子育てサポート

すくすく子育て
2022年10月29日 放送

家族だけで子育てするのには限界があります。子育て支援センターがあってもなかなか行けない、親のサポートがないと働けないといった声も。子育てのサポートについて、専門家と一緒に考えます。

専門家:
大日向雅美(恵泉女学園大学 学長)
柴田悠(京都大学大学院 人間・環境学研究科 准教授)

しんどくても、子育てサポートを利用することに抵抗がある⋯

育児休業中で、2人の娘を育てています。パパは毎日仕事で、お世話はいつも1人です。限界だと感じるときもあります。子育てサポートに頼りたいときもありますが、今のところ絶対に必要な状況になったことがなくて、使ったことはありません。
育休で休んでいるのだから無理すれば家事・育児をひとりでできる、自分の時間を確保するために利用するのは甘えやぜいたく。そんなふうに感じます。周りで使っている人もあまりいないので、サポートは「使わないもの」という考えになっています。料理サービスなども、自分でやれば費用がかからないと思ってしまいます。しんどいと感じることもあるけど、サポートを利用することには抵抗があります。
(お子さん3歳・1歳のママ)

育児休業は親が休むためにあるもの

回答:大日向雅美さん

育児休業中、育児中だからこそ、親は甘えていいし、自分にぜいたくをしてほしいと思います。育児休業は、育児のためにあると考えているかもしれませんが、まずはママが休むためにあります。母体の回復のために休む産休の延長なのです。子育てが初めてのときは不慣れで、2人目のときでも子どもの個性が違うので余裕がなくなってしまいます。パパも同じです。新しい家族が増えて、忙しくて落ち着きがないときにパパも休む。第一に親が休むための時間をもらっていると考えてください。ぜいたくではありません。
リフレッシュできて体力が戻ってきたら、笑顔で子どもに接することができると思います。費用がかかっても、必要経費です。育児休業の理解を、そのように変えてほしいと思います。

親が心に余裕を持って接するのが、子どもの発達にもいい

回答:柴田悠さん

子育てサポートには、いろいろな支援がありますが、まず重要になるのは、一時保育・一時預かりです。保育園・認定こども園・幼稚園などで、日中に一時的、または1日預かってもらえる支援です。基本的に有料ですが、多くの自治体で取り組まれて、いろんな園で受け入れてもらえます。
大事なのは、リフレッシュのために利用してもいいことです。親が心に余裕を持って子どもと接するのが、子どもの発達にもいいのです。そのために、親がきちんと休まなくてはいけません。例えば、寝たり、美容院に行ったり、買い物したりすることも必要なのです。


誰かに頼りたいけど、頼ることすら難しい⋯ どうすればいい?

3人の息子を育てています。夫は朝から夜まで働いているので平日はほとんど1人で育児です。ずっと子どもたちの面倒をみていると、ふとつらく感じることがあります。体調が悪いとき、子どものケンカが多いときなど、だんだん怒りが込み上げてきます。
1年前に夫の転勤で引っ越してきて、子育て支援センターなどがあるのは知っていますが、3人を連れて行くのが大変で、詳細を調べる気力もありません。お金をかければよいのかもしれませんが、3人を預ける場所まで行くのも重労働で、それなら家でみていたほうがいいかも、と思ってしまいます。誰かに頼りたいけど、頼ることすら難しいと感じます。どうすればいいでしょうか。
(お子さん4歳・2歳・5か月のママ)

必要な支援を届けることにはまだ課題がある

回答:大日向雅美さん

本当に大変のひとことですよね。今、政府も自治体も、本格的に子育て支援を行うことの必要性はよくわかってきて、いろいろなメニューをそろえつつあります。一方で、必要な支援をカスタマイズして届けることについては、まだ道遠いようです。
例えば、私が代表理事を務めているNPOでは、「訪問型」の支援活動を行っています。子育て支援員が必要に応じて家を訪ねるわけです。困っているレベルもいろいろで、少し助けてもらえば楽になる程度から、親が心を病んでしまっていることもあります。場合によっては、児童相談所との連携を含んでいるケースもあるのです。
ただ、これはまだ「点」のような事例で、このような支援を「面」のように広げていかなくてはいけない。そのことを、番組を通して訴えたいと思います。

ファミリーサポートセンターの支援は比較的に自由度が高い

回答:柴田悠さん

3人の子どもを連れて外出するとき、両手で1人ずつ手をつないでも、もう1人はつなげません。非常に危ないですよね。ファミリーサポートセンター(ファミサポ)のような支援を受けるのもひとつの方法です。
ファミリーサポートセンターは、地域の支援で、現在全国で800程度の自治体にあります。そこには、子育て経験がある地域の方たちが助けてくれるサービスもあります。例えば、買い物を手伝ってもらえたり、保育園の送り迎えをお願いしたり、一時的に子どもを預かってもらうこともできます。比較的に自由度が高いサービスだと思います。

0歳児を見守り訪問する取り組みもある

回答:柴田悠さん

自治体によっては、子どもが生まれてから定期的に自宅を訪問して、子育て家族を見守る「子育て支援員」という取り組みがあります。例えば、兵庫県明石市の「おむつ定期便」は、子育て経験のある支援員が毎月自宅を訪問して、おむつを無料で届けます。そのとき、支援員がいろいろな話を聞き、困っていることがあれば行政につないでくれます。このような取り組みが、全国に広まってほしいと思います。


親のサポートがなければ働けない⋯ 気持ちが複雑

2歳の息子を育てています。夫婦共働きで、2人とも朝早く家を出ないといけません。保育園に預けられる時間はそれより遅いので、子どもの食事や着替えなどを親に頼っています。夕方6時に保育園にお迎え。それから帰宅して、休む暇なく子どものごはんを作ります。自分は食べる気になりません。親が心配して夕飯時にも来てくれることがあります。親はいつも子どものことを気にかけてくれるけど、このまま頼っていていいのか不安です。
(お子さん2歳のママ)

保育士として働いています。子どもを預けている保育園には延長保育がありますが、できるだけ子どもたちが家族と過ごす時間を優先したくて、午後4時のお迎えを母に頼んでいます。親のサポートは不可欠です。でも、親にはバスで片道40分ほどかけて来てもらっています。親のサポートがなければ働けず、ありがたい気持ちと申し訳ない気持ちが入り混じって複雑です。
(お子さん5歳・2歳のママ)

親に「申し訳ない」という気持ちを感じさせない仕組み作りが必要

回答:大日向雅美さん

「ありがたい気持ち」は感謝ですね。身近に子育てを手伝ってくれる人がいるのはありがたいことで、無理のない範囲で助けてもらっていいと思います。
一方で「申し訳ない気持ち」を感じるのは、どこかに無理があるためです。祖父母にも、祖父母の人生や生活があります。予定があっても、孫のために時間を使ってくれているのかもしれません。あるいは体力が落ちているかもしれない。それがわかるから、申し訳ないという気持ちになる。
でも、これを個人的な気持ちとして考えてはいけません。社会が、いろんな仕事で働いてるママ・パパたちに「申し訳ない」と思わせないような、仕組み作りが必要だと思います。

子どもを誰かに長時間預けると、何か影響がありますか?

長時間保育の悪影響はない。家での親子の関わりが重要

回答:柴田悠さん

最近、日本でも研究結果が出てきています。例えば、2010年・2012年に発表された論文によると、長時間保育と通常保育の子どもたちを追跡調査したところ、発達や健康に悪影響はみられないという結果が出ています。保育の時間そのものが問題ではありません。家での親子の関わりが重要になります。
もちろん、保育の質も重要ですが、その点については各自治体・国の制度で整えられています。あとは長時間保育のあと、子どもと接する家での時間や土日祝日の時間を、いかに親が余裕を持って過ごせるか、しっかり関わることができるかが大事になります。

「ごめんね」ではない言葉で伝える

回答:大日向雅美さん

私が子育てしているとき、ときどき「遅くなってごめんね」と言ってしまうことがありました。「ごめんね」という気持ちがあっても、「こういう仕事ができたよ」といった言葉のほうがいいように思います。親は、遊んでいて遅くなったわけではないですよね。「こういう仕事ができて、こんなふうに喜んでもらえたよ。保育園でよくがんばったね」と伝えていると、子どもは「大丈夫だよ。楽しかったもん。がんばれたよ」となっていく。何気ない会話でも、子どもの心を強くすることができると思います。

今の園で働くまでに、10回ほど採用面接に落ちてきました。いつも「子どもが体調悪いときはどうするのですか?」と聞かれました。その考えがわからないわけではないのですが、だんだん「子どもがいたら働けないのか」と思えてきました。そんなときに、奇跡的に今の園に出会えました。面接で、そのことを聞かれなかったのははじめてでした。
(お子さん5歳・2歳のママ)

保育士の働く環境を整えていくことが重要

コメント:柴田悠さん

保育士の仕事はとても大変だと思います。働きながら子育てする人をサポートするので、長時間労働になりやすい。例えば、働いている親が迎えにきて、子どもたちが帰ったあとに、仕事を終えられるので、夜も遅くなりやすいでしょう。働く人たちをサポートする保育士の働く環境をきちんと整えていくかが、社会全体のためにはとても重要だと思います。


新たな子育てサポート

今、新たな子育てサポートが広がりをみせています。東京都板橋区にある認可保育園では、定額でおむつが届くサービス「おむつのサブスクリプション(サブスク)」を2022年4月から導入し、親をサポートしています。

おむつのサブスクを運営する会社から、定期的におむつとおしりふきが園に届き、使い放題なのです。
サービスの利用は、各家庭で選択することができます。利用者からは「荷物が少なくなる」「着替えだけ持って行けばいいから、気持ちが楽」といった声が聞けました。

この園の園長によると、少しでも親子で過ごす時間をつくってほしい、絵本を読んだり、会話が少しでも増えたらいいなという思いで導入したそうです。


楽をするのは、親の心に余裕を持たせ、子どもとしっかり関わるため

コメント:柴田悠さん

楽ができるところで楽をするのは、親の心に余裕を持たせて、子どもとしっかり関わるためです。「楽をしていいのか」「愛情がないと思われないか」と、罪悪感を持つことがあるかもしれませんが、親子で幸せな子育ての瞬間を増やしていくことが、本当に子どものためになるでしょう。そのために、一時保育、おむつのサブスクなどのいろいろな子育て支援を、使える範囲でどんどん使ってみてください。子どもとの接し方の改善や余裕につながるのであれば、あえて使ったほうがよいのではないかと思います。

「子育ては楽をしてはいけない」という発想を変える

コメント:大日向雅美さん

楽をするのは大事なことです。楽は「楽しみ」という字にもなります。私たち大人は、日常生活で快適な道具を使うことは、みんながすすめています。でも、子育てに関してだけは「楽をしてはいけない」「甘えてはいけない」といった考えがある。その発想が変わるようにしていきたいと思います。

子育てサポートは、日本の社会全体の問題

コメント:大日向雅美さん

今回、いろいろな子育てのサポートについて考えてきて思ったのは、「子育てサポートは、ママ・パパのためだけではない」ということです。親を助けることも大事ですが、行政がどのように若い世代・子育て世代に希望を持たせる支援ができるかを含めると、親だけではなく、日本の社会全体の問題だと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです