子どもの友だち関係
2022年7月23日 放送
友だちとうまく遊べない、友だちに「イヤ」と言えない、仲間はずれにされてしまうなど、今回は「子どもの友だち関係」について、専門家と一緒に考えていきます。
渡邊暢子(元保育士)
川田学(北海道大学大学院 准教授)
友だちをつくれない、どうすればいい?
今回、番組でアンケートを行ったところ、いちばん多かった悩みが「友だちをつくれない」でした。2~3歳の子どもを育てるパパ・ママたちから、「公園でほかの子がくると、私のそばから離れない」「友だちが話しかけてきても、返事できない」「ほかの子がそばにくると、おもちゃを取られると思って手が出てしまう」といった声が寄せられています。こんなとき、親はどうすればいいのでしょうか?
2~3歳は、友だちと仲よく遊ぶ時期ではない
回答:川田学さん
2~3歳といえば、幼稚園に入る前ぐらいですね。この時期は、まだ友だちと熱心に遊ぶことはあまりありません。すぐにほかの子と関わって遊ぶのは、ハードルが高いと思います。
ゆっくり相手の様子をよく見る時間をつくる
回答:川田学さん
ほかの子と関わることが難しいときは、子どもがゆっくり相手の様子をよく見る時間をつくってみてください。一緒に様子を見ながら、「あの子は何をしているのかな、砂を掘っているね」のように、友だちの行動を言葉にして、実況中継してみましょう。友だちとの距離が少しずつ縮まって、関わりを持つきっかけになる場合もあります。もし友だちのところに行くときは、「一緒に行ってみる?」と声をかけてみてください。
大人同士のやりとりで安心することも
回答:渡邊暢子さん
子どもに友だちと仲よく遊んでほしいと思うのは、親心として大切かと思います。そこで、親同士・大人同士が仲よく会話したり、楽しそうにやりとりすることも大事です。子どもは、その様子を見て、安心感を持つようになり、何かの機会があったときに、友だちにおそるおそる接することなく関わって、仲よくできるかもしれません。少し気長に見ていてもいいのではないかと思います。
何歳から友だちと遊ぶようになる?
2~3歳のころは、必ずしも友だちと遊びたがる時期ではありません。では、何歳ごろから友だちと遊ぶようになるのでしょうか。幼稚園に入る子を想定して、友だちとの関係の変化について、川田学さんに聞きました。
解説:川田学さん
入園前から、年少、年中、年長にかけての友だちとの関係の変化をみていきましょう。
入園前は、ひとり遊び・平行遊びの時期
入園前は、まだひとり遊びが楽しい時期です。友だちと一緒に遊ぶことはせず、同じような遊びを並んで行う「平行遊び」で刺激を受け合っています。例えば、砂場で遊んでいる子がいると、横で同じような砂遊びをひとりでします。
年少は、友だちとのトラブルが多くなる。波長が合うことも
個人差はありますが、年少のころは、まだお互いの気持ちはわからず、マイペースでいたい時期です。友だちとのトラブルが起きるようにもなります。例えば、使っていたシャベルを置いていたら、ほかの子に持って行かれて、取り合いになる。でも、トラブルが起きるのは、友だちとの関わりができているからです。一方で、友だちと波長が合うと、笑いながら盛り上がることもあります。そのような両面がある時期です。
年中は、人の気持がわかるようになる。葛藤もうまれる
年中になると、人への理解が深まります。以前なら気にならなかったような、友だちの気持ちや視線などが気になったり、励みになったりします。お互いに気持ちがわかってくるため、「みんなで〇〇のようにやってみよう」といったイメージの共有がみられ、そのような遊びも出てきます。一方で、友だちを気にして行動をためらうなど、葛藤がうまれてきます。
年長は、友だち同士の協力関係が出てくる。ことばのトラブルも
年長の時期は、友だち同士で協力関係をつくって、役割分担するといった成長がみられます。例えば、何人かで協力しながら、積木のようなものを天井に届くぐらいに積み上げることもあります。
そして、ことばが達者になる時期でもあります。例えば、泣いている子がいると、その子の代わりに、何があったかを先生に説明する。一方で、相手を傷つけたり、約束を破ることもある。そのような新しい形のトラブルが出てきます。
友だちとうまく遊べない子に、何かしたほうがいい?
息子は、絵を描いたり、公園で砂遊びをしたり、ひとり遊びが大好きです。でも、お友だちとは、うまく遊べていない、溶け込めていないようで気になっています。例えば、5~6人で追いかけっこしていても、ひとりだけ別の行動をしています。本人は、ほかの子を意識しながらも、あまり気にせず、楽しそうにしているので、親としてどう受け止めたらよいのか迷います。お友だちとの遊び方を教えたほうがよいのか、見守っていたほうがよいのか悩みます。
(お子さん4歳4か月のママ・パパ)
好きな遊びを通じて友だちができる
回答:渡邊暢子さん
映像を見る限りでは、友だちと接してはいるけど、関わり方にとまどいがあるようでした。
年齢的には、友だちと遊びたいと思う子と、自分の興味のあることをやりたいと思う子がいる時期です。お子さんは、絵が描くことが好きなようですね。まずは、友だちのことより、お子さんが興味のあることを少しずつ広げていきながら、見守ってはどうでしょうか。
好きな絵を描いていると、そこに興味を持つ子が必ずいると思います。例えば、園でダンボールに絵を描いていたら、「何してるの?」と声をかけてくる子がいて、一緒に遊ぶきっかけになることがあります。
ルールに親しむ遊びをしてみる
回答:川田学さん
4歳のころは、集団での遊びのルールについて、子どもによって理解の差があります。ルール通りに遊びたい子、ルールにとらわれずに遊びたい子、ルールが理解できない子がいるわけです。
そのため、家でもルールに親しむための遊びをしてみてはいかがでしょう。例えば、3人でのじゃんけんです。グー・チョキ・パーの組み合わせが3人分になるので、簡単にルールを学ぶことができます。
友だちと遊ばないのは、発達が遅れているから?
今回、番組のアンケートに、「子どもが友だちと遊ばない、発達が遅れているのでしょうか?」と心配する声が届いています。親として、どう考えたらよいでしょう。
不安に思うことを園の先生に伝える
回答:渡邊暢子さん
親が不安に思っていることを、園の先生に伝えてみてください。園でよく観察してもらえたり、お子さんの様子を具体的に伝えてもらえる機会が増えたりして、子どもとの関わり方を考えるヒントになると思います。ほかにも、発達の悩みを相談できる自治体の窓口もあるので利用してみましょう。
発達が気になるときは早めに相談を
回答:川田学さん
もし以前から気になることがあったとしたら、早い段階で先生に相談してもよいでしょう。先生との関係性で、気が楽になる面もあります。あまり親がため込み過ぎないことが大事だと思います。
友だちに嫌なことをされても言い返せない、ストレスが心配⋯
息子は、幼稚園で友だちに嫌なことをされても、言い返せない性格です。園から帰ってくると、泣きながら「叩かれた」と言うこともあります。そんなときは、「嫌だったね。お友だちに『イヤ』と言ったほうがいいよ。園の先生に叩かれたことを言ってもいいよ」と伝えています。自分の感情を出せずに、我慢して、ストレスになっていないか心配です。
(お子さん6歳のママ・パパ)
年長になると人間関係が複雑になる
回答:川田学さん
映像を見ると、穏やかで優しい性格の子だと感じます。親としては気がかりで、すぐに解決できればよいのですが、なかなか難しいですね。年長になると人間関係が複雑になり、大人であっても、むやみに子どもの人間関係に介入できません。基本的に、子どもの関係は子ども同士で解決するしかなく、大人は見守るしかないと思います。
ストレスを和らげることが大事
回答:川田学さん
ストレスを和らげることが大事になるでしょう。その意味では、子どもが帰ってきて泣いたり、園であったことを話したり、自分のことばで気持ちを伝えることができていることは、とても大事なことです。それらのことで、ストレスが多少和らぎます。ママが「こうしてみたら」「こういうふうに思うよ」と話すことも大事だと思います。その繰り返しが基本になります。
「嫌なこと」だけではなく「楽しいこと」も聞いてみる
回答:渡邊暢子さん
子どもの集団の中では、嫌なトラブルもありますが、きっと楽しいことも経験していると思います。子どものことが心配なときは、どうしても「嫌なことがあった?」のように、ネガディブな部分から聞いてしまうことが多くなりますが、楽しいことがあったかもしれません。例えば、「〇〇してもらった」「〇〇で遊んだ」などがあると思います。楽しいことを聞き出してあげると、ネガティブな部分が緩和されていくと思います。
子どもが仲間はずれに⋯ 親がどこまで介入していい?
娘が保育園から帰ってきたときに、「お友だちから『一緒に遊ばない』と言われた」と訴えるようになりました。園で女の子のグループができて、そのグループのリーダーから仲間はずれにされることがあるようです。親がどこまで介入していいのか、どう声をかければよいのか、どういう姿勢で話を聞くのがよいのか悩んでいます。
(お子さん6歳ふたごのママ・パパ)
人間関係の成長のひとつの側面
回答:川田学さん
子ども同士の人間関係が深まっていくとグループができます。毎日遊ぶ人が違うわけではなく、仲よしのグループで遊びたい。「今日はグループでイメージしていることをやりたい」といったことがあります。仲間はずれというより、人間関係が深まっていく中で、もう少しグループの中で閉じてやりたいのだと思います。
「みんな仲よし」というわけにはいかず、ときにはグループに入れる・入れないといったことが、子ども同士の人間関係でも出てくるわけです。これは、人間関係の成長のひとつの側面だと思います。
例えば、大人でも、カラオケに行くときと食事に行くときで、グループが違うことがあります。「今回はこの3人で行こう」と考えて、ほかの人をうまく断ることもある。少し残酷なようですが、「この3人だけで話したい」といったタイミングがあるわけです。人間関係では、誰でもいつでも入れることがいいとは限りません。それは、子ども同士でも言えることなのです。そのような気持ちをうまく伝えることができないので、仲間はずれのように見えることがあると思います。
リーダーが固定しているわけではない
回答:渡邊暢子さん
この時期は、ことばが達者な子がリーダーになりやすく、中心的になってしまうことがあります。でも、ずっとリーダーが固定しているわけではありません。遊びの種類によっては、リーダーや中心的になる子が変わることがあります。
もしかすると、ほかの遊びには入れていたけど、入りたかった遊びに入れなかったのかもしれません。もし心配であれば、園の先生に友だち関係について聞いてみてください。この時期によくあることで、大したことではないこともあると思います。
※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです