ちゃんと伝わる声かけって?

すくすく子育て
2022年9月3日 放送

子どもに何度、声をかけても聞いてくれない。繰り返し言っても、わかっているのか怪しい。どんな言葉なら子どもに伝わるのか、叱るときはどう言えばいいのか、声かけの悩みについて専門家と一緒に考えます。

専門家:
倉石哲也(武庫川女子大学 教授/臨床福祉学)
岩井久美子(まちの保育園 前園長/保育環境アドバイザー)

話を聞いてくれない子に、どう声かけしたらいい?

長女(2歳)は何かに集中すると、何度声をかけても振り向いてくれません。例えば、保育園の準備のとき、おままごとに夢中になって、なかなか話を聞いてくれません。「着替えようね」「遅れちゃうよ」「保育園から帰ってからいっぱい遊べるよ」など、いろんな言い方をしますが反応がないんです。「保育園で水遊びするんじゃない?」と聞いたところ、やっと振り向いてくれました。いつも、いろいろと試していますが、まだ声かけの決め手がわかりません。子どもが反応してくれないとき、どう声かけしたらいいでしょうか?
(お子さん2歳8か月・7か月のママ・パパ)

楽しいイメージが湧く具体的な声かけを

回答:岩井久美子さん

子どもも意志を持った一人の人間なので、いろいろな思いがあり、簡単に大人の思い通りにはならないですよね。
「楽しい〇〇があるよ」のように、具体的な声かけをしてみましょう。映像を見ると、「水遊びがあるよ」と言ったときのお子さんの表情がかがやいていましたね。お子さんの中で、楽しいイメージができるわけです。「早くしなさい」だけでは、何を早くするのか、どうして早くしないといけないのか、その意味が伝わりません。子どもに楽しいイメージが湧くような声かけを心がければ、大丈夫だと思います。

子どもが自立しはじめている

回答:倉石哲也さん

子どもが言うことを聞かなくなるのは、自分の世界をつくり、自立しはじめているときです。言うことを聞かないと、親は目くじらを立ててしまうかもしれませんが、子どもの自立という考え方も持つほうがよいでしょう。

もともと、集中するとなかなか振り向いてくれない子でしたが、下の子が生まれて赤ちゃん返りがあり、イヤイヤ期になり、さらに振り向いてくれなくなりました。

上の子どもと遊ぶ時間を持つ

回答:倉石哲也さん

下の子が生まれてから、お子さんと遊ぶ機会が減っているのかもしれませんね。それで、何度も声かけしてほしいと思っているのかもしれません。親がもう少しお子さんと関わる時間を持てば、「お母さんが私と遊んでくれた」とうれしい気持ちになり、満足するかもしれません。

子どもの世界に入って一緒に遊んでから声をかける

回答:倉石哲也さん

例えば大人でも、集中して音楽を聴いたり映画を見ていたりするとき、誰かに声をかけられても、はっきりしない返事をするときがありますよね。子どもも同じです。
子どもが自分の世界に入って遊んでいるときは、世界の外から声をかけても聞こえません。大人が子どもの世界に入って、少し一緒に遊んでみましょう。それから切り替えて声かけするのもひとつの方法です。


子どもに否定的な声かけをしてしまう⋯

息子に何かを言うと、よく「なんで?」と返してきます。やりたくないことや、気に入らないことなのかもしれません。例えば、外で遊んでいるとき「家に帰るよ」と言うと「なんで?」、「夜ごはん食べないとだよ」と言っても「なんで?」。そのつど理由を説明しますが、「なんで?」が続くと余裕がなくなり、「帰らないとごはんを食べる時間がなくなるよ。遊べなくなるよ」と脅すような、否定的なことを言ってしまいます。そんな言い方は、子どもにとって逆効果なのかもしれませんが、どうすればいいでしょうか。
(お子さん1歳9か月のパパ・ママ)

「なんで?」で親との対話を楽しむことも

回答:岩井久美子さん

お子さんの「なんで?」は、とてもかわいいですね。おそらく「自分が『なんで?』と言うと、必ず何か返してくれる」と思って、パパ・ママとの対話を楽しんでいるのかもしれません。

子どもに考える間を与えるような声かけを

回答:岩井久美子さん

1歳9か月のころは、自我が目覚めてきて、自己主張が出てくる時期です。大人に決めてほしくないのかもしれません。大人の考えを押しつけるのではなく、子どもの気持ちを受け止めながら「自分で決めたかったんだね」「じゃあ、どうしたい?」のように、少し子どもが考える間をつくってみてください。大人が待つことも大事です。

交換条件のような声かけは避ける

回答:倉石哲也さん

「これをすると、こうなる」のように、子どもに物事の因果関係を伝えるのは、悪いことではありません。ただし、交換条件のような声かけは、やめたほうがよいでしょう。例えば、「〇〇しないと、おやつはなし」のように、条件しだいで、好きな物を取りあげたり、与えたりするものです。
年長から小学校くらいになると、自分が楽しいと感じたことをどんどん頑張りはじめます。そこで交換条件を出されていると、「楽しいから頑張る」より「おもちゃを買ってもらえるから頑張る」と考えてしまいます。このように、自分の外に頑張る原因をつくるような声かけも避けましょう。

おむつを替えさせてくれないときに、よく「おむつを替えないと遊ばないよ」と言ってしまいます。どう声かけしたらいいですか?

言い換えたり、親の気持ちを伝える

回答:倉石哲也さん

それでも大丈夫だと思いますが、「おむつを替えてから楽しく遊ぼう」といった言い換えもできると思います。また、「お母さん、おむつ替えて欲しいの」と、親の気持ちを伝えるのもいいでしょう。
それでも嫌がって走り回るようであれば、親も一緒に遊んでみてください。そのあとで「疲れたね。そろそろおむつを替えようか」と言ってみましょう。いったん子どもの世界に入ることで、切り替えができるようになると思います。

余裕がないときは、親の思いを素直に伝える

回答:岩井久美子さん

親にも感情があり、困るときもあります。そのときの思いを、子どもに伝えてもいい。「〇〇したら、ママは困っちゃうんだよ」「だから、□□してくれるとうれしいな」と声をかけてみましょう。喜怒哀楽は素直に伝えていいと思います。


叱るときの声かけは、どうすればいい?

夫婦共働きで、3人の子どもを育てています。叱るときの声かけが、子どもの自尊心を傷つけていないか心配です。例えば、長女を叱るときに「小学生なのに、そんなことしていいの?」と言ったり、長男に「お姉ちゃんはできているのに」と言ったり、「自分はだめ」と思わせていないか気になっています。叱ると、子どもはしゅんとして、泣いてしまうこともあります。余裕がなくて焦っているときは、つい感情的な言葉を使ってしまいます。叱るときに、子どもが自信をなくしてしまわないような声かけができればと思っています。
(お子さん6歳・3歳6か月・1歳6か月のママ)

言い過ぎたと思ったら、子どもに謝って仲直りを

回答:岩井久美子さん

親の大変さはとてもわかります。疲れているときや叱るときに、むきになってしまうのはしかたがありませんし、あってもいいと思います。ただ、言い過ぎたと思ったら、お互いの気持ちが落ち着いてきたころに、向き合って「さっきはごめんね。ママはこう思っていたんだよ」と、子どもに気持ちを伝えながら謝って、仲直りしましょう。

子どもにとって理不尽な声かけは避ける

回答:倉石哲也さん

子どもにとって、「小学生なのに」と言われても、それは子ども自身が決めたことではありません。「男の子だから」「女の子だから」「お姉ちゃんだから」「お兄ちゃんだから」といったことも同じです。そう言われても理不尽なことで、「好きでそんなことになったわけじゃない」というような思いや不満を持つと思います。言ってしまいがちですが、そのような声かけは避けたほうがよいでしょう。

叱るときのポイントや、気をつけることはありますか?

主語を明確にした声かけは、子どもの「共感する力」を育てる

回答:倉石哲也さん

例えば「お母さんは、あなたに〇〇してほしい」のように、「お父さんは」「お母さんは」と主語を明確にしたほうがいいでしょう。子どもは2~3歳ぐらいになると、相手の気持ちを考える・共感する力が育ってきます。「相手はこう思っているようだ。じゃあ自分はそうしたほうがいいんだな」と、相手に合わせることができるようになるのです。そのような力を育てるためにも、大事な場面では主語をつけてコミュニケーションしてみましょう。

親の思いを伝えることで、子どもの価値観や思考を偏らせてしまうことはないでしょうか。親の考えに沿って生きてしまわないか心配です。

子どもが自己主張しはじめる時期は来る

回答:倉石哲也さん

子どもは成長してくると勝手に親を否定しはじめます。反抗期という人もいますが、「お母さんは〇〇と言うけど、学校の先生は違う」など、自己主張しはじめる時期が来るのです。そこで、親が「〇〇だからダメ」と言うと、言葉に強制力があって、余計に反発したくなるかもしれません。
そんな時期を会話で乗り切るためには、親の気持ちを押しつけるのではなく、会話を通して考えを伝えることが大事です。例えば「友達の家では違うかもしれないけど、お母さんはこう思う」のように、きちんと思いを伝えて、子どもとのやり取りを発展させましょう。そうすることで、子どもはいろいろな考え方を受け止めるようになると思います。

子どもを叱るとき、夫婦2人で叱るより、ひとりが叱って、ひとりはやさしく寄り添うなど、夫婦で役割を変えたほうがいいでしょうか?

ひとりが感情的に怒っているときは、もうひとりが子どもを受け止める

回答:岩井久美子さん

親が2人で子どもを責めてしまったら、子どもが冷静に考えるための逃げ場がなくなってしまいます。例えば、ママが叱っているときは、パパが子どもの気持ちを受け止めてあげる。そこで、「どうしてママが怒っているのかな」と、一緒に考える機会にできるといいですね。
もちろん、場面に応じてポジションが逆になってもいい。あらかじめ夫婦で「子どもを叱るときは、もうひとりが受け止める」といった話をしておくといいですね。子どもは親の話をよく聞いているので、子どもが寝た後などに、夫婦で話す時間を持つといいかもしれません。

子どもに絶対に言ってはいけない声かけはありますか?

子どもの存在を否定するような声かけはしない

回答:倉石哲也さん

絶対に言ってはいけない言葉ほど言ってしまいがちで難しいですよね。例えば「あなたなんて、いなければいい」「うちの子じゃなかったらよかった」といった言葉は、子どもを傷つけてしまいます。子どもは、親が自分のことをどう見てくれているかを、朝起きてから夜寝るまで神経を張り巡らせているのです。子どもの存在を否定するようなことは言わないようにしましょう。

言ってしまったときは、落ち着いたときにフォローする

回答:倉石哲也さん

言ってはいけない言葉を言ってしまったときは、気持ちが少し落ち着いたときにフォローしてみてください。例えば、一緒にお風呂に入るときや、夜寝る前などは、子どもの気持ちも落ち着いてきます。そんなときに、「ああいうふうに言ってしまったけど、ごめんね」「お母さんはこう思ったのよ」と、ゆっくり話をすれば、子どもに言葉が入っていきやすいと思います。


乳幼児期の子どもへの声かけのポイント

子どもと向き合う時間が増えると、声のかけ方が変わる

倉石哲也さん

コミュニケーションは言葉だけではありません。表情やしぐさ、声のトーンなどもあります。乳幼児が理解しやすいのは、言葉よりも、そのような「非言語コミュニケーション」なのです。
私のお勧めは、1日に5~10分でもいいので、子どもと2人だけの時間をつくることです。そのとき、禁止・指示はせず、子どもがしたい遊びをする、子どもに合わせることをルールにしましょう。子どもの遊びをうしろから追いかけたり、子どもが興味を持ったことを一緒にしてみたり。そうしているうちに、「こんなことができるようになった」「そんなことに関心を持っている」と気づきます。
向き合う時間が増えると、声のかけ方が変わってきます。きょうだいがいるなら、それぞれとの時間を意識していけば、それぞれでどんな声かけがいいのかだんだんとわかってくるようになります。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです