくる一方で、日本人の親からも「どう話しかけてサポートできるかわからない」という話があるといいます。


今回、「Mother's Tree Japan」の坪野谷知美さんとインドネシア出身ママに話を聞きました。

―― 日本人から、どのように接してもらえるとうれしいですか?

インドネシア出身ママ

話しかけてくれることがうれしいですね。声をかけてくれることで、気にしてもらえてることがわかるからです。例えばママ同士であれば、「娘さんは何組ですか?」といったふだんの会話でいいんです。本当に小さなことでコミュニケーションができたらと思います。

―― 外国人子育ての支援は、日本人の問題もあるのですか?

坪野谷知美さん(Mother's Tree Japan)

私は「外国人シャイ」と呼んでいます。「すごく助けてあげたい」と思っている方はたくさんいますが、自分からハードルを高くしがちなのです。特に英語、言葉に苦手意識があり、「日本語で大丈夫ですか?」と聞けばいいだけなのに、「何語かな? 英語なのかな? 英語だったら文法を間違わないかな?」と考えてしまう。「話しかけると迷惑にならないか」と考えてしまう国民性もあると思います。
外国人シャイなだけで、少し踏み出せば、同じ子育てをしてる親であり、自分たちが知らない知恵を持っている方たちです。そんな子育て仲間なんだと思うことができれば、すんなり入っていけると思います。それが子育てのシーンのおもしろさでもあり、多文化共生がしやすいと思います。


コメント:南野奈津子さん

私たちも、自分が外国で子どもを育てると想像すれば、「入園式はどうしたらいいの?」「どうやって病院に連れて行く?」と迷うに違いないとわかります。外国の方に「声をかけると失礼かな」と思うかもしれませんが、自分が同じ立場なら迷うはずといった気持ちで声をかけていくことも大事だと思います。

コメント:汐見稔幸さん

無視することはひどいいじめになります。一方で、「あなたに関心がありますよ」と伝えていくと人間関係ができます。「こんにちは」というあいさつだけでも、よろこんでくれると思います。あいさつに続く言葉がないと考えて、とまどわなくてもいいのです。例えば、目の前にあることをどんどん聞いていく。日本人は、そのような文化を身につけていくと、気楽に人間関係をつくることを学んでいけると思います。


私たちにできること

南野奈津子さん

多文化を尊重した子育て環境や社会づくりは、日本に来る方だけのためではありません。子どもや保護者が、より自分が大切にされたり、今の自分でいいのだと思えるような社会をつくることでもあるのです。日本の方も外国の方も、生きやすい社会につながっていくのではないかと思います。

汐見稔幸さん

子どものころにいろんな文化と触れ合うことが、その後の生き方に大きな影響を与えると、あらためて感じました。これから保育園・幼稚園・こども園に、たくさんの外国の子どもたちが来ることは、ある意味、私たちが国際人になっていく、地球市民になっていく訓練のチャンスだと思います。外国の方に「日本は住みやすい国だよね」と言ってもらえるような関係をつくることが、かえって自分たちのプラスになっていくと思います。

鈴木あきえさん(MC)

「外国人シャイ」という言葉を聞いて、自分も一歩踏み出してみようと思えました。親の姿を子どもも見ているはずなので、自分から変わっていきたいですね。どの国も子育ては大変で、通じる部分があると思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです