こどもの食物アレルギー

すくすく子育て
2022年7月16日 放送

食物アレルギーは、何をどう気をつければいいのでしょうか。ときには命に関わる重い症状を引き起こすこともあります。予防法からアレルギーとのつきあい方まで、専門家と一緒に考えます。

専門家:
大矢幸弘(国立成育医療研究センター アレルギーセンター長)
高松伸枝(別府大学 食物栄養科学部 教授/管理栄養士)

食物アレルギーが気になる。離乳食の始め方、症状の見極めはどうしたらいい?

離乳食を始めようと考えていますが、食物アレルギーが気になっています。「早めに食べ始めたほうが、食物アレルギーが出にくい」と聞くこともあれば、「アレルギーが心配な食材は1歳を過ぎてから」と聞くこともあります。どのように考えたらいいでしょうか。
(お子さん7か月のママ)

食物アレルギー予防のポイントは2つ

回答:大矢幸弘さん

かつて食物アレルギーの予防は難しいと考えられていましたが、今はかなり予防できるようになっています。ポイントは2つです。
まずは、皮膚をできる限り完璧な状態にしておくこと。もう1つは、離乳食の開始を遅らせないことです。以前は、食物アレルギーがよくみられるものを遅らせることが多かったのですが、今は、早めに食べさせたほうがよいといわれています。

食物アレルギーと肌には、どんな関係があるのですか? 肌の保湿は大事になりますか?

皮膚に炎症があると、食物アレルギー物質が入ってくる

回答:大矢幸弘さん

通常、肌から食物が入ることはありませんが、乾燥肌や湿疹など、皮膚の炎症があると、そこから食物のアレルゲン(アレルギー物質)が入ることがわかってきました。皮膚からアレルゲンが入ることで、アレルギー反応が起こりやすい準備状態になるのです。
一方で、食物を口からとると、アレルギー反応を抑える「免疫寛容」という仕組みが働きやすくなります。肌をきれいにしておくこと、早めに食べることがポイントになるわけです。

皮膚の炎症がある場合は、きちんと治療する

回答:大矢幸弘さん

肌の保湿はとても大事です。ただ、すでに湿疹など、皮膚の炎症がある場合は、保湿するだけでは治りません。ステロイド等の塗り薬できちんと治す必要があります。

肌がよい状態になるのを待っていたら、離乳食が遅れてしまう気がします。

子どもの肌は治りやすい

回答:大矢幸弘さん

子どもの肌はとても治りやすく、治療をはじめて1週間程度できれいになります。1週間治療しても症状が改善しないときは、治療のしかたが違う、薬が合っていない、別の病気などの原因が考えられるため、医師に相談してください。

ピーナッツや魚など、アレルギーの種類もたくさんあるので、どの程度のペースで与えたらいいのか知りたいです。特に卵のアレルギーが心配で、卵白や卵黄の進め方を知りたいです。
(お子さん3か月のママ)

離乳食の始めは10倍がゆから

回答:高松伸枝さん

離乳食を始めるとき、最初に10倍がゆから与えます。それから、アレルギーのリスクが少ない野菜のペーストを与えていくのがよいでしょう。

卵は、固ゆでをつぶし、ごく微量を与える。全卵でよい。

回答:大矢幸弘さん

卵に関しては、いろんな方法があります。例えば、固ゆでの卵をつぶして、耳かき1杯ほどのごく微量を与えます。
以前は「卵は黄身から与える」といわれていましたが、必ずしもそうではありません。アレルゲンが多いのは白身ですが、むしろ白身を少量から与えた場合、経口免疫寛容を誘導できます。私たちが研究したときは、白身・黄身をあわせた全卵でした。それで予防ができているので、白身も黄身も混ざった全卵を完全に加熱し、ごく微量から与えてよいでしょう。

牛乳や小麦粉など、アレルギーになる方が多い食材は、どのように進めたらいいですか?

牛乳・乳製品はヨーグルトを少量から、小麦はゆでうどんを少量から

回答:高松伸枝さん

牛乳・乳製品は、とろみがあって飲み込みやすいヨーグルトがおすすめです。少量から与えます。スープなどに混ぜてもいいでしょう。
小麦については、最初は小麦が主原料のうどんやそうめんがおすすめです。ゆでうどんを少量から始めてみましょう。つぶしやすくて、使いやすいと思います。慣れてきたらパンがゆでもよいのですが、パンの原材料に牛乳や卵が使われていることもあるので、注意が必要です。

新しい食材を試すタイミングはいつがいいですか?

初めての食材は1日1種類から、病院の診療時間中に試す

回答:高松伸枝さん

初めての食材は、1日に1種類にしましょう。心配な場合は、病院の診療時間中に試してください。午前中で、子どもの機嫌がよいときに与えるのがよいと思います。

卵や牛乳、小麦など、アレルギーに気をつけたい食材を初めて食べさせる際は、ごく微量から与えて様子をみましょう。また、豆腐やリンゴなど、家庭や園で食べる機会の多い食材から試すのがおすすめです。

どれぐらいの症状がアレルギーなのか気になります。食べたあとに口の周りが少し赤くなるなど、かぶれと食物アレルギーの症状は、どう見極めたらいいですか?
(お子さん7か月のママ)

まずは、食前にワセリンを口の周りに塗る

回答:大矢幸弘さん

まず、食べる前に、ワセリンを口の周りに塗ってみてください。ワセリンで、食物が口の周りの皮膚に付着することをブロックできるため、肌の赤みが、食物による接触性皮膚炎で出たものなのか、アレルギーで出たものなのか区別がつきます。ワセリンを塗っても出た場合は、アレルギーの可能性が高いわけです。

主な症状を知っておく。アナフィラキシーに注意

回答:大矢幸弘さん

食物アレルギーは、皮膚に出る症状が多くあります。そのほか、おう吐・腹痛・下痢、あるいはせきが出ることもあります。場合によっては、血圧が低下してアナフィラキシーを起こしてしまうことがあります。

アナフィラキシーとは、例えばじんましんとおう吐など、異なる部位で2つ以上の症状が出ている状態です。これが進むと、意識障害や血圧低下など、命に関わるアナフィラキシーショックに至ることがあります。アナフィラキシーだと感じたら救急車を呼びましょう。


子どもが卵アレルギー。「少しずつ試す」と言われたけど心配⋯

生後8か月のときに卵アレルギーの診断を受け、小児科で「1歳半までは完全除去(全く与えない)」と言われました。ですが、今、住んでいる地域の保健士さんからは「完全除去ではなく、少量ずつ試しながら進めてはどうか」とアドバイスを受け、改めて小児科で相談したところ、「血液検査の値も高くないので少しずつ食べていく」という方針に変わりました。でも、最初に完全除去と言われたこともあり、卵を試すのが心配で、ほとんど与えていません。どう治療していけばよいでしょう?
(お子さん1歳2か月のママ・パパ)

治療の基本は、全く症状の出ない少量を継続的に

回答:大矢幸弘さん

食物アレルギーになってすぐ、しばらく食べないでいると自然に治る人も、治らない人もいます。それは、すぐにはわかりません。
食物アレルギーの治療の基本は、全く症状が出ない程度に、少量を継続的に食べていくことです。だんだん食べられる量が増えていきます。勇気を出して食べる・無理に与えるのではなく、安心してあげられる安全な量だけ食べさせるのが治療のコツです。

アレルギーと診断されたものを家庭で食べさせるのは、少し怖い気持ちがあります。

食物経口負荷試験でどれぐらい食べられるかわかる

回答:大矢幸弘さん

一度、病院で食物経口負荷試験を受けてみましょう。食材をごく少量から食べ、安全に食べられる量を計測する試験です。この試験で「〇〇を何グラムまで食べられる」といったことがわかります。それよりも少ない量で開始すれば安全です。例えば、その量の1/100、1/1000であれば、まずアレルギーは起こりません。

乳幼児期に発症した鶏卵アレルギーは、小学校入学までに7割近くが改善

回答:高松伸枝さん

乳幼児期に発症した鶏卵アレルギーは、おおよそ3歳までに3割、小学校入学までに7割近くが改善するといわれています。原因食物を、毎日、または1日おきに食べ続けることが大事になります。かかりつけの医師と相談しながら、よくなることを目標に進めていきましょう。

治療中の子どもを見守る親にできることはありますか?

誤食に注意

回答:高松伸枝さん

家庭では、誤って食べてしまう「誤食」に注意してください。例えば、まだ子どもが小さいころ、症状が重たいときは、台所に近づけないようにすることも大事だと思います。

食物アレルギーの自覚、安全な食べ物を選ぶ力を

回答:高松伸枝さん

子どもが就学前のころには、ほかの人に「わたしは〇〇アレルギーなんだ」のように伝えること、「これ食べていい?」「〇〇入ってる?」などを確認することが大事になります。伝えること・確認することができるように家庭で「言う練習」をしておきましょう。

また、買物で食べることができるおやつを自分で選ぶ練習もしてみましょう。そういった練習を通して、食物アレルギーであることを自覚し、安全な食べ物を選ぶ力が養われていくと思います。


食物アレルギーとのつきあい方は?

娘が9か月のとき、アユをあげてみると30分泣き続け、30分後におう吐して、病院に行きました。魚アレルギーだとわかりました。経口負荷試験で安全に食べられる魚の種類や量もわかり、治療のために少しずつ食べることにしたんです。
その後、娘は4歳になり、いろいろわかってきて「魚は食べたくない!」となっています。焼き魚など、魚だとわかると嫌がるので、練り物などをあげています。それでも、月に2~3回がやっとです。アレルギーで嫌いになった食材をどう食べさせればよいでしょうか。
(お子さん4歳のママ)

娘(5歳)が生後8か月のとき、耳かき1杯の卵白をあげたところ、急に泣きだし全身にじんましんが出ました。せきをして、意識もわからない状態で病院に行き、アナフィラキシーだろうと言われました。
卵アレルギーの治療のため、家庭でも少しずつ卵を摂取するようになったのですが、体調が悪いとじんましんが出たり、おう吐します。私も娘が苦しむ姿を見たくない、娘も食べるのが嫌で、なかなか進まない時期もありました。がんばって食べ続けて、今では加熱した卵であれば症状が出ないまでに改善しました。
でも娘は、卵焼きはもちろん、卵のにおいがするものまで嫌いになってしまいました。どうにかできないかと、卵を使うハンバーグ作りを手伝ってもらうなど、工夫を重ねています。アレルギーで嫌いになってしまった卵を、食べたい気持ちになるには、どうしていけばいいでしょうか。
(お子さん5歳・2歳のママ)

不信感が生まれないように「〇〇入っているけど」など、やさしく声かけを

回答:高松伸枝さん

アレルギーの治療をよく頑張っていると思います。微量では症状が出ないようになり、リスクが下がったと考えると、外出するときも少し安心することができると思います。
卵のアレルギーがある子は、色や匂いが気になることが多いようです。ほかの料理に混ぜて食べる、マスキングという方法もひとつです。でも、細かく切るなどわからないように入れて、もし症状が出ると、子どもが不信感を持ってしまうことがあります。あらかじめ、「〇〇が入っているけど」などやさしく声をかけ、子どもとよく話をして、それから好きな料理を作っていくパターンのほうがよいでしょう。

楽しい雰囲気の中で、安全な量を少しずつ食べ続ける

回答:高松伸枝さん

ハンバーグ作りを手伝ってもらいながら練習するのは、とてもよい方法ですね。やはり、食べることは楽しいこと。その雰囲気を、家庭で少しずつくっていきましょう。楽しい雰囲気の中で、安全な量を少しずつ食べ続ける、スモールステップでいいのです。

食べない期間が長くなると治りにくくなる・再発のリスクも

回答:大矢幸弘さん

食べられるものを、安全な量でおいしく食べていくと、少しずつ食べる量が増えていき、バリエーションが豊かになっていくと思います。継続して食べていくことが大事です。食べない期間が長くなると、治りにくくなったり、再発のリスクも出てきます。

アレルギーのある食材と、どう向き合っていけばよいでしょうか?

治り方にも個人差があるので、親がゴールを決めない・焦らないことが大事

回答:大矢幸弘さん

食べられる形で、安全に毎日おいしく食べていれば大丈夫です。治り方には個人差があり、どんどん食べられる量が増える子もいれば、ゆっくり進む子もいます。でも、どんな子どもでも、安全に食べていれば、食べられる量が増えていくのです。
そのため、親のほうが「小学校になるまでに治したい」といったゴールを決めないこと、焦らないことが大事です。子どもにとってもよくありません。子どものペースに合わせて、気長に取り組んでいきましょう。

気をつけながら食べさせていても、症状が出ることもあります。親のほうが、心が折れてしまいそうです。

体調が悪いときは無理に食べさせない。症状が出たら医師に相談

回答:大矢幸弘さん

家庭で症状が出ないようにするのは、とても大事なことです。症状が出ると、本人が嫌いになってしまいます。そのため、体調悪いときには無理に食べさせず、やめておきましょう。とにかく、毎日症状が出ないように安全に与えていくことがポイントです。家での摂取で症状が出たら、医師に相談して量などを見直しましょう。

同じ食物アレルギーの経験者と話す機会を作る

回答:高松伸枝さん

食物アレルギーについて同じ経験を持つ友人や家族の方と、話をする機会があればありがたいですね。患者会がある専門の機関もあります。そういったところで同じような話を聞いて安心したり、相談したりしながら、目標を持つことができると思います。

心理的なアレルギーが外れて、食べられるようになることも

回答:大矢幸弘さん

ある子どもが、小学生のときに経口免疫療法をして、卵1個を食べられるようになりました、でも、がんばって卵を食べさせていたためか、卵嫌いになり、「成功したから、もう食べない」と言い出すほどでした。それが、中学校に入ったら、友人が親子丼を食べるところを見て、急に自分も食べたくなったそうです。それから、心理的なアレルギーが外れて、食べられるようになりました。
このケースのように、いろんな要因があります。私たちは、免疫的なアレルギーを一生懸命に治そうとしていますが、心理的なアレルギーのほうが難しいこともある。そこにも注意しながら治療をしていくことも大事だと思います。


食物アレルギーの最新情報は「アレルギーポータル(日本アレルギー学会/厚生労働省)」へ https://allergyportal.jp/

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです