どうする? 子どもの性教育

すくすく子育て
2022年7月30日 放送

今回のテーマは幼児期の「性教育」。子どもの性の疑問にどう答える? 性器を触るなどの困った行動はどうする? 男の子らしさ・女の子らしさをどう考えたらいい? そんな性やジェンダーについて子どもにどう伝えるのか、専門家と一緒に考えます。

専門家:
岩室紳也(泌尿器科医)
北山ひと美(和光小学校・和光幼稚園 校園長)

「性」について、子どもにどう教えたらいい?

この春、幼稚園に入園した娘が、ある日「男の子と女の子のトイレはどうして別なの?」と聞いてきました。「男の子が一緒だと恥ずかしいよね」と答えましたが、娘は「女の子でも恥ずかしい」と言います。いざ教えるとなると、何をどう伝えればよいのかわからず、うまく答えられません。
好奇心旺盛な子で、それからも性器や生理のことをいろいろ聞きたがります。「性」について、子どもにどう教えたらいいのでしょうか?
(お子さん3歳のママ)

自分の体が大事なこと、男女や大人と子どもの体の違いを伝える

回答:北山ひと美さん

性教育は生殖の話だけではありません。幼児期の性教育では「自分の体がとても大事なこと」「男の子と女の子の体の違い」「大人と子どもの体の違い」がポイントになります。特に小さなころは、「自分の体が大事であること」が基本になります。自分の体が大事だとわかれば、相手の体も大事だとわかります。その上で、どんな関係をつくっていくのか、そのものが大きな性教育だと思います。

世の中のルールを伝えることも大切

回答:北山ひと美さん

体のことを伝える一方で、「裸になってはいけない場所がある」など、世の中のルールを伝えることも大切です。

何歳から性教育するのがよいでしょうか?

聞かれたときがチャンス。ごまかす・うそをつくことはしない

回答:北山ひと美さん

性教育を始める適年齢はありません。子どもによって違います。まずは、子どもが「性」について聞いてきたときが話すチャンスです。そのとき子どもがわかりそうなところまで伝えていきましょう。
伝えるときは、ごまかす・うそをつくことはしないでください。その後「ママが言ったことはうそだったの?」となるのはよくありません。わからない場合は、「調べてから話すね」と言っておくのもいいでしょう。ほかにも、「性」を扱った絵本は小さい子どもにも理解しやすいので、力を借りてみるのもいいですね。

自分の性の知識が正しいのか自信がないときがあります。伝え方のポイントはありますか?

対話の中から学んでいくことも重要

回答:岩室紳也さん

伝えられる人が伝える。できる人が、できることを、できるときにやることが基本です。伝えることにためらいがあっても大丈夫です。例えば、私の両親は性のことを一切口にしませんでしたが、それもまた「性」なのです。お子さんにトイレのことを聞かれたときに、「一緒だと恥ずかしいよね」「女の子同士でも恥ずかしい」と話していましたが、すばらしいことだと思います。正解を教えるのではなく、「家では一人で入るよね」「幼稚園だとトイレに行くところを見られても恥ずかしいね」というように、対話をしながら一緒に考えていく・学んでいくことがとても重要なのです。ことばに詰まる自分がいてもいいし、ほかの誰かに伝えてもらうことも大事です。性器の違いなど、段階を追って話す内容をレベルアップしていきましょう。

性教育では「恥ずかしい」という感覚も大事

回答:岩室紳也さん

性教育では、「恥ずかしい」という感覚がとても大事だと思います。恥ずかしさがブレーキになることがたくさんあるのではないでしょうか。「外では恥ずかしい」と感じる経験は、社会性を学ぶことにもつながります。


プライベートゾーンをどう教えたらいい?

男の子と女の子のふたごを育てています。プライベートゾーンなどの男女の体の違いを、早めに教えていきたいと思っています。伝え方にポイントはありますか?
(お子さん10か月のふたごのママ)

自分だけが見たり触ったりしてもいい、特に大事にしたいところ

回答:北山ひと美さん

以前は、「水着で隠れるところがプライベートゾーン」と言っていました。最近では、口や男の子の胸も含めて、「プライベートパーツ」という言葉を使っています。プライベートパーツとは、「性器・おしり・胸・口」のことで、男の子も女の子も同じです。子どもにはとてもわかりやすいところだと思います。
自分の体は全て自分のもので大事、その中でもプライベートパーツは特に大事にしたいところで、自分だけが見たり触ったりしてもいいところだと伝えています。口は見えるところですが、自分だけが触ってもいい部分ですね。

親は、子どもの肌のケアなどでプライベートパーツに触れることがありますが、どう考えればいいですか?

親も子どものプライベートパーツを大事にしていることを伝える

回答:北山ひと美さん

当然、子どものケアのときに触れることがありますね。でも、「自分以外には触れさせない」には親も含まれます。ケアのときは「そこ(プライベートパーツ)はあなただけのものだよ」というメッセージを伝えましょう。性虐待のケースまで想定すると、しっかり伝えることが大事です。
例えばお風呂のとき、性器の部分や胸を「自分で洗ってごらん」と声をかけてみる。あとで親がきれいに仕上げてあげるけど、「まずは自分で洗う」というメッセージを伝えるのです。


子どもの困った性の行動⋯ どう声かけすればいい?

長男(4歳)の性に関する行動が気になっています。例えば、おしりに薬を塗るときに、必要以上に私の目の前におしりを向けます。さらに心配なのが、よくズボンに手を入れて性器を触っていることです。最初は「どうして手を入れるの? 触らないよ」と声をかけますが、やめないので、だんだん強い口調になってしまいます。触ると落ち着くのか、気持ちがいいのかわかりませんが、どう声をかければいいのでしょうか?
(お子さん4歳・0歳のママ)

性器を触る・見せるなどの行為は人前でしないと教える

回答:北山ひと美さん

おそらく、自分の体を触ってみたら気持ちよかった・落ち着くといった感覚なのでしょう。それは、思春期以降の自慰行為とは違います。とはいえ、「人前ではしない」と教えることが大事です。また、行為自体が悪いわけではないので、悪いことであるようなメッセージは伝えないほうがいいでしょう。

かゆくて触っている場合も

回答:岩室紳也さん

性器を触るひとつの理由は、距離的に触りやすく安心するからでしょう。でも、もしかすると、かゆいのが理由かもしれません。男の子の性器は、皮をかぶった包茎という状態で、清潔にできていないと、かゆくなる場合もあるのです。ひどくなると炎症を起こして、うみが出て、痛くなることもあります。「どうして?」と聞くときに、「かゆいの?」とも聞いておきましょう。

子どもの性器のケアは、どうすればいいですか?

男の子の性器をケアするときは皮をむいて清潔にする

回答:岩室紳也さん

男の子の性器は、皮をかぶった状態です。皮は内側で折り返していて、皮膚なのであかも出ます。そこにばい菌が入れば不潔になります。炎症を予防する意味では、ケアをするときに皮をむいてきれいにしてあげたほうがいいかと思います。

全部むかなくても、きれいにすることが大事だと伝える

回答:岩室紳也さん

皮をむくのを痛がるときは、かゆみや炎症が全く起こっていなければ、放っておくのも1つの選択肢です。皮を全部むかなくても、むいてきれいにすることが大事だと伝えておけば、徐々に本人が学習してくれると思います。性器の皮も皮膚なので、少しずつむいていけば伸びていきます。

女の子の場合に気をつけることはありますか?

女の子の性器は、外性器がきれいに洗い流せているか確認を

回答:岩室紳也さん

性器には外性器と内性器があります。女の子の外性器は、外の皮膚のところです。あかが出るので、きれいにしてあげましょう。石けんで洗うとき、ひだの部分に石けんが残ってかぶれてしまうことがあります。きれいに流されているか、よく確認してください。
特に女の子の内性器には自浄作用があり、中から体を清潔にする機能が働いています。その部分は触らないほうがよいでしょう。


「男の子らしさ・女の子らしさ」親はどのぐらい意識すればいいの?

3人の女の子を育てています。長女(3歳)と次女(2歳)は洋服が大好きです。でも、最近になって私が選んだ服を「着たくない」と言うようになりました。私はかわいらしい服を選ぶことが多く、女の子らしさを求めていたのかもしれません。娘が選ぶのは、もっとカジュアルな服でした。
また、娘たちは車のおもちゃで遊んだり、電車を見るのが好きですが、「女の子なのに好きなんだね」と言ってよいものか、いろいろ考えてしまいストレスを感じるようになりました。私の世代では、男らしさ・女らしさが明確だったので、今後どのぐらい意識すればいいのか悩みます。
(お子さん3人のママ)

子どもたちが積み重ねる経験を否定しない

回答:岩室紳也さん

例えば、自分のパートナーはどんな人がいいのか、異性か同姓か、何に興味があるのか。それは人によって違い、その人自身が個性として生きていくには、ほかの人と比較できません。
子どもたちも、自分がどう生きたいか、どんな性的指向を持っているのか、どういう社会的役割を担うのか、そのような経験を徐々に積み重ねている過程なのです。それを否定するのではなく、自分や他人の性ときちんと向き合えるような社会を少しずつつくっていくことが大事だと思います。

性教育で、ジェンダーについてどのように考えていますか?

子どもの好きなものを認めることは子どもの自信につながる

回答:北山ひと美さん

ジェンダーは、子どもに改めて教えることではありません。時代や地域、まわりの環境により、自分の好みや、男らしさ・女らしさということが、日常生活の中で何かしらの影響を受けて、刷り込まれていくものです。
その中で、大好きなママ・パパが「いいよ」と認めてくれるかどうかは、とても大きなことです。子ども自身が、「これでいいんだ」と自信を持つことにつながります。そのようにジェンダーというものを考えてみてはどうでしょうか。


幼児期の性教育についてのメッセージ

やりたくないことに「ノー」と言えるように

北山ひと美さん

私が何より大事だと思っているのは、自分がやりたくないことはやらなくていい、きちんと「ノー(No)」が言えるように、小さなうちから育んでいくことです。
最近、性教育では「同意」と「境界」という言葉をよく使うようになりました。相手としっかり同意があること、自分自身の体の境界がわかること。それらを、子どもたちに伝えることを大事にしています。そのためには、大人がしっかりとわかっていくことも大切です。

失敗や意見の違いなどを「お互いさま」の感覚で共有する

岩室紳也さん

「信頼」「つながり」「お互いさま」という3つのキーワードがあります。この3つがそろった生活ができていれば、心も健康的です。そのつながりをつくるひとつの手段が「性」なのです。性教育で何かを教えて、それを守らせるのではなく、「失敗もある」「意見の違いもある」という部分を、「お互いさま」の感覚で共有できるといいですね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです